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あの日、僕が守れなかった君は。  作者: Miho Isaka
第四章 交差

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Ⅲ 神崎颯

2025年10月18日




次の日、神崎くんの家に私、智也の2人がいる




出迎えてくれた神崎くんは隈ができていた。




理由は何となく分かる






「さて、説明フェーズってとこだね。」




説明フェーズて




黒幕の方ですか?




「そうだな、時系列を追って話すか。もう僕は隠すことが無いから、これから話すことは全部真実だと思っていい。感情じゃなくて、ゆっくり、2年かけて頭の中で整理した。」




「まず、もう桜庭さんも知ってると思うけど、僕は2年前、遥と交際していた。規則違反なのは分かってた。でも、あの時の僕は、感情を優先してた。遥が好き、遥を愛してる。それだけで、知らない誰かが作った規則を破るには充分だった。」




神崎くんと高梨さんは付き合っていた




この言葉に、また少しチクリとした




どうして痛むんだろう




「正直、バカップルだったよ。2人でいるときは暇さえあれば好き好き好き好き。でも、幸せだった。」




見たことのある表情




遠くを見てる




高梨さんを思い出してたんだ




「ちょっと生々しいけど、付き合って2か月でエッチなことはしてたよ。その後はもう、まあバカップルだからな。」




顔が熱くなる




バカップルが過ぎてる




「4月から付き合って、まあ半年間。楽しかった。幸せだった。僕はずっと遥といるんだ。このまま誰にも邪魔されずに、ずっと。そんなことを思ってた。」




これは私も覚えがある




神崎くんにバレる前の私だ




「でもさ、やりすぎはやっぱりダメなんだよ。桜庭さんもやりすぎたから僕に見つかったわけで。でもまあ、結果的に最初にバレたのが僕でよかった。そのことはまた後で話す。」




「1年生の時の学園祭、2日目。遥と僕は、『誰も来ない場所』で濃厚にキスした。我慢できなかったんだよな~あの時は。続きは帰ってから。日曜までずっと遥と一緒にいた。あの3日間が、もしかしたら一番幸せだったのかもな。」




誰も来ない場所




私に当てはめると生徒会室




「月曜、放課後、2つ隣のクラス、当時で言ったら桜庭さんのクラスで、誰かが言い争ってた。覗いてみたら遥と、塚田っていう男子だった。遥の姿を見たらすぐに体が動いたね。でもさ、塚田、見てたんだって。キスを。」




「脅されたよ、そりゃもう同級生とは思えなかったなぁ。なんだったんだアイツは。」




同級生とは思えない




そりゃアンタもだよっ




「まあそれっぽい脅し文句を聞いて、頭に血が上ったんだろうな。気付いたら塚田を壁に叩きつけて、そのまま押し付けてた。ぶん殴る一歩手前で、智也が助けに来た。」




ここで智也




助けに行ったんだ




「塚田と智也が話して、その場は収まった。見事なもんだったよ。憧れたね、あれには。」




見たかった




「智也はその時、『一度距離を置いてくれれば安心だ』って言った。僕は、それが良いと思った。なにより、付き合ってたこと自体は、智也は責めなかった。」




そうだ




神崎くんは私と智也が付き合ってることは責めなかった




一回も




「その後、遥と一緒に泣いたよ。三日三晩泣いた。そして、遥に、別れようって、言った。」




淡々と話している神崎くんの瞳は赤くなっていた




私も何故だか頬を涙が伝っていた




「遥は1か月学校に来なかった。桜庭さんが知りたがってた、1か月の件。大丈夫、昨日遥には話していいって言われてる。」




「遥はずっと泣いてたんだろうな。1か月。遥を、救ってやれなかった。涙を掬ってやりたかった。でも、あの時の僕は、何もできなかった。ただ、遥が来るのを待ち続けた。毎日教室の前に行って、来てないって分かったら戻ってた。」




思い出した




思い出した




毎日、高梨さんを待ってた男の子




あれは神崎くんだったんだ




「あぁ、あの時誰かが、『卒業したら一緒になれると良いですね』って声を掛けてくれたんだった。誰だったっけな、優しい女の子だったな。」




絶対に覚えてる




神崎くんはそういう人だ




「久しぶりに学校に来た遥は、強がってたな。自分の気持ちを押し殺して、精一杯笑って、『吹っ切れた』って。僕は少し悲しかった。少しじゃないか。すごく、悲しかった。あぁ、遥はあの時から智也は嫌いだって言ってたな。」




「そこからは、感情をコントロールして、常に冷静に立ち回れるよう、文字通り努力した。僕と同じ境遇になった人が現れたら、同じようにはさせない。当時は心配してなかったけど、特に智也は守りたかった。恩人だしね。智也は、僕が遥と別れたって伝えた時、悲しそうにしてたな。あの時の智也も、僕は守れなかったんだろうな。僕は遥を救えず、智也も守れなかった。その後から智也は変な負い目みたいなのも持ってたな。」




因果応報




神崎くんはやりすぎた




やりすぎたから、ツケを払った




あんなに強そうに見えていた神崎くんは、一度壊れてたんだ




そこから、今の神崎くんになった




今の神崎くんは幸せなのだろうか




「今年の3月、遠くの駅の近くで遥を見かけた。変な動きをしてたからさ、念のため暫く見てたんだ。そしたら、智也と桜庭さんが2人で楽しそうにしてた。目を疑ったよ。付き合ってる可能性まで考えて、いざという時の為に準備はした。」




「そしたら4月頭、生徒会室で君たちがイチャコラしてる声を聞いた。そこからは、桜庭さんも知っての通り。2人きりで会ってる男をもう1人用意するっていう、前に言った保険作りと遥の対策。遥の対策の方は、まぁ失敗だったな。あんなことになるとは思わなかった。久しぶりに感情で人と向き合ったよ。」




「昨日は、遥をずっとなだめてた。あの時掬えなかった涙を掬った。あの時救えなかった遥を、今度はちゃんと救えた気がする。救えたのは遥だけじゃない。あの頃の、バカップル。あの頃の遥と僕も、やっと救えたのかもしれない。」




神崎くんが話し終わった




沈黙




何て声を掛けたらいいのか、全く分からない




因果応報とはいえ、あまりに壮絶な出来事と、感情を殺した自己犠牲で、今の神崎くんは作られている




高梨さんのように発散することなく




今の彼はまだ、救われてない




でも私は、智也も、何もしてあげられない




「話は、終わりだ。聞きたいことは?」




「颯、お前は、その、結衣を呼び出して、保険を作り、高梨を監視した。それ以外は? 俺達を守るために、どこまでやったんだ。」




智也が口を開いた




「桜庭さんに身の振り方をレクチャーした、それくらいかな。僕と同じ経験をしないために。正直、4月の桜庭さんは危ない状態だった。あのままだといずれ露見する。そう思った。あとは、、、もう無いか。」




私は言葉が出なかった




智也も渋々納得したようで、この日はこれで解散となった

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