第28話 狼と三バカトリオと文芸部
良き再会もあればその逆も然り、今回は喜ばしくない再会と部活についてのお話です。
お楽しみください。
留美の自己紹介での発言で教室中が騒がしくなったが牧村先生(何故か涙目)の鶴の一声でなんとか静かになった。全員の自己紹介が終わり、今後の日程の説明を受けた後、くじ引きで席替えを行い来た順で座った席から別の席になった。これで今日の学校は終わりな訳なのだが、俺と留美と薫の関係を探ろうと生徒達が俺達に詰め寄って来るのは目に見えていたので彼等が声を掛けて来る前に『詳しい事は私の幼馴染の服男に聞いてください』と服男をスケープゴートにして留美の手を引いて教室から飛び出した(教室から服男の声が聞こえるが気の所為だと信じたい)。
その後、薫と理子とも合流出来たのだがどうやら彼女達も自己紹介の時に俺が彼氏であると発言したらしく彼女達のクラスに入った時の生徒達の視線が痛かったのが今でも憶えている。理子のいる1組に入った時なんか恋は顔を真っ赤にして『な、なななな……』と口をパクパクさせ言葉にならないうわ言呟いていた。一方愛は『キャー♥ゆきおくん達ラブラブだぁー♪』と自分事のように喜び俺達の馴れ初めを聞いてきたのだった。
軽く俺達の馴れ初めを説明した後、時間もそこそこ過ぎていたのでいまだ口をパクパクさせている恋を愛に任せて学校から出た。校門で説明会を終えた両親と合流し俺達は父が運転するセレナで帰るのであった。その日の夜は俺達の入学祝いということで父さんが三ツ星の高級レストランに連れて行ってくれた。料理が美味しかったが料理より食事のマナーがわからない薫がガチガチになりながら料理を食べている姿の方が印象に残った。
―――――次の日―――――
「征男様、朝食が出来ました」
我が家の地下室に理子の声が響く。俺が今作業している部屋の前の扉から聞こえる。
「はいよ、すぐに行く」
京極に引っ越してから俺の工房として使っていた地下室の1室で作業していた俺は電子タバコを吹かしながらそれに対して素の口調で答える。
「銃床も切り落としたし、最後は銃身切ってちゃっちゃっと終わらそ」
秋穂で足利兄弟から奪った水平二連散弾銃SO5の銃身をカナノコで切り落とす。
「ふぅ、後の細かい作業は後回しだな。あ〜腹減ったさっさと飯食お…」
作業を途中で放棄し工房の電気を消すと外に出て扉に鍵を掛けたのであった。
「ねぇねぇ、今日はトレーニングしないで地下室に籠ってたけど何してたの?」
学園に向かう途中、薫が普段とは違う行動をした俺に興味を持ったのかそんなことを聞いてきた。
「ああ、うちの庭母さんのおかげでだいぶマシになったけど少し殺風景だと思ってさ、ベンチでも作ろうと材木切ってたんだよ」
通学路には俺達以外の生徒も歩いていたが距離もあるし俺達の会話を盗み聞きするような輩も居ないと思い素の口調で前もって用意しておいたそれっぽい理由を述べる。実際はこの前手に入れた戦利品の手入れと改良なのだが……まあ、ベンチもいずれ作るつもりなので嘘はついていない。
「庭にベンチがあるって素敵だね」
「叔母様が植えた花が満開になりましたらそのベンチで眺めるのも素敵ですね」
「ベンチか……ねぇ征男、ベンチ作り終わったらブランコ作ってよ!私、庭にブランコがある家に住むのが夢だったんだ」
俺のそれっぽい理由を信じた3人娘がそれぞれ答える。てか、ブランコって……ハハハ、こりゃさっさとベンチ作らねえと大変だな。
「ブランコか……今ベンチ用の材木切り出したばっかだからちょっとまってな。薫好みのブランコ作ってやるから」
「わぁーい!ありがとー征男!」
嬉しそうに俺の右腕を抱きしめる薫、そんな薫を見て対抗心を燃やした留美と理子がじゃんけんをしてパーで勝った理子が俺の左腕を抱きしめた。グーで負けた留美は悔しそうだ。いや〜美少女侍らせて登校するとは感無量である。
「征男様、彼処にいるのは恋さん達ではありませんか?」
俺の腕に抱きついた理子が前方を指差す。確かに前方には恋や愛そして服男と思われる彼等の後ろ姿が学校に向かっていた。
「あ、ホントだ!おーい!恋!愛!服男!」
彼等に向かって声を上げながら手を振る薫、彼女の声に気付いた服男達がこちらを振り返る。
「りこちゃん、るみちゃん、かおるちゃん、ゆきおくん!おはよー♪」
朝からテンションの高い愛が手を振りながらこちらに近づく他の二人も愛に続いてこちらに来た。
「おはよう愛ちゃん」
「皆様おはようございます」
「3人ともおはようございます。昨日ぶりですね」
留美と理子が挨拶をし俺もオリジナルの口調に戻して挨拶を交わす。
「やあ、皆おはよう……征男昨日はよくもやってくれたな」
服男がイケメン度割増な挨拶をしながら小声で俺に毒づく、ヤッベ昨日こと根に持ってたか……。
「すみません、昔から弁が立つ服男君なら上手く誤魔化してくれるだろうと思いまして咄嗟に……」
