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エピローグ

翌朝。

カーテン越しから注ぐ穏やかな光が朝を教えてくれる。

小鳥のさえずりが耳に届く。

太陽色の瞳がうっすら開かれた。


見知った天井、使い慣れた布団の触り心地、部屋の匂い。

自分の部屋だ。


シャイナはベッドから上半身を起こし、軽く伸びをする。

すぐそばのカーテンを引き、窓を押し開けた。


爽やかな風が頬を撫で、少し伸びた髪を揺らす。

薄青い空の下に、赤い屋根の家が見えた。

庭に幼馴染の姿はない。


ベッドを抜け出し、服を着替える。

動き始めると体が空腹を訴えてきた。

階下に行き、一杯の水を飲む。

顔を洗い、鏡を見て軽く寝癖を直す。


そのまま流れるように靴を履くと、すぐに家を出た。


普段の道を、いつものように駆け抜ける。

癖で庭に視線が向くが、そこにまだビーの姿はない。

森に行っている時間でもあるが、今日はそっちじゃない気がする。


リビングに顔を出してみると、ビーの祖母がキッチンで朝食の用意をしているだけだ。

いい匂いがする。

しかし、肝心の本人の姿が見当たらない。


「おはよ、ばあちゃん。今日ビーは?」

「おはよう。あら、そうねぇ。今日はまだ見かけてないわ」

「そっか」


――部屋か? 寝坊かな。


ふと、シャイナは昨夜寝る前に見た光景を思い出す。

珍しく、倉庫の明かりがついていた。

もしやと思い、庭へと足を向ける。

案の定、倉庫の扉が開いていた。


「ビー?」


扉の中をのぞいて声をかけてみるが、反応はない。

棚だけが静かに並んでいる。

明かりはついたままだ。


なんとなく、滅多に立ち入らない二階が気になった。

階段を上がって作業場に着くと、その奥にある、いつも閉じられているはずの部屋の扉が開いていた。

確か、普段は鍵がかかっていて入れないからと、ビーが何度か愚痴をこぼしていた場所だ。


——鉱山に行った後のご褒美ってことだったはず。


「じいちゃん、開けたんだ」


遠目から見る限り、中は本で埋め尽くされている。

さながら図書館。

よく見れば、入り口にはビーの靴も置かれている。


――ここだな。


「ビー、いるよな」


声をかけながら、書架の奥へと進む。

背表紙の題名を見るだけでも難しい本が並んでいるのがわかる。

いかにもビーが好みそうなラインナップだ。


立ち入ったことのない場所だが、不思議と嫌な感じはしなかった。

むしろ落ち着く。

部屋の奥に進むとソファと机があり、床に本が散乱していた。


「みっけ」


思わず笑ってしまう。

散乱した本の中、ビーは本を片手に床で眠り込んでいた。


近くまで行き、手の届かない位置にしゃがみ込む。


長いまつ毛に朝日が注ぎ、銀髪が窓から入る風を受けてさらりと揺れる。

規則正しい寝息に合わせて肩が小さく上下していた。

寝顔は穏やかで、普段より幼く見えた。


熟睡している姿を見て、肩の力が抜ける。


周囲にはページがめくれたままの本が広がり、二、三冊積み上げられた山もいくつかある。


「どんだけ読んだんだ」


安堵と呆れを含んだため息が出る。


――こいつ、また寝てないな。


ビーに視線を戻す。

おそらく力尽きるまで読んでいたのだろう。


「ま、いいか。今日くらいは」


シャイナはビーの隣に座り、外から聞こえる鳥の声や葉ずれの音に耳をすませる。

見上げた空はとても青く澄んでいた。



◇◇◇◇◇


そこはいつもの夢の中だった。

ビーの世界は、黒く澱んでいる。


また誰もいない——

そう思った時だった。


「?」


何かいる気がする。

直感だ。


姿は見えない。

音は聞こえない。

匂いもない。

触れられるわけでもない。


ただ微かな気配だけが、奥にあるのを感じた。

無意識に息を殺す。



こちらを見ている——

エピローグまで読んでいただき、ありがとうございます。


物語は第二章へと進みます。

引き続き、お付き合いいただけますとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
おもしろいです! 壮絶な戦いでしたね! ビーの黒い力は何でしょうね? 暴走しているような制御できているような。 黒い力に体を乗っ取られる、みたいな? あと、猫。 猫みたいな魔物? なんだかよくわか…
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