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15/29

決闘の結末は、想定外の最悪なものだった。

激しい攻防が、続いていた。

騎士たちからどよめきが聞こえる。

兵士たちから激励が聞こえる。


技術はタイカンの方が上だ。

こっちの攻撃は、ほとんど受け流される。

ハルバードの形状を最大限に活かした巧みな技の数々は、学ぶものも多かった。


俺の方は、その差を魔法で補う。

剣を盾に変え、槍に変える。

砕ければ直して、絶え間なく攻め続ける。


「なるほど。確かに使い勝手の良い魔法だ……!」

「だが、この城塞騎士を落とすにはまだ足りない!」


俺の剣を斧の部分で絡め取り、場外に放り出す。


まただ。

いろいろ試してはいるが、どれも最後はこうして武器を奪われるか、壊される。


武器を失った隙を逃さず、追撃が飛んでくる。

盾を作って防御する。


どうしても、後手に回される。

主導権は、タイカンが常に握っていた。


「──そろそろ、息が上がってくる頃ではありませんか?」


「──っ」


──お見通しか。

確かに、俺は肩で息をし始めている。


対するタイカンは涼しい顔でハルバードを振るっている。

体力の差は、どうしても覆せない。


「さあ、まだまだ行きますよ!」


ハルバードを前に構えて、突っ込んでくる。


「──錬成(ビルドアップ)!」


両手に盾を持ち、防御を固める。

猛攻を前に盾は瞬く間に傷だらけになり、その度に修復して凌ぎ続ける。


(どうする……どうすれば……)


正直、打つ手が見つからない。

こっちの間合いに入らせず、的確に体力を削ってくる。


勝負の天秤は、確実に傾き始めていた。


「はぁっ──!」


強烈な突きが飛んでくる。

盾で受けて後ずさる。


「──っ!?」


片足の踵が場外の縁を踏み損ねる。

気がつけば、端の方へと追いやられていた。


「追い詰めましたよ。黒騎士ロウ」


槍穂を眼前に突きつけられる。

後ろには退けない、前にも進めない。


詰み、か。


「ここで負けを認めれば、あなたを落とさずに済むのですが」


「……そう言われて、素直に認めると思うか?」


精一杯の虚勢を張る。

脳をフル回転させ続ける。


「そうですか。……残念です」


俺を突き落とすために得物を一瞬手前に引く。


瞬間。


俺は足に魔力を巡らせ、つま先に刃物を形成する。


「っ!」


タイカンが見逃すわけもなく、即座に足を斧で引っ掛けにかかる。


タイカンの視線が足元に落ちた。

──かかった。


再錬成(リビルド)!」


盾の一つを両手剣に作り変える。

すかさず剣を斧の部分に引っ掛ける。


「はあぁ──っ!!」


タイカンがやってきたことを、同じように繰り出す。


刃を引っ掛けたまま、わずかに横に移動する。

そのまま剣で弧を描くように、捻りながら持ち上げる。


「なにっ──!?」


ハルバードがタイカンの手から離れる。

そのまま、回転しながら場外に飛んでいった。


「行くぞ──っ!」


勝機を逃すまいと、一気に間合いを詰める。

丸腰になったタイカンへ斬りかかる。


タイカンは腕甲で凌いでいるが、俺はジリジリと押し込んでいく。


再錬成(リビルド)──っ!」


突きの瞬間、両手剣を細身の刀身に作り替える。

突き技に特化した、エストックと呼ばれる剣。


鎧の隙間にねじ込むように刺す。

剣を通じて、肉に食い込む感覚が伝わってきた。


「ぐっ──!」


タイカンが顔を歪める。

さすがに直撃は効いたようだ。


剣を引き、追撃に入る。

再びエストックを両手剣に作り変える。

アッシュたちとの稽古で得た経験を一心にぶつける。


「──まだ、手はあります!」


タイカンが腰の剣を抜き、華麗に捌いていく。

俺よりも重い鎧を着ているとは思えない軽やかさだった。


「さすが、剣の腕も一流か……!」


「騎士たるもの、不得意な武器などありはしません……!」


打ち合い、競り合い、鍔迫り合い。

お互い一歩も引かない。


だが、戦況は俺の方が有利だ。

タイカンは刺し傷から出血している。

力を入れるたびに痛みも出ているだろう。


俺は刺し傷周りを攻め立てる。

タイカンの動きが、少しずつ鈍っていく。


「──っ」


傷を庇うように、タイカンが剣を振る。

タイカンの剣を弾くように受け、絡めるように抑え込む。


「はっ──!」


そのまま剣ごと地面に押し付け、蹴りを叩き込む。

魔力を込めて強化した一撃は、重装備の騎士でも後ずさる威力だった。


蹴りの衝撃でタイカンが剣を手放す。

傷を押さえるその隙を逃さず、踏み込む。

エストックに作り変え、刺突にかかり──


──身体に、激痛が走った。


「がっ──!?」


姿勢を崩し、膝をつく。

痛みの元──肩の辺りに触れると、ベッタリと血がついていた。



「な……なん、だ……?」


「ロウ殿!?」


俺の様子を見て、タイカンが目を丸くして駆け寄ってくる。


「──肩を背後から射抜かれている」

「無理に動かすのは危険です。すぐに医者を呼ばなければ──!」


俺の傷を見て、助言を送るタイカン。

どうやら、彼がやったわけではないらしい。


──ということは。


『──何してやがんだテメェ──!!!』


場外から怒号が響く。

アッシュのものだ。


タイカンと共に声の方へ向かう。


──場外では、アッシュが騎士の一人を斬り伏せていた。


「──っ!?アッシュ!何してる!」


「コイツがお前に向けて風の魔法の矢を撃ち込んだ!」

「自分の大将が負けそうだからって、手ェ出しやがったんだ!」


怒りに満ちた顔で、剣についた血を払いながら叫ぶ。


「だからって斬りつけることはないだろ!そんなことしたら──」


俺の言葉をかき消すように、騎士たちの怒声が響いてくる。


騎士たちが次々と剣を抜く。

魔王軍も迎え撃つように武器を構える。


誰かが止めるには、もう遅かった。


──戦争が、始まってしまった。

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