「咄嗟にって……俺が幼馴染だからってお前と星川さんと皐月さんの馴れ初めなんて知らないぞ!クラスの皆にお前達の馴れ初め聞かれても答えられる訳ないだろうが!」
爽やかなイケメンフェイスを崩してまでブチ切れている服男に平謝りしてなんとか許して貰う。服男から許しをいただきふと視線を移せば恋が皆と楽しく話をしていた。
「理子、アンタ何そのメイドみたいな口調と振る舞い?……ッ!まさかブタオにやらされてるんじゃ!?え?違う?………なら良いけど」
「薫、アンタも朝から元気ねぇ……今度どんなスポーツでも良いから勝負しない?負けたらジュース奢りでどう?え?昼ご飯を奢る?フン、ハードを上げるとはね……でもそれで後悔するのはアンタよ覚悟することね!」
「留美、アンタブタオに何か嫌なことされてない?されてたら言うのよ私がアイツをぶっ飛ばすから!」
うちの3人娘と仲良く会話する恋、留美や薫とは昨日が初対面だと言うのに十年来の親友のように会話に花を咲かせているは嬉しいのだが俺の評価酷くね?っか、俺、恋に挨拶されてないような……。
「恋さん、ちょっと私の評価酷くないですか?」
俺が軽口を言いながら恋に近づくと彼女はススッと距離をとってジト目で俺を見てきた。そして―――――
「なんだ……エロオ、居たんだ」
この一言である。
「え、エロオ?」
存在を忘れられたことより、ブタオよりも酷いアダ名のインパクトで呆然としてしまう。なんだよエロオって……。
「だってそうじゃない、一度に3人の女の子と付き合う節操のない奴エロオで十分よ!無視されないだけ感謝しなさい」
「………」
まったくもってその通りなので反論が出来ない。まあ、俺のやってることって三股してる最低野郎だもんな。女性から見たら女の敵だわな。てか、心無しか近くで聞いている服男も俺に非難めいた視線を向けている。あちゃ~服男のような真面目な男から見ても俺のやってることは許容は出来ないか……。
「恋!ちょっと言い過ぎじゃないの?」
「恋さん、お願いです!征男様を責めないでください」
「そうだよ、3人と付き合うようにお願いしたのは私達だもん、征男君が責められる謂れはないよ」
最低三股野郎という第三者の評価に凹んでいた俺を理子達が庇う、確かに複数交際を提案したのは彼女達だがそれは俺が誰か1人を選べないことを本能的に理解してのことだ。ハァー……選べないどころか好かれた女に庇われるとか俺も情けねぇな……でも彼女達に庇われて嬉しい自分もいた。
「ふ〜ん……なら良いけど……征男!理子達泣かせたら承知しないから……良いわね!……フン、恋!服男!行くわよ!」
人差し指を俺に向け、言いたいことを言いまくった恋は俺達に背を向けズンズンと学園に続く地獄坂を登り始めた。
「なァ!?ちょ、恋!待てよ!」
恋のいきなりの行動に慌てた服男が駆け足で後を追う。
「ふふっ、れんちゃんたら……ゆきおくん、皆、先行ってるね……待ってよぉ〜れーんちゃーん!」
俺達に一声掛けて二人の後を駆け足で追い掛ける恋……こうして幼馴染3人組は俺達から離れて行った―――――――
――――――のだが……。
「ハァ……ハァ……ふ、二人とも……ま、待ってぇ……」
「オイオイ、大丈夫かよ?愛」
「ちょっと何やってのよ!折角格好良く去ったってのに台無しじゃない!」
坂の中間でバテた愛とそれを介護する服男と恋、あのまま去っていれば格好良かったのに絞まらない終わりを迎えたのだった。
理子達と別れた俺と留美が3組の教室に入ると多数の視線を集めた。無理もない俺が美少女3人と付き合っていることが発覚してから一日しか経っていないのだ、注目されるのも当然といえる。
「三股野郎……」
「善野みたいなイケメンならともかくなんであんなパッとしない奴がモテるんだよ」
「何かヤマシイ手段を使ったに違いない」
男子生徒達の悪意ある会話が俺の心を抉る。パッとしない奴はともかく三股野郎とヤマシイ手段はマジで俺の豆腐のハートが傷つくからやめてほしい。まあ、救いなのは女子生徒達からそのような会話が無いことか、これで女の敵なんて言われた日には俺はこの学園で生きていけないだろう。ちなみに女子生「」徒達の会話は――――
「悪原君って星川さんと4組の皐月さん1組の待田さんと付き合ってるんだよね?凄くない!?」
「服男君と比べるとそこまでカッコいいとは思えないけど……やっぱり頭良いからそこに惹かれたのかな?」
「バカねぇ〜頭が良いくらいで女の子が3人も惚れる訳ないでしょ……悪原君がモテるのはアレのテクニックが凄いからに違いないわ!」
「アレのテクニック……(ゴクリ)」
「この歳で酒池肉林!?」
「イヤ〜ン!ケダモノ〜」
――――前言撤回、俺やっぱこの学園で生きていけないわ……てか、まさか高校生になって初めて聞く猥談の発信源が女子高生ってどういうこっちゃねん!?オティティンって単語だけで爆笑する男子の下ネタや猥談より過激なんですけど!?
