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きっときっと、そろそろ大詰めです!

「きっ! 貴様ら!」


 ヒルダの禁呪で、少しシッポの先が焦げたナツミの歯ぎしりが聞こえる。

 もちろん巨竜の姿なので、歯ぎしりさえも大気を震わす。

 そんな彼女を、


「あらあら? まさか敵対する神々を焼き尽くしたと言われる、最古の竜の炎……。これが全力ではありませんわよね?」


「ふんっ! 人間風情が私と本気でやり合おうというのか?」

「あらあら? 少しは手加減してあげても、よろしくてよ?」


 どこか共鳴(シンパシー)したように、互いに口の端を吊り上げる二人。


 ちなみにマリアーナとヒルダは…………。


「なに私の最高魔力の防御魔法壊してんですか! 嫌がらせ? アルムデル帝国(魔王帝国)からの嫌がらせですか? やるならやりますよ! 国でも元勇者でも使って、戦争やっちゃりますよ!」

「おろおろ? おぬしの防御魔法壊したのは、わっちだけでは無いじゃろ? きゃつの方が粉々に砕いだじゃろ?」


「いいえ! 最初に壊したのはヒルダさんです! もう一回このレベルの防御魔法使うのに、何本魔法回復薬をの飲めばいいと思ってんですか!」

「いやいや、もうおぬしが魔法を使わなくても…………」


「そんな問題じゃないんです! 問題は、これから飲む魔法回復薬で、私のお腹がタプタプになり、それが苦しくて気持ちいいと思ってしまうことなのです!」

「え? え? それが今の問題!?」

 

 どうやらあっちはあっちで、二人仲良く会話を楽しんでるようだ。

(助けを求める視線を向ける、困惑しているヒルダには申し訳ないが、今はスルーしておこう)


 とにかくこちらの方が不味いと、意識を姉上とナツミに向けるが、


「私の愛娘の方が可愛い!」


 巨大な竜の腕が、音より早く振り下ろされ、


「私の愛弟の方が可愛いに決まってますわ!!」


 当たり前のようにそれを切り落とさんと、いつのまにか構えていた剣を振り上げる姉上。


 ギイィィィィィィン!


 両者渾身の一撃が、この場に澄んだ音を響かせ、


 ブアッ! ドッシャァァァン!!


 その衝撃に耐え切れない空気が衝撃波となり、辺りに襲い掛かった!


「ほらやっぱり! ほらほら! やっぱり私の魔法防御が必要だったでしょ? でしょ?」


 マリアーナの防御魔法で確かに助かったのだが、ヒルダに向けた彼女のドヤ顔はかなり鬱陶しい。

 まあ、それで済めばよかったのだが、


「おろおろ? 確かにおぬしの魔法防御は広範囲に有効じゃが……ほれ、ここはひび割れておるぞ! まあ、わっちの魔法で補強してやったから、皆無事なのじゃが……」


 負けず嫌いのヒルダが、勝ち誇った様に口の端を吊り上げた。


「むっ…………むきぃぃぃぃぃぃぃ! そこは人がいなかったんで、あえて薄く張ったんです! こそが壊れても、私の防御魔法には、まったく! これっぽっちも! 影響はありませんでした!」


「むきぃぃぃぃぃぃ! なんて言葉口にする人間、本当にいるんだな」


 思わず口にした僕の呟きは、涙目で睨むマリアーナによって塞がれた。

 それにしても…………。

「ぐびっ! 今度は……ぐびっぐびっ! 完全に守ってみせます!」


 なんだかとてもカッコイイ台詞を共に、魔力回復薬をがぶ飲みするマリアーナに、


「おろおろ? もう魔力切れかえ? なんならこの次はわっちが…………」


 さらに追い打ちをかけるヒルダ。

 そんな彼女に、


「手助け不要! ここは私が! シュタイン王国の聖女である私が! 完全に防いでみせます!」


 マリアーナの今までと違う、真剣な眼差し!


「ふっ…………おろおろ? それではここは任せようかの、シュタイン王国一の聖女様に…………」


 おどけたように、でも、頑張る我が子を見守つように笑うヒルダ。

 

「まったく、ヒルダも素直じゃないな」


 マリアーナのレベルを上げようと、わざと悪役になるヒルダに、僕は思わず苦笑を浮かべた。

 それにしてもヒルダさん、


「ぎゅらぁぁぁぁ!」


 地面を砕くほどのブレスを、何とかギリギリで防ぎ、


「あらあら、えい!」


 それに対抗するために放った姉上の剣戟に対しては…………。


 バリンッ!


 うん。

 かすっただけで粉々に砕けた。


 やはり大気だけでなく、大地おも揺るがすこの場で彼女のレベルアップしようって、少々酷ではないですか?


