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「うん。これって……」
「おろおろ? 物凄く不味いのじゃ!」
僕とヒルダが正確に今の状況を把握し、ダラダラと冷や汗をかいているのに対し、
「私の愛弟は、毎晩一緒に寝てくれますわ!」
「なに!? 私の愛娘は、もう一緒に寝てくれぬと言うのに……羨ましいぞ!」
どこか楽しそうに愛弟、愛娘の自慢をしている二人を余所に、第三者から怒りまくった物凄い魔力を感じた。
ちなみに、
「僕は認めて無いから! 姉上が勝手に男子寮にある僕の部屋に忍び込んでいつにまにか寝てて! 明け方に帰っていくだけだから!」
誰も誤解しないように弁明するが、はたしてどれだけの人が信じてくれただろうか?
とにもかくにも、このままじゃビビアンの怒りに巻き込まれてしまう!
そう思い、ダッシュでこの場から離れようとする僕らの肌を、
「せっかく! せっかくつくたのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
暴風雨のような彼女の魔力が撫でた!
さすがにこれは不味いと、魔法防御を張るヒルデの元に駆け寄るのだが、
「お母さんの………………………………………………ばかぁぁぁぁぁぁ!」
彼女はいつの間にか握っていた岩を、渾身の魔力と力を込め、彼女の母親の顔面に投げつけていた。
「へ? 私? 私は何も…………ぐへぇ!」
ぐしゅっ!
身震いするほどの鈍い音が耳朶を打ち、
「ぎゃめら!」
それは人間のこめかみあたりに直撃し、意味不明な言葉と共に落下する巨大な竜。
まあ、当然。
どぎゃあぁぁぁぁぁぁん!
半壊の迷宮は、粉々に砕け逝った。
「うわぁぁぁ! お母さんまた壊した!」
自分が撃墜させたのを高い高い棚に上げ、批難の声を上げるビビアン。
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉ! のう! 脳天直撃! 愛? これが娘のストレートな愛なの!?」
痛みにのたうち回り(迷宮を壊し続け)ながらも、なんだか物凄く前向きな考えのナツミに、同情していいのかどうか迷う。
まあ、
「もう! お母さんなんて、だいぃぃぃぃぃ嫌い!」
「うえぇぇぇぇ! これ、全部私のせい? 私のせいなの!?」
姉上に関わったことで、なんか物凄く不幸に落っこちた彼女に、憐憫の視線だけは向けておこうと思う。
さて、僕らのその後の行動はと言うと…………。
「あらあら……どっせい! ですわ」
荒々しいながらも、どこか品のある上品な掛け声? っで、自分とナツミで破壊した壁の残骸を片付ける姉上と、
「おろおろ、こっちは土壁、あっちは氷壁で良いのじゃな?」
ヒルダがビビアンの指示に従い、あちらこちらに魔法の壁を作る。
まあ、
「え? え? なんで私が力仕事!? 私これでも大陸一の歌姫よ? なんでこんなことしなきゃならない…………」
「あらあら? 何か言いました? 『山のような瓦礫を背負い、芋虫のように』…………」
「はい! 私やります! ってか、瓦礫山盛りで背負ったら、私完全に潰れますから! 私誰かさんみたいにオークと人間のハーフじゃないから!」
「…………では『そこら一帯の瓦礫を片付けるまで、休憩なしさん』行ってらしゃい」
「え? ええ! いや! いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ほんの少しだけ不憫だと思うが、ほぼ自業自得なので、そっと瓦礫を抱えて走り出すミナと、
「ま、まてミナ! 俺も……ぐべっ!」
抱えた瓦礫が足元にこぼれ、それに躓き持っていた瓦礫を盛大にぶちまけ、転げまくりながらもミナを追うセツナを、憐憫な視線で見送った。