俺は女子の猥談から逃避する為、今日の日程を振り返る。一応今日から授業が始まる訳なのだが、まあ、授業初日ということもあり大体の授業が科目担任と生徒の自己紹介で終わるから気楽だ。そんな感じで午前中は数・英・理・国の4教科の授業という名の自己紹介で終わり、昼食を挟んだ後、午後は部活見学の時間になる。
名門校故かこの学園、学業だけでなくスポーツにも力を入れておりこのような部活の見学を新入生にさせているのだ。部活は強制ではないのでこちらも気楽に見学すれば済むだろう。
こうして取り敢えずの日程を頭の中で整理してから俺は席に着いたのだった。
「ハーイ、国語の先生は3組の担任であるこの私、牧村 美弥でーす!皆よろしくね♪」
1限から3限までの授業(授業と言っても教師の自己紹介と授業内容の説明で終わってしまったが)が終わり、午前最後の授業である国語の時間になった。担当は我が3組の担任牧村先生である。
「みーちゃん先生よろしく!」
「よっしゃぁ!みーちゃん先生か、数学や英語に比べたらだいぶ楽だぜ!」
生徒達から歓喜の声が上がる、無理もない元名門校故かこの学園の教師はお堅い教師が多い(一部例外あり)先の1~3限の授業の担当も真面目が服を着たような教師ばかり授業内容のお堅い内容で俺のような中身おっさんはともかく現役学生からしたら辛くつまらない内容と言えた。それに比べたら牧村先生みたいなオットリしている先生の授業は生徒からしたら心のオアシスと言えるだろう。
「もう!だからみーちゃんはやめてって言ってるでしょ!言った人は罰として宿題だすからね!」
みーちゃんと呼ばれプリプリと怒っている牧村先生、その子供ぽいっリアクションがみーちゃんと呼ばれる由縁なのだが先生はまだ気付いてはいないようだ。
まぁ、子供ぽいっ先生ではあるが授業内容はしっかりとしているので問題ないだろう。強いて問題点を上げるのなら彼女が黒板に書く文字が丸っこい女の子みたいな文字でそれでも国語の教師かよってツッコミを入れたくなるくらいだな。
「それじゃあ、説明も終わったし今日の授業はここまで!食堂を利用する生徒は早めに行かないと混んじゃうから気をつけてね」
それだけ言うと牧村先生は教室から出て行った彼女も食堂利用者なのだろうか?この学園に食堂と購買がある。食堂では休日以外、食堂のおばちゃんが毎日おいしい食事を作ってくれる。購買では焼きそばパンなどのその場で食べれる物が販売されている。両方とも学生からの人気が高く早く行かないと混んでしまい運が悪ければ売り切れで買えないなんてことになるのだ。まあ、今回弁当を持って来た俺達には関係ない話だがな。
「ヤッホー!征男、留美、ご飯食べよ!」
食堂や購買に行く者、弁当を取り出し友達と机を並べ食事を始める者と教室に居る生徒が各々で行動する中、隣のクラスの薫がガラガラと3組の引き戸を開けて現れた。
「あ、薫ちゃん、理子ちゃんも来るからちょっと待ってね」
「オッケー!それで理子来たらどこで食べる?」
「そうですね……今日は晴れているので屋上で食べるのはどうですか?暖かく景色の良い屋上で食べるお弁当はさぞ美味しいでしょう」
薫に俺は屋上で食べることを提案する。流石エロゲの世界と言うべきか、現実なら施錠され立ち入り禁止の筈の屋上に生徒が入っても問題無いのだ(この世界の安全管理はどうなってるのだ?)。
「屋上ッ!?イイネそれ!屋上に賛成!」
「屋上………確かに楽しそうだね。私も賛成」
俺の提案に乗り気な薫と留美、これで後から来る理子も屋上に賛成なら決まりだな。別に屋上じゃなくても良いのだが、教室では好奇(女子)と嫉妬(男子)の視線に晒されるので出来れば飯時くらいは人気の無い所で飯を食いたかったのだ。
「早く理子来ないかな〜♪『バターン!』へぇ……?」
俺達が理子を待っていると教室の引き戸が乱暴に開かれワイワイ騒いでいた弁当持ちの生徒が静まる。なんだなんだ?厄介事か?こちとら皆と昼飯食いたいから関わる気はないぞ。
「邪魔するぜ」
乱暴に開かれた引き戸から高校生とは思えない大柄の男子生徒が教室に上がり込みそれに続くように奴より一周り小柄だが体格の良い男子生徒が数名教室に上がり込む。
「久しぶりだな……ブタオ」
最初に教室に入った高校生とは思えないデカイ図体の男がお世辞にもイケメンとは言えない(どちらかと言うとゴリラ顔)顔を不敵に歪ませる。
「こいつがブタオ?変わり過ぎて笑えるわwww」
ゴリラ顔の後から教室に入った男子生徒の中から高校生とは思えないほどの小柄で性格の悪そうな男が俺を見て下品に笑う。
「ええ、全くです。あの豚みたいな体型だったブタオ……ゴホン!失礼、征男君がここまで痩せてるなんて思いませんでしたよ」
