初デート1
チュンチュン。
カーテン越しに入る陽の光でふっと目を覚ました夢姫は、寝癖だらけの髪のままむくっと上半身を起こすと、うーんと伸びをした。
(早く布団に入った割に、寝付くのに時間がかかっちゃったなぁ。)
昨夜はいつもより早く寝床についた夢姫だが、まるで遠足前の子供の様に目が冴えてしまい、中々寝付けなかったのだ。
夢姫は、ふぁぁ〜と欠伸をしながら布団から出ると、シャッと勢い良くカーテンを開け放った。
(お、晴れてる。いい天気で良かった!やっぱり日頃の行いが良いのね〜。……さ、支度しよーっと!)
夢姫は上機嫌のまま、ふんふーん♪と鼻歌交じりで身支度を始めた。
身支度は順調に進んだが、最後のアクセサリー選びだけ難航していた。
(うーむ。アクセサリーどっちにしようかなぁ?)
夢姫はパールの付いたピアスとゴールドのフープ型ピアスを手に取りながら、鏡の前で悩んでいた。
ちなみに夢姫の服装は、丈の短いオフホワイトのフードパーカーにロングスカートだ。
ピンポーン。
いきなり鳴ったインターフォンにびっくりした夢姫はカシャン、とピアスを落とした。
(あっ、ピアスが!いや、それよりまずインターフォン!)
夢姫がドタバタと慌てて画面を確認すると、そこにはネイビーのテーラードジャケットに、中にはフードパーカー、黒のテーパードパンツを身に付けた神風の姿が写っていた。
(ミツ君だ!)
夢姫はガチャガチャと鍵をあけ、バンッと勢いよくドアを開けた。
ドアの勢いに少し驚いた様子の神風だったが、すぐにいつもの甘い瞳で夢姫を見つめた。
「ゆめきちゃん、おはよう。……毎回、ドアの勢いが良いけど、何か急いでいたの?」
「おはよう!え、あ、うん、ちょっとね。へへ……。」
久々のデートに浮かれながら身支度をしていた事がバレるのが恥ずかしかったのか、夢姫は言葉を濁した。
「そう?さっき車の中から電話したけど出なかったから直接来たんだけど……もう少し待とうか?」
「え!そうだったの!?ごめん、気付かなかった!ううん、もう出れるから大丈夫。」
(しまった!支度に夢中で携帯確認していなかった……。)
申し訳なさそうな顔をする夢姫を見て、神風がふっと笑った。
「そんな顔しないで、僕は気にしていないよ。じゃあ、行こうか。」
夢姫は手元にあったバッグとショールを掴むと、神風と共に外に出て、ガチャッと扉の鍵を閉めた。
神風の車はすぐ近くに停めてあった。
神風は電子キーで車のドアを開錠したあと、いつものように助手席まで夢姫をエスコートした。
夢姫を乗せたあと、神風は颯爽と運転席に乗り込んだ。
「では、このまま目的地に向かうね。途中で気分が悪くなったり、お手洗いとか寄りたい場所が出来たら気軽に話して。」
神風はそう言うとエンジンをかけ、静かに車を発進させた。
「ミツ君、今日はどこに行くの?」
神風はふっと横顔に笑みを浮かべながら口を開いた。
「……それは、着いてからのお楽しみ。」
むぅ……と不満顔の夢姫だったが、大人しく神風の意見に従う事にした。
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「着きました。」
目の前に聳え立つ巨大なタワーを前に、夢姫は思わず天を仰いだ。
「ここって……スカイタワー!?私初めて来たけど、こんなに高いんだぁ。間近で見ると凄い迫力だね!!」
2012年に完成したこの電波塔は、地上高634mを誇り、その高さからギネスにも認定されたことのある建造物である。
夢姫は初めて見るスカイタワーに目を輝かせ、興奮気味に神風に話しかけた。
「ここ、確かエレベーターで上まで登れるよね!?チケットどこで売ってるかなぁ?」
チケット売り場がどこかとキョロキョロ見回す夢姫を見て、口に手を当てて俯く神風。
「……か、可愛過ぎる……。」
「え、何?ミツ君、どうかした?」
「……いえ、何でもありません。それよりチケットは既に購入済みなので、買わなくて大丈夫だよ。それより、指定時間まではかなり余裕があるから、先にご飯にしない?予約している店があるんだ。」
「チケット先に買ってくれたの!?しかもお店まで予約してくれているなんてっ!ミツ君、ありがとう!!うん、そうだね。ご飯食べに行こう!」
神風の提案に賛成した夢姫。
二人は先にお腹を満たす事にした。