幕間:ある王の見た夢
──また、夢を見た。
かつての仲間と、戦場を駆ける夢。
争いのない世界を作るため、命を賭して戦った。
我々は見事勝利を収めた。
その功績を認められ、私は一国を興すことを許された。
だが、今はどうだ。
かつてのような世界を巻き込んだ大戦こそなくなったが、国家間の小競り合いは起き続けている。
何度介入して争いを止めても、また別の場所で争いが起きる。
──この世界は、歪んでいる。
人が人である限り、争いは決してなくならない。
ならば、私がなくしてみせる。
私が、世界の全てを治めて火種を潰す。
その為ならば、あらゆる手を尽くそう。
必要とあらば、悪魔にすら魂を売り渡そう。
──理想に至るまでの犠牲は、やむを得まい。
大義のための、大いなる犠牲だ。
「──ユーゴ王。ヴェネーノが扉の外でお待ちです」
テオの声にハッとする。
「……お眠りでしたか?報告は後日に──」
「いや、通せ」
「……少し、考え事をしていた」
玉座の間の扉が開き、ヴェネーノが入ってくる。
扉が閉まると、跪いて口を開く。
「……ホーディ・アームストロングが戦死しました」
「彼は影の国に与した救世主に唆され、部下を手にかけました」
「最期は、部下たちの相打ち覚悟の突撃でようやく止まった形でした」
「──同じ筆頭騎士として、残念に思います」
「──そうか」
救世主──黒騎士ロウ。
初めて顔を見た時はろくに魔法も使えず、武器を振るうこともままならぬ肉体だったが。
なかなかどうして、口の回る男だったか。
「それと、救世主から言伝を預かっています」
「なんだ」
ヴェネーノが顔を上げ、ニヤリと笑う。
「──黒騎士ロウは、陽の国には戻らない」
「どうしてもと言うなら、影の国もろとも容赦なく殺す気で来い、とのことです」
「──ほう」
随分と、舐められたものだ。
ならば、望み通り排除するまでだ。
だが、影の国ばかりにかまけてもいられないのも事実。
こうしている今も、争いは起きている。
「──テオ。次の“穴”はいつ開けられる」
「はっ。彼の国を確実に潰すための総攻撃を仕掛けるのであれば、最短でも半年は猶予が必要かと」
半年。
なかなか待たせるが、仕方あるまい。
「──では、半年後に影の国へ攻勢をかける」
「各自、準備をしておくように伝えよ」
「はっ!」
「承知しました」
テオとヴェネーノの返事が響き、二人が部屋を出る。
「──やはり、少し寝不足なようだ」
瞼が重い。
もう少し、眠るとしよう。
──争いのない、理想の世界の夢を見よう。




