↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/79

第19話 好機

シャイナが、ビーに猛追する魔獣の塊を仕留めた時だった。

マーのいる拠点から光が打ち上がり、星を降らせる。

清らかな鈴の音を伴い、淡い煌めきが降り注ぐ。


ビーやシャイナにも。


魔獣たちにも等しく落ちてくる。

獣の腐臭で満ちていた空気が少し軽くなった気がした。


――なんだ、聖なる光……?  もしかして――


小さい魔獣の動きが止まる。

だが、その奥から大型の魔獣が牙を剥き出し突進してきた。


ビーはすぐ腰を落とし、大地を踏み締めた。

距離が詰まる。


「――っ!?」


タイミングを調整し、ナイフごと右拳を叩き込んだ。

魔獣の口の奥まで腕がめり込む。

ナイフが魔獣の顔と喉を切り裂き、魔獣は動きを止めた。


先ほどと比べて魔獣のスピードが遅い。

牙が届くまで、予測とズレがあった。


矢継ぎ早の猛攻が断続的になる。

周辺の魔獣もそろって勢いが落ちている。


そして、自分自身の体がの重みが先ほどよりマシになった気がする。


「……聖の大規模魔術。マーか!」


ビーの口から思わず発せられた。

背中越しに剣を振いながら、シャイナが尋ねた。


「っらぁっ! エチルスがなんかしてくれてんのか?」


星の光に触れたシャイナの大剣の炎がより一層熱く立ち上る。


「あぁ、短時間決戦だ」

「りよーかいっ!!」


――魔獣を弱体化している。


しかしこれだけの広範囲、そんなに長い時間は持たない。

マーが作ってくれた好機。

なら――今ここで押し切る!


右 。

左 。

真正面と後ろ。


四方から魔獣が迫る。


ビーとシャイナは同時に跳躍した。

攻撃対象を見失った魔獣たちが、互いの身を激しくぶつけ合った。

シャイナの炎剣が弧を描く。

振り下ろされた刃が魔獣の首を両断、そのまま振り抜くと正面の魔獣の胸をも切り裂いた。

ビーはシャイナと同時に、跳躍の勢いのまま、眼下の魔獣の背に踵を叩き落とした。返す刀で、目の前のもう一匹の魔獣の喉にナイフを突き立て、勢いよく投げ飛ばす。


ゾクリと、背中に悪寒が走る。


視界の端、背後に覆い被さる影が見えた。

ビーが振り向く直前、耳に鋭い風切り音が届く。


「ッ!」


シャイナの炎の剣が唸りを上げて、魔獣の横腹を貫いた。

弱体化しているとはいえ、個体差が大きい。

大型には大した影響がない。


しかし、わずかながら術を仕込む余裕が生まれた。


足を削れば無力化できる。

ビーは重心を低く構える。

魔獣の攻撃を腰を落として交わしながら、小さく詠唱する。


「空を駆ける覇者よ。一片のかけらを我に与えん。

疾く進め。指し示す先は汝の道となる」


狙うは胴体より下、群れの足元。


「覇道迅雷《ライトニング・ロード》!!」


蒼金の稲光が大地を迸る。

その雷光は魔獣たちの足元を、轟音と共に駆け抜ける。

巨体の魔獣やその前後にいた大小の魔物たちは、容赦なく脚部を焼き飛ばされ、その場に崩れ落ちた。


「はぁ、はぁ――」

「無理すんなよ」


後ろから声がかかる。

いつの間にかシャイナが背中を合わせる位置に戻ってきていた。

ビーは正面から飛びかかってきた狼型の魔獣の顎に膝蹴りをねじ込み沈めながら答える。


「今しか時間がないっ!」


シャイナも応戦しながら答える。


「わかってる!」


シャイナが右から飛んできた魔獣の首元に蹴りを叩き込み、素早く剣を翻したかと思うと左側から迫る魔獣を正面から斬り伏せ、真っ二つにする。


そして、再度ビーに警告する。


「倒れるなよ」

「わかってるっ」


ビーも魔獣の攻撃を躱わしながら返事をする。


「あとオレ今めっちゃ調子いいかも」


ビーは横目でシャイナを見る。

速い。

傷を負い、体力も消耗。

しかし、体のキレや判断能力が落ちてない。

シャイナの大剣が閃くたびに、魔獣の数が確実に減っていく。


「そのまま押し切れ!」

「任せろ」


炎の大剣が呼応するように炎威を強めた。

ビーは息を整え、シャイナに告げる。


「もう一回仕掛ける」

「おっけい!」


シャイナが威勢よく答え、炎を纏った大剣が弧を描く。

鋭く空を切る音とともに、ビーに群がる魔獣を次々と喰らうように斬り伏せていく。

大型魔獣が固まる場所を狙い、ビーは銃口を向けて放つ。


――最大出力!


「覇道迅雷《ライトニング・ロード》、連弾!!」


二撃の稲妻が大地を突き進む。

青光りの中で、魔獣たちは脚をもぎ取られ、なすすべなく倒れていく。

息が上がり、ビーはガクリと右膝が地面につく。


力の上限ギリギリ――銃を握る手が震える。


――早く立て!


その隙を見逃してくれるはずもなく、動けない獲物を狙って、雷撃を逃れた魔獣が牙を向いて迫る。


「うおおおおっ!」


シャイナの力強い蹴りが、眼前に迫る三匹の魔獣を一気に蹴り飛ばす。

そして、すぐさま踵を返すと、後ろに迫る気配を一瞬で斬り捨てる。

シャイナが魔物を見据えたまま、ビーに問いかける。


「立てるか!?」

「今、やってる」


思ったより回復が遅い。

まだ視界がくらむ。

左ひざに手を当て、立ち上がる支えにする。


――早く!


「ビー!!」


シャイナの声が耳に突き刺さる。


――何か起こっている!?


「っ!?」

「避けろぉぉぉっ!」

最新話を読んでいただき、本当にありがとうございます。

心の救いになっています。


少しでも面白かった、気になったと思われた方は、

ポイント・感想・ブックマークなどいただけると、

執筆活動がばりばり進みます。


引き続き、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。