ゴリラ顔の取り巻きの中から今度は一般的な高校生レベルの体格のメガネを掛けた知的そうな男が知的そうな言い回しで喋る、見た目と口調からインテリ風であるが陰湿そうな笑みを浮かべているのでゴリラ顔やその他の取り巻きと性格は同レベルなのは一目瞭然と言えた。
「失礼ですがどちら様ですか?」
相手は俺のアダ名を知っていた。恐らく小学生時代の同級生の可能性が高いが3年も前のことなので俺は覚えていない。だから失礼とは承知で相手の名前を聞く、相手もいきなり大人数引き連れて俺のアダ名を下品に笑いながら呼ぶのだこれくらい良いだろう。
「ひでぇなブタオ、俺のこと忘れちまったのかよ。オレだよ佐藤 毅、小6の頃のマブダチじゃねーか」
佐藤………?あ、思い出した小坊の時に俺と俺が憑依する前のオリジナルをイジメていた主犯のガキ大将じゃねーか!小学校卒業とともに秋穂に引っ越したからすっかり忘れてたわ……てか、マブダチってなんだよ?俺お前にイジメられた記憶しかないんだが?
「ああ、佐藤君でしたか、お久しぶりです……もしかしてそちらの方も?」
色々思う事はあるがそれを出さず、紳士的に振る舞いながら佐藤もといガキ大将の後から来た奴等に視線を向ける。
「ギャハハwwwやっと思い出したのかよブタオwひでーなwwwちなみに俺はお前の親友の鈴木だよ」
平均的な男子高校生と比べると些か背が足りない男が品の無い笑い声で名を名乗る、鈴木……ッ!思い出したぞ、佐藤の腰巾着やってた鈴木 威太郎ことチビのことかッ!3年経ったというのにまだ佐藤の金魚の糞やってんのかよ……呆れて言葉もでねぇ……てか誰がお前の親友じゃボケェ!
「仕方ないですよ威太郎君、3年も経ってるのですから例え仲の良かった学友でも並の頭でしたら忘れてしまいますよ。そうですよね?ブタオ―――ゴホン!失礼、征男君?ああ、一応言っておきますが僕の名前は高橋 優太、これでも小学生時代は成績は良い方だったので君も憶えている筈ですよ」
知的そうなメガネを掛けた中肉中背の男子生徒が長々と喋った後、自己紹介する。まぁ、ガキ大将、チビと小学生時代のイジメっ子三人衆の二人が出てきたから三人目も出てくると思ったが……やはり居たか高橋 優太いやメガネ………てか『仲の良かった学友』やら『並の頭』やらいちいち気に触ること抜かしやがって……やはりあの時2度とメガネが掛けられない体にするべきだったか?
「おお、鈴木君に高橋君お久しぶりですね。まさか、あなた方もこの学園に入学していたとは思いませんでしたよ」
いや〜こいつ等もこの学園に居ることすっかり忘れてたわ、原作だとこいつ等オリジナルをイジメるイジメっ子A.B.Cとして登場してオリジナルをボコったりパシったりカツアゲしたりしてんだよな。
「オレ等は中等部からこの学園にいるんだぜ!つまり高等部から入って来たお前からしたら俺等は先輩って訳だ。敬えよ」
はぁ?何言ってんだコイツ?そんなことを思いながら周りを見れば佐藤達以外のこの教室の生徒達は目を伏せ佐藤達を見ないようにしていた……どうやら佐藤達は中等部時代からこの学園で幅を効かせているようだ。チッ……面倒な奴に絡まれたな。こいつ等をなんとかしてくれそうな服男は生憎先ほど食堂に行ったので不在、クラスメイトは関わろうとしないので助けてくれそうにない。はぁ〜俺1人で対処しろってことかよ……。
「にしても勉強も運動も出来なかったブタオが首席入学ってwww今でも信じらんねぇやwww」
鈴木ことチビがちゃちゃを入れる。
「僕も聞いた時は驚きましたよ。ブタオ――ゴホン!失礼、征男君どうやって首席の座に?カンニングですか?それとも学園長にお金でも渡しましたか?」
メガネこと高橋がメガネを中指で上げながらそんなことを言う。
「ブハァ!お前それ裏口入学じゃねーか!アハハハ!」
「「「「「「アハハハハハハ!」」」」」」
高橋の発言がツボに入った佐藤が爆笑しそれに続いて鈴木と高橋そして佐藤に付き従う他の男子生徒も笑い出し教室中が笑いに包まれるが、元からこの教室にいる生徒は笑い声に反応することなくいまだに目を伏せていた。一方、俺の近くにいた留美と薫は俺のことを馬鹿にされ腹を立てているのか拳握り締めていた。
「それで今日はどのようなご用件で?ただ単に小学校の同級生をからかいに来た訳ではないのでしょう?」
なかなか本題に入らない佐藤達にイラつきを憶えながらも態度に出さず本題を促す。正直俺が奴等のことを思い出した時に奴等が理子もイジメたこと一緒に思い出したのでかなり苛ついている。本当だったら2~3発ぶん殴りたいところだが入学してすぐに問題を起こしたくないので理性で抑える。
「チッ……用件?ああ、思い出したぜ。久しぶりに親友に会ったからよ小坊の時の思い出話でもしようと思ってよ……まぁ、薄情なブタオは憶えて無さそうだからよぉ、俺が手とり足とり俺等とお前の関係を思い出させてやろうって訳よ。感謝しろよ」
馬鹿にしても俺がノーリアクションだったことが気にいらないのか舌打ちをしながら用件を言う佐藤。
「折角の再会なんですからこんな騒がしい所よりもっと静かな所で話しませんか?例えば………体育館裏とか?」
下卑た笑を浮かべながら葬式のように静まり返ったこの教室を騒がしいとほざき体育館裏に俺を連れ出そうとする高橋。
「ギャハハwww頭の悪いブタオにも解るように言ってやるよ取り敢えずツラ貸せってことだよ」
下品に笑う鈴木が先の二人がオブラートに包んでいた内容をぶっちゃけた。
つまりこいつ等は久しぶりに再会した俺を体育館裏に呼び出して自分達との立場関係を改めて俺に理解させる為にリンチする魂胆なのだろう……。やれやれ3年前に俺に睨まれビビった末に糞小便垂れ流したてのに全く凝りてないのな、やっぱあの時睨むだけじゃなく物理的に手を出した方が良かったのか?
「へへッ、そう言うことだからよ。さっさと体育館裏に行こうぜブタ―――「お断りします」あぁ……?今なんつった?」
俺が話の途中で断ったのが気に触ったのだろうか?先ほどまでヘラヘラ笑っていた佐藤が苛立たし気に俺を睨み付け、それを見た鈴木は『あの馬鹿wwwやらかしてやんのwww』と言わんばかりに笑い、高橋は『愚かな選択を……』と言いたげに馬鹿にした表情で俺を見ている。3人以外にも先ほどまで佐藤と一緒に笑っていた佐藤に付き従う男子生徒共が俺にメンチを切ってくる。
「思い出話をするのにワザワザ体育館裏なんて辛気臭い場所に行く必要なんてありませんよ。ここも十分静かですしここで語り合いましょう同級生の佐藤君」
リンチされることが目に見えているのにそんな所にノコノコ行くほど俺は愚かではない。生徒が多く残っている教室で話をすることにしてしまえば奴等だって手を出したりしない筈、そう睨んだ俺は奴等が言う親友ではないこと強調しながら教室で語り合うことを提案した。
「オレに逆らうつもりかぁ?ブタオ?」
ゴリラ顔を怒りで歪ませドスを効かせながら喋る佐藤、中等部時代からやりたい放題やって歯向かって来る奴がいなかったせいか佐藤は歯向かって来る俺が気に入らないようだ。
「黙って従った方が身の為ですよブタオ―――ゴホン!征男君」
俺が愚かな判断を下したと思っている高橋が善人ぶって佐藤に従うように俺に勧めてくる。
「これは否事を仰る。私のことを親友と呼んだあなた方が私に命令?親友とは対等な立場の関係であって上下関係や主従関係はない筈ではありませんか?まあ、私からしてみればあなた方は親友というよりやたらしつこく絡んできた小学校の元同級生位にしか思っていませんがね」
「……」
「ブタオの癖に生意気だぞ!」
俺の返し高橋は言葉詰まらせ沸点の低い鈴木が俺にキレる。
「そんなことより思い出を語り合うんでしたよね。よし!何から語りましょうか?」
キレた鈴木を無視し手をパンと一回叩き俺は語り合う準備は出来ていると奴等に伝える(体育館裏に行く気は無いという意思表情も兼ねる)。
「あっ!これなんてどうです?私に睨まれて動けなくなった話でもしますか?佐藤君」
「なっ!?お前!!」
俺の発言に怒りに歪ませた顔が驚きに染まり慌てる佐藤。
「それとも私にビビって尻もちを付きながら小便を漏らしたことを話しますか?高橋君」
「ちょ!?やめっ……!」
インテリぶってた高橋もメガネをズリ落としながら俺の話を遮ろうとする。
「そうだ!これも良いですね。お尻を抑えてるからなんだと思ったら大便を垂れ流したことを話します?鈴木君」
「う、嘘だ!作り話に決まってる!」
余裕ぶっこいてた鈴木も自身の恥ずべき過去を晒され顔を真っ赤にして俺の話を否定し始めが俺が大声で話したこともあり教室にいる生徒達の耳にも彼等の黒歴史が入ることになる。
「プッwww……!」
「クスッ……アイツ糞漏らしたのかよ」
「バカ!目付けられるから笑うn―――アハハハ、駄目だ!我慢できねぇwww」
最初は1人2人がクスクス押し殺したように笑っていたがそれが他の生徒にも伝染し最終的には教室が先の佐藤達の爆笑以上の笑いに包まれた。
「アハハハ!漏らしたってww小6で漏らすとかヤバイよwwwしかも征男に睨まれただけって……情けなwww」
俺を馬鹿にしていた佐藤達に怒りを募らせいつ爆発するかわからなかった薫だったが俺の話を聞き先の怒りも何処へやらお腹を抱えて大爆笑している。
「ちょっと薫ちゃんそこまで笑わなくても……少し可哀相だよ」
薫のように怒りこそ無かったが佐藤達に不快感を募らせていた留美が爆笑している薫を嗜めるが、彼等のような不良に対して可哀相発言は精神的ダメージを与えるということを気付いているのだろうか?
「黙れ!」
シンと静まり返る教室、笑い者にされた佐藤が怒って一喝したのだ。先ほどまで爆笑していた生徒達がまた葬式ばりに黙り込む。
「ブタオ……テメェ、ホラ吹いてんじゃねーよ。この落とし前どうしてくれるんだ?あぁん!」
俺の目と鼻の先まで近付きガン飛ばす佐藤、改めて見るとデケーな、175の俺に対してコイツ185くらいはあるぞ……しかもただ身長が高いだけじゃなくて格闘家並に鍛えられた体をしている。ブレザーは着ているがYシャツとネクタイを着用せずブレザーの下は黒いタンクトップのみなので筋肉質な佐藤の肉体が嫌でも視界に入る。そういえば原作だと佐藤ってこの恵まれた体を活かして空手部で活躍してたな、中等部から空手部に所属しているとしたらこの筋骨隆々な体にも納得出来る。
「嘘?親友である私が嘘をついていると?なら当時を知ってる人から証言して貰いましょうか?」
「何……?」
「待田 理子……あなた方も憶えているでしょう?実は彼女もこの学園にいましてね、彼女から話を聞きましょうか?ああ、それより中等部からこの学園にいる恋さんに聞きましょうか?彼女も同じ小学校出身ですし」
「……クソッ」
怒りに満ちていた佐藤の表情が悔しそうに歪む、そう理子や恋も彼等の不様な姿を目撃している。特に恋は彼等にとっては天敵そんな恋から自身の触れられてほしくない過去を語られるのは屈辱の極みだろう。
「…………」
「…………」
俺と佐藤との間に沈黙が流れる。さぁ、どうする。引くか?怒りに任せて手を出すか?どっちでも構わんが後者だったら正当防衛で痛めつけてやる。
「チッ……シラけた。戻るぞお前等!」
俺が一歩も引かないと見るや否や佐藤は小さく舌打ちすると手下達に一声掛けて教室から出て行く。
「えっ…ちょ!毅君!?ブタオ憶えてろよ!待ってよ毅君!」
俺に捨て台詞を吐き捨てながら出て行った佐藤を追う鈴木。
「こ、後悔しても知りませんからね!」
メガネを掛け直した高橋が情けない声で捨て台詞吐きそのまま鈴木のあとに続く、他の手下達も慌てて彼等の後を追うのであった。
「ハァー……行きましたか」
面倒くさい奴等を追っ払いため息を吐く。
「大丈夫征男君?」
留美が心配そうに俺の元による、面倒くさかったが俺は問題ない、それより捨て台詞がアニメや漫画みたいで草生えた。
「凄いじゃん征男!喧嘩凄いのはわかってたけど直接手を出さず言葉だけで追っ払うなんて!カッコ良かったよ!」
ハイテンションで俺のことを褒め称える薫、実のところ俺が佐藤達の黒歴史を暴露して教室を笑いに包んだのは薫の怒りを鎮めるためでもあった。俺が馬鹿にされていた時から彼女の中で怒りが蓄積されていたのは手に取るように解っていた。あのままでは爆発して佐藤達に殴り掛かるのも時間の問題だったので笑いを提供して彼女の溜飲を下げたのである。
「悪原君、すごかったよ!」
「佐藤達を追っ払うなんてお前スゲーよ!」
「てか睨んだだけで佐藤達をビビらせたってマジ?」
先ほどまで葬式のように顔を伏せ静かにしていたクラスメイト達が歓声を上げながら俺の元に集まる。どうやらクラスメイト達も佐藤達のことを良く思っていなかったようだ……てか、そんだけ元気があるなら俺がガン飛ばされてる時に加勢してくれませんかね?まあ、佐藤達のおかげで俺の三股問題が有耶無耶になったから良しとしておこうk………ッ!?
ゾクッ―――――
観察するような不躾な視線、殺意の類ではないが俺そのものを観察しようとする不快な視線、それを全身で感じ寒気を覚える。
「えッ?征男!?」
「ちょ!征男何処行くの!」
留美と薫の声を無視して俺は視線を感じた方角、教室の引き戸の所に向かう。あの不快な視線、忘れもしない小学生時代に俺が恋達と仲良く話してる時や佐藤達をあしらった時に感じた視線だ。引っ越してからは視線を感じなくなり佐藤達共々すっかり忘れていたが3年ぶりにまたあの視線を感じたのだ。
引き戸から顔を覗かせ廊下を見る、廊下には多数の生徒が食堂に向かう為歩いており視線の主を確認することは出来なかった。
「……気の所為か?」
そんな訳がない、あの視線は忘れられるものではない……奴も居るのだ。恋や佐藤達だけでなく奴もこの学園に潜んでいるのだ………。
生徒達すれ違う廊下で薫と留美が声を掛けて来るまで俺は立ち尽くすばかりであった。
「へえ〜アンタもまた厄介な相手に目を付けられたわね」
焼きそばパンにかぶり付きながら恋が喋る(行儀悪いな)。今俺達は恋を伴ってやって来た理子と合流して屋上で昼ごはんを食べている。
『服男とお昼食べようと思ったけど愛に先越されたから今日特別に、エロオ、アンタ達と一緒食べて上げるから感謝しなさい!』
焼きそばパンを小脇に持ってツンデレ発言をする恋はツンデレの鏡と言えた。
拒否する理由はなかったので一緒に昼食することになったのだが恋さんやツンデレは俺じゃなくて愛しの服男にするべきじゃないかね?そんなことを考えながらそれを表情に出さずに俺は彼女の説明に耳を傾ける。
彼女の話によると京極学園の中等部に入学してから俺がいないこともあり、彼等三バカトリオはやりたい放題やっていたそうだ。例えば佐藤はその体格を活かして空手部に入り中学生大会で優勝したがそれ故に増長して気の弱いクラスメイトや空手の経験のない新入部員を空手の練習と称して殴る蹴るの暴行をしたり空手の稽古料と称して金を巻き上げたりとかなりの悪行を行っている。鈴木は虎の威を借る狐の如く佐藤の腰巾着をしているおかげ佐藤の次に逆らえない存在となっている。高橋は成績優秀な真面目な生徒なフリをして佐藤や鈴木を裏で操り自分より頭の良い生徒をイジメている(なお、服男のような佐藤に喧嘩で勝てそうな奴には手は出さない模様)。
「ナニソレ……普通そこまでやったら問題になるでしょ?」
弁当を搔っ込む薫が疑問を口にする(君も行儀悪いな)。たしかにそこまでやりたい放題やっていたら学校側も問題にする筈だ。
「あー、ムダムダ、佐藤の所属している空手部、彼処の顧問が毎年大会で優勝している佐藤を手放したくないからって佐藤がやらかした問題全て揉み消してんのよ」
運動系の部活動での活躍(公式な試合での優勝等)は生徒達を指導した顧問の評価に直結する。毎年優勝を提供する佐藤は顧問からしたら手放したくない駒なのだろうな。
「ですが、たかだか顧問がそれらの問題を揉み消せるとは思えないのですが……」
「顧問は学園長の派閥で学園長とはグルだから被害にあった生徒に退学をチラつかせれば揉み消しなんて楽勝よ」
学園長としても自身の評価高める佐藤の空手での活躍は無視できないものだ。もしこれで佐藤の乱暴狼藉が発覚すれば教育指導の責任者である自分の責任問題になるので揉み消しに走るのは当然と言える。敵対する理事長は学園の経営方面に注視しているので学園長が被害者が黙らせておけば理事長達には発覚しないのだ。
「アンタも気をつけなさいよ。今回は大人しく引き下がったけど次もそうとは限らないからね」
俺の身を案じる恋、なんやかんや言いつつも俺の世話を焼いてくれる彼女は好感が持てる。
「御忠告ありがとう御座います」
だから彼女には感謝を込めて頭を下げる。
「フン、それくらいのことで礼を言われる筋合いは無いわよ……そ、それより聞きたいことがあるんだけど」
「はい?なんでしょうか?」
「なんでアンタらのお弁当中身皆一緒なわけ!?しかもどれも手が込んでるじゃない!!」
恋が吠えるのも当然と言える、なんせ俺と薫と理子と留美の弁当の中身はどれも一緒なのだ。
「それは今日の弁当は私が作りましたからね。弁当の中身が一緒なのは当然ですよ」
「はぁあ!?このお弁当エロオが作ったの!?信じらんない…」
恋の顔が驚きで染まる。まあ、彼女からしたら男であり尚かつ作るイメージの無い俺が料理を作れるというのは驚愕するレベルの話なのだろう。
「征男君たら今の時代男も料理出来なきゃ駄目だ!って言ってかなり本格的なの作るんだよね」
「そうそう私よりも美味しい料理作るから凹むんだよね」
「私は征男様から料理を教えて貰ったのですがいまだに勝てる気がしません」
留美、薫、理子の順に説明する。良く皆の弁当を食べさせて貰ったので今日は俺が弁当を作ったのだ。
「宜しければ少し如何ですか?佐藤君達のことを教えてくれたお礼です」
俺がそういうゴクリと喉を鳴らす恋、購買の焼きそばパンだけでは育ち盛りの体には足りないだろうと思ったからだ。
「そ、そう?なら少し頂くわね」
顔を朱に染めながら恋が頷く、俺は弁当の中から渾身の出来である卵焼きを取り出し恋に差し出す。
「さぁ、卵焼きをどうぞ、はい、アーン」
「え!?ちょ!?1人で食べれるから大丈夫よ!」
「良いから良いから、はいアーン」
恋の話を軽く流し卵焼きを恋に向ける。
「あーもう!解ったわよ!食べれば良いんでしょ!食べれば!……なんでエロオなんかにアーンされなきゃいけないのよ……」
観念した恋は顔を赤くしながら俺のアーンに応じる。
「ほら、さっさとしなさいよ……アーン」
口を開け俺の卵焼きを待つ恋、そこにすかさず卵焼きを入れる。
「アム、モグモグモグ……ッ!……美味しい……」
卵焼きを咀嚼していた恋だったが目を見開き驚きの声を上げる。よっしゃ!俺の料理が恋の口にも合うことが解り心の中でガッツポーズをする。
「あのジャンクフードばっか食べてたエロオが信じらんない……てか、料理出来ないあたしってエロオ以下なんじゃあ……」
俺の料理を美味いと言ったと思えば今度は落ち込む恋、女の子とはよくわからんものだ。だが、まあ、俺が料理作れるという事実のインパクトのおかげで何故俺が3人の弁当を作っているのかという疑問が誤魔化せて良かった。3人と付き合ってると言っただけで俺のアダ名がブタオからエロオにレベルアップしたのだ、これで同棲しているなんて知られたらとんでもないことになるからな。
「まあ、なんで落ち込んでいるのかわかりませんが取り敢えずこのお手製きんぴらでも食べて元気だしてください」
「征男は何でも有りだからね。ほら、私の肉ピーマンあげるから元気出しな」
「薫ちゃんピーマン嫌いだからって恋ちゃんに押し付けないの!ごめんね恋ちゃん、お詫びにポテトサラダあげるね」
「なんでしたら私が料理教えしますので一緒に頑張りましょう。あ、これエビフライです」
俺に続いてお弁当のおかずを恋に提供する理子達、これで恋の機嫌も直るだr――――
「一気におかずを持って来るなぁーーー!!」
――――やはり女の子はよくわからん。
「で、アンタ等部活どうすんの?5限って部活の見学でしょ?」
なんとか恋の怒りは鎮まり落ち着いた恋がそう話を切り出す。
「私は陸上かな?スポーツ推薦でこの学校に入った訳だし、体育会系の部活に入らないと推薦がパーになっちゃう」
薫はこの学園の試験をスポーツ推薦でパスしている。この学園ではスポーツ推薦で入学した生徒は学費を免除されるのだが在学中に部活(体育会系)でそれなりの成績を残さないと免除が取り消しになるので部活で活躍する必要があるのだ。
「あら奇遇ね、あたしも中等部の時から陸上部に入っててね、勿論高等部でも陸上は続けるわ」
京極学園の部活動は高等部と中等部の交流を深めるという名目の元、中等部と高等部が合同で部活を行う(流石に体育会系の部活は中等部と高等部で練習内容は別れている。てか中等部に高等部の練習を課すのは普通に考えても問題である)。
「私は家庭科部かな、征男君よりも美味しい料理作ってみたいし、少し被服にも興味があるんだよね」
留美の言う家庭科部というのは料理を作る調理部と衣服などを作る手芸部を1つの部に纏めたものだ。
「メイド部があれば入りたかったのですが残念ながらこの学園には無いので私も留美さんと同じく家庭科部に入りたいと思います」
メイド部って……理子さんやそれは冗談なのか?それともガチなのか?いくら名門校と言ってもメイド部は流石にないと思うぞ。
「ちなみに服男は中等部からやってるサッカー部を継続で愛はサッカー部のマネージャーよ」
サッカーか……チッ!女子モテる部活じゃねーか!(征男と作者の偏見)そんで愛はそのサッカー部のマネージャーと……オイオイ恋さんや愛に思い切り差付けられてるじゃねーか、本人もマネージャーの部分で悔しそうな顔してる。全くそんなんじゃ愛しの服男愛に盗られちまうぞ。
「んで?エロオはどうすんの?」
服男、恋、愛の恋の三角関係について考えていたら恋に部活についての話を振られた。部活かぁ、正直興味無いんだよな。球技系なんて今更やる気ないし、剣道は前世でやったからもういいし、空手は佐藤が居るから論外……てか、そもそもやたら合宿とか行う体育会系の部活動に参加する気はサラサラない。
合宿行ってる間に