尋問タイム
(そう言えば、キスマーク疑惑の事をまだミツ君に聞いていなかったな。)
夢姫は神風の上着を取るのは一旦諦めて隣に座り直した。
「ねぇ、ミツ君。ちょっと聞きたい事があるんだけど。」
夢姫が離れて少し残念そうなオーラを放っていた神風だったが、夢姫から話しかけられると柔らかい表情で見つめ返した。
「なに?ゆめきちゃん。」
「ちょっと前の話になるんだけど、私がミツ君のお家に泊まったことがあったじゃない?その時に首筋に赤いアザが付いていたんだけど……。」
「うん。」
「次の日会った大河さんに首筋のアザはキスマークだろ、って指摘されて。……まさか、とは思ったんだけど、その言葉が気になっちゃって。やっぱ、あれはキスマークじゃなくて虫刺されだよね……?」
「ああ、あれ?キスマークだよ。」
「やっぱり、そうだよね……って、え?」
「キスマークで合ってるよ。僕が付けました。」
サラリと爆弾発言をした神風に、夢姫は一瞬固まった。
「……え、え、えーーと……。」
「ゆめきちゃんが寝言で他の男の名を呼んだので、ソイツに見せ付けてやるつもりで付けました。……まぁ、結果的には無駄な行為でしたが。」
更なる爆弾発言に夢姫は言葉を失った。
「……?どうかしましたか?」
「……ミツ君て、ちょっとヤンデレなところあるよね……。」
「ヤンデレ?」
「いや、何でもない。独り言だから気にしないで……。」
夢姫は、はは……と乾いた笑いを口にした。
そして、会話が弾んできたタイミングを見計らっていた夢姫は、神風に今日のことについて聞き出すことにした。
「……ミツ君、今日なんであの場にいたのか聞いてもいい?」
「実は、ゆめきちゃんが心配だったので同じ店にいました。」
「え!?」
「午前中に脚の診察を受けていたので僕の方が遅れて来ました。案内された席は遠くて二人の会話までは聞き取れなかったのですが、大河がゆめきちゃんの腕を掴むところがチラッと見えたので、止めに入ったんです。」
「……ミツ君。気持ちは嬉しいけど、私は子供じゃないのよ?一人で対処出来るわ。ミツ君だって、今日は一人で行くことを了承してくれたじゃない。」
「それは、分かっています。……心配、といいましたが、本当は、ゆめきちゃんをアイツに奪われてしまうのではないかと不安だったんです。僕のエゴで勝手に来てしまいました、すいません。」
無表情ではあったものの、叱られた子犬のようにしゅんとした目をする神風に、お説教モードだった夢姫の気持ちが揺らいだ。
(うぐっ、そんな目をされたら強く言えない……。)
「……そ、そう。でも!今度からは勝手に着いて来ちゃダメよ。」
「はい、肝に銘じておきます。」
夢姫は、ふぅ、と息を吐いた後、一番聞き出したかった本題について触れることにした。
「……ねぇ、ミツ君。私が去った後のこと、聞いてもいいかな?」
「あの後、僕と大河は場所を移動しました。僕は、ゆめきちゃんと恋人関係になったから今後はちょっかいを出すな、と大河に忠告をしました。……しかし、大河は、何か勘違いをしている節があるようでした。」
「勘違い?」
「ええ。僕がゆめきちゃんに騙されているとか、脅されているとか……。そんな事実はありませんし、もちろんそれらは否定しましたが。」
(大河さん、私の時もそんなようなこと言っていたな。)
「大河は僕達の関係について最後まで納得していない様子でしたが、しっかり釘は刺しておいたので、今後は下手に手出しをして来ないと思います。」
「そうだったの。……きっと、大河さんはミツ君が大切な友人だから、相手が私じゃ納得できないのね。」
「おそらく負けて意地になっているだけでしょう。友人だからこそ、素直に負けを認めて欲しいところですけどね。まぁ、放っておけばそのうち熱りも覚めるでしょう。」
(勝負に負けて意地になっていると言うよりは、ミツ君を私に取られたから意地になって取り返そうとする、何か執念みたいな物を感じたけど……うーん、どう言ったらいいのかなぁ。)
うーん、と夢姫が腕を組んで考え込んでいると神風がふわっと夢姫を背中から抱きしめた。
「……それより、僕から一つ提案があるんだ。」
夢姫は神風の腕を両手でそっと包むと、後ろを振り向いた。
「なぁに?」
「僕の怪我は一週間程度運動を控えていれば問題ないそうですが、そうすると次のサークルとコーチの活動は出来なくなります。……つまり、来週の予定が空くので、ゆめきちゃんさえ良ければ来週は二人だけで出掛けたいんだ。」
神風は、無意識に夢姫を抱き締める腕に力が篭った。
夢姫はそれが神風の緊張した心を如実に表しているようで、どこかくすぐったい様な嬉しい気持ちになった。
「…うん、いいよ。」
「ありがとう。何処か行きたいところ、ある?」
「ん〜、そうだなぁ。景色が良いところがいいかなぁ?」
「景色がいい所……か。では、僕がいくつか候補を決めておくよ。詳細は追って連絡するけど、当日はゆめきちゃんの家まで車で迎えに行くね。」
「うん、わかった。」
「……本当はもっと一緒にいたいところだけど、そろそろ外も暗くなって来たし、今日はこの辺でお邪魔するね。来週楽しみにしているよ。」
窓から見える景色は薄暗い空からすっかり暗くなっていた。
「私も、楽しみにしているね。あ!上着!」
立ち上がろうとした夢姫の肩に優しく手を置いた神風は、そのまま夢姫を座らせると、代わりに自分が立ち上がった。
そして、ひょいっと上着を取ると意地悪そうな瞳で夢姫を見た。
「いきなり立ち上がったらダメだよ。さっき転けそうになったばかりでしょ?」
「ううっ。」
正論に反撃出来ない夢姫はジト目で神風を見つめた。
「ああ……その顔、反則……。」
神風は顎に手を掛けると、ふっとそっぽを向いた。
心なしか頬が薄ら赤みを帯びている。
神風の予想外の反応に夢姫はびっくりした表情を浮かべた。
(ええ!?もしや、ミツ君が照れてる!?)
貴重な神風の照れ顔を焼き付けようと思った夢姫は立ち上がった。そして、そっぽを向く神風を下から覗き込んでみた。
……が、その動きは神風の唇によって封じられた。
「んっ!?」
ちゅっ、と音を立てて神風の唇が離れていく。
夢姫の頬は神風より真っ赤になった。
「ミ、ミツ君!」
「ふふっ。そんなに無防備に顔を近付けて来るから、つい。上着、持っていてくれてありがとう。じゃ、来週会おう。」
熱くなった頬を手で押さえながら、夢姫は口を開いた。
「……うん、また、来週ね。」
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