Ⅴ 跡
2025年10月20日
「高梨さん」
昼休み、食堂にいる高梨に桜庭が声を掛ける
「、、、何?」
高梨は気まずさと恥ずかしさが同居する
「今日さ、放課後時間あるかな?」
「別に何もないけど、なんか用?」
「ちょっと話してみたくって。」
「、、、教室で待ってる。」
「ありがとっ」
-放課後-
「待っててくれてありがとう。」
てっきり逃げられるかと思った
「で、話したいって?何?」
「うん、昔の事。」
「全部神崎くんから聞いたよ。」
「でしょうね。」
私、嫌われてる?
憎き智也の彼女だから?
ああ、桜庭さんは付き合ってないって認識か
じゃあなんで?
「付き合ってたんだね、神崎くんと。」
「そ。」
そっけな
「本当に好きだったんだ。」
「じゃなきゃ付き合わないでしょ。」
そりゃそうだ
「今は?」
「はぁ?」
「今は神崎くんのこと、どう思ってるの?」
「別に。颯だってもうアタシに気持ちは無いでしょ。」
「そんなことないと思うけどなぁ。」
「そんなことあるんだって。颯のことは分かる。これでも元カノよ?」
「神崎くんは、まだ高梨さんに気持ちがあると思うけどな、、、」
「無いよ。無い。」
「どうしてそう思うの?」
「颯はそういう奴だから。」
「分からないよ。」
神崎くんはそういう奴
確かにそうかもしれない
でも
寝言で高梨さんの名前を口にした
「本当に颯がまだアタシに気持ちを持ってるなら、さっさと行動してるってこと。」
「今の颯なら交際隠すのだって簡単にやれるよ。アタシだって、颯にまた付き合ってほしいって言われたら、多分付き合う。前より上手くやれる自信だってある。」
神崎くんがまた高梨さんと付き合う
また胸が痛む
なんで
「じゃあ高梨さんは神崎くんにまだ未練があるってことだ。さっきは『別に』なんて言って。」
「好きじゃないなんて言ってないでしょ?嘘つきたくないだけ。だから誤魔化したの。」
「神崎くんと同じことするじゃん。やっぱり元カノだから?」
「違うわよ。まあでも、昔から嘘は嫌いだったよ、颯は。でも誤魔化すなんてしなかった。正直に全部話す人だった。」
遠くを見るような目だ
神崎くんが高梨さんを思い出してる時と同じ目
「昔の神崎くんって、どんな人だったの?」
「何よさっきから颯のことばっかり。もしかして相馬から乗り換えるつもり?」
「ち、違うよ!? 知りたいだけ知りたいだけ。3年になるまでほとんど知らなかったからさ。」
まただ
さっきからこの胸の痛みは何?
というか乗り換え?
智也から?
えええ?
「その顔、さてはアタシが颯の嘘を信じてると思ってる?」
「嘘って、分かってたの?」
「当たり前でしょ? 元カノよ、アタシは。繋がってたのは身体だけじゃないんだからね?」
胸がざわつく
「分かってたのに、なんであの場で問い詰めなかったの、、、?」
「颯がポリシー曲げて嘘までついてでもアンタたちを守りたいんだ、って分かったから。」
「高梨さんって、、、意外と賢いんだね。」
「それ、失礼。」
すみませんでした
「ごめんって。あの時はもう、感情むき出しって感じだったから、てっきりね、、、」
「アタシは相馬が憎いだけ。颯だってアタシが嘘を見抜くって分かってても嘘をついた。だからアタシは察したの。そこまでちゃんと分かってるわよ。」
「そう、なんだ、、、」
「颯はアタシが見抜くことを分かってて嘘をついたの。それを問い詰めないことも分かってた。流石は元カレだよね。」
「私はそこまで分かってなかったな。ただ守ってもらって安心した。高梨さんも騙されてくれたって思ってた。」
「バカにしないでよね。アンタが颯を好きなことももちろん分かってるわよ?」
え?
神崎くんが好き?
私が?
「さっきから颯のことしか聞いてこないじゃん。」
「そ、そんなことない。私は智也と付き合ってるから!」
「アンタ学校の中で何叫んでるのよ、、、」
しくじった
感情が行き過ぎた
「ねえ、良かったらアタシの家で話さない? ここじゃ話せない話もあるでしょ?」
「高梨さんのお家、、、分かった。」
成り行きで高梨さんの家にお伺いすることになった
私は神崎くんが好き
高梨さんはどうしてそう思ったんだろう
確かめないと
桜庭は高梨に連れられて行くのだった