 そう思う僕の耳朶に、


「ぐびぐびぐび! げふっ! まだです! まだやれます!」


 足元を埋め尽くすほど空瓶をころがし、お腹もいつも以上にタポタポさせながらも、いつもより鋭い視線で声を上げるマリアーナの姿があった。



「まだまだ私はやれますよ! 私、限界を超えろ! スーパーエクストラゴージャスデリシャスデンジャラス絶対魔法防御!」


 いつもの倍以上の魔力を使い、大胆にも繊細に張られた、防御魔法の最高峰まで到達した彼女の防御魔法は!


「あらあら?」

「ぐぎゃぁぁぁぁ!」


 すでに場所を変えて戦う二人に、見向きもされなかった…………。


「げふえぇぇぇぇぇぇ! ちょちょちょっと! なんで行っちゃうんですか! ちゃんと勝負して下さいよ!」


 まあ、別にあの二人の勝負だし、マリアーナは関係ないし。

 なんて素直な感想を口にすることは出来ず、


「おろおろ、うん。まあ、魔力の流れも効率的じゃったし、そえにほら! あれじゃ! そう! あれじゃ!」


 なんとも抽象的過ぎて慰めにもならないヒルダは、自分でもそう思っているようで、僕に視線で助けを乞う。

 なので、


「うん。もしかして姉上たち、マリアーナの防御魔法に恐れをなしたのかな?」

「え? ええ! そうなんですか? シルヴァーナ様! 私のスーパーエクストラゴージャスデリシャスデンジャラス絶対魔法防御を破壊不能だと思って……」


 いままで膝を抱えて、アリの行進をぼんやり見て何か独り言を言ってたマリアーナのテンションが、一気に上がった!

 だが、


「ああ、それは無いよ、だってこの防御魔法。僕が全力出さなくったって壊せるもん!」


 あははっ! っと空気を読まないメイリンが、無邪気に笑った。

 

 せっかく僕らがよいしょしたのに、再びアリの数を数えだした彼女を見て、


「何言ってんだメイリン! 確かにこの防御魔法じゃ姉上の一撃は全然防げないけど、山を三個削った後の撃なら、びくともしないんだぞ!」

「そ、そうじゃ! わっちなら軽く恥ずか死しそうな、剛毅な名で放った魔法じゃぞ! そんな風に言われたら、憤死てしまうじゃろ!」


 僕とヒルダが慌ててフォローを入れたのだが、


「ふぐっ! し……死にたい…………」


 どうやらフォローは間に合わず、彼女は両手で顔を押さえて蹲ってしまった。


「おろおろ、ほれ見るのじゃ! 才能はまったく、これっぽちも無いが、彼女は彼女なりに頑張ったの言うのに、ぬしの一言で台無しじゃ!」

「ふぐっ!」


 ヒルダの優しい一言が効いたのか?

 マリアーナがその場で胸を押さえた。


 うん。

 これは僕も慰めなければと、思考を巡らし言葉を選んだ。

 そして、


「そうだぞ! 彼女がガバガバ飲んでる回復薬が、一本で城下町の人が一ケ月は楽々暮らせる値段だからって、ちゃんと怪我を治してくれるのだから良いじゃないか!」


 ちゃんと彼女が楽になる言葉を選んでやる。

 ちなみに、一般的にはお高い魔力回復薬だが、ヒルダが有り余る魔力を使って作り、それを毎日くれるので、回復薬用の倉庫を新たに作るほど余っている。


 まあ、これだけ慰めれば彼女も…………。


「う、生まれてきてごめんなさい! 無駄に魔力回復薬をがぶがぶ飲んでごめんなさい!」


 あれ?

 なんか今にも死にそうなほど顔を青ざめさせて、泣いていた。


「いやいやいや、二人の言葉優しくないから! その言葉でとどめ刺してるから!」


 僕とヒルデの意外な顔を察したのだろうが、

 いつも空気を読まないことで定評のあるミナからツッコミが入った!


 なぜだ?

 解せぬ!


 とにもかくにも僕らが、マリアーナが自決するのを止めてる間に、


「私の愛弟が世界いちぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


 吠える姉上の一撃を、ナツミが巨大な体に似合わぬ軽さでかわし、その剣戟が迷宮の壁を粉々に打ち砕き、


「我が愛娘の前に、敵はおらぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


 姉上にかわされたナツミの黒炎が、設置されてた宝箱や罠を消し炭に変えた。


 僕らがマリアーナで遊んでいる(自覚アリ)うちに、ビビアンが作った迷宮は、草木のも生えない焼け野原になっていたのだった!

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