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第18話 炎と光

視界が山吹色に染まる。

空気が肺を灼くほど熱くなった。


魔獣の苦痛に満ちた咆哮がこだまする。

巨躯から両腕がすっぱりと斬り落とされ、炎威はさらにその身を包みこんで熾烈に燃え上がらせていた。


ビーは目を見開く。

立ち込める熱気の中、見知った背中と太陽色の髪が炎のように揺れていた。

シャイナだった。


「なん、で――」


声が掠れる。

シャイナは振り返ることなく、炎の短剣を握り直した。

短剣の炎はすでに大剣の大きさにまで膨れ上がっている。

その背中や手足には大小さまざまな裂傷があり、衣服が赤く染まっている。

破れ目から痛々しい傷も見えた。


「お前のそばに魔獣が集まるなら、一緒にいたほうが効率的だろ」

「……バカか」

「いつも言ってんだろ、一人で行くなバカ」


怒りの混じる声に、安堵した自分がいた。

ビーは軽く息を吐く。


「敵の残りの数は?」

「あと六割ってとこか」

「わかった。俺の残弾は十だ」


ぴくりとシャイナの肩が動く。


「やばいな」

「……付いて来いよ」


一瞬、シャイナと肩越しに視線が交じる。

シャイナの口元がわずかに上がる。


「余裕」


打開策があるわけじゃない。

魔獣は変わらず自分に執着してくるし、体力、武器共に限界は近い。


それでもさっきより、少しだけ息はしやすかった。


山吹色の熱波から同時に飛び出した。


魔獣たちが待ちかねたようにその牙を向ける。

複数の小型の獣の魔獣が襲いくる。


シャイナの炎の大剣が閃き、まとめて両断する。

その横をすり抜け、ビーは大地を蹴った。

右手に短剣を握り、自身に向かってくるものには容赦なく突き立て、近くの魔獣もろとも蹴り飛ばす。

ビーに追い縋るものは、シャイナの烈火がすかさず喰らった。





――その頃。

洞窟内の拠点、土の壁の中。

エチルスはゆっくりと、しかし確実に魔力を温めていた。


時折外から聞こえる魔獣たちの咆哮や、何かを叩きつけるような破砕音、唸りのような風の声。


次に聞こえる声が、幼い悲鳴でないことを祈った。

ペンダントのクリスタルを握る手が震える。

首が締められているように苦しい。


しかし、詠唱は止めない。

ただ魔力を高めることに集中した。


外から一際大きい咆哮が響き、空気が痺れる。

今エチルスは動けない。

土壁の隙間、その奥に炎の断片が見える。


額から汗が流れた。

焦りは魔力の質を落としてしまうことを、エチルスは知っていた。

ただ紡ぐ。

目を固く瞑り、最後の詠唱へ入る。


「――闇を払い、魔を退ける力を授けん。

天空より訪れる 星々の輝きをここに。

星輝顕現《ステラ・エピファニア》」


エチルスのペンダントから光の珠が生まれ、打ち上げられるように空へと登っていく。

土壁の開けた天井よりさらに上へ。

そして洞窟の天井近くで弾けた。

小さな光の粒が星のように広い洞窟内に降り注ぐ。


エチルスはそれを見届けると、がくりと両膝をついた。

息が上がり、汗が吹き出す。

ペンダントを固く握りしめる。


「どうか、どうか……」


祈りにも似た呟きを漏らした。

この光が二人の支えになるようにと。


最新話を読んでいただき、本当にありがとうございます。

心から、お礼を言わせてください。


少しでも面白かった、気になったと思われた方は、

ポイント・感想・ブックマークなどいただけると、

とてもとてもとても励みになります。


引き続き、よろしくお願いいたします。

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