推しと殺し屋
「私のために」
近い
指に力が入る、その瞬間
「ねぇ」
彼女が首をかしげる
「知ってたよ、君のこと」
「その血」
(...え?)
銃を持つ手に触れる
「死神を殺せる家系なんでしょ」
息が止まる
「だから選んだの」
「一番都合がいいから」
「...全部仕組んでたのか」
「そう」
「じゃなきゃ、こんな綺麗にいかないでしょ」
笑う、もう推しだった顔じゃない
指に自分の指を重ねる
「全部私の為にやってきたんでしょ」
(君の笑顔が見たかった...)
「...なんでだよ」
絞り出す
「なんで、こんなことする」
「私は人の運命や死を操れるの...」
死神を見る
「でも、この人だけは無理」
目が冷える
「例外はいらないの」
沈黙
「...その力」
視線を外さず言う
「死神からもらったんだろ」
「そう」
あっさり
「1人、死神消えたけどね」
「ルール違反だって」
肩をすくめる
「人間に力あげちゃダメなんだって」
くすっと笑う
「...バカだよね」
(...最低だ)
「だから、完成させたいの」
一歩近づく
「例外も、無駄も、全部消して」
「完璧にする」
銃に触れる
「その為に、君が必要」
死神が動く
鎌が振り上がる
反射で引き金を引く
死神の肩を撃ち抜いた
「...っ」
何かが抜け落ちる
(あの笑顔を何度も見たはずなのに)
(思い出せない)
(目の前にいるのに)
「ねぇ」
彼女が首をかしげる
「もしかして」
「もう消えてきてる?」
心臓がはねる
「その力さ」
「使うたび削れるでしょ」
「記憶とか感情とか」
(知ってるのか...)
笑う
「死神を殺せる代わりに」
「大事なものから失っていく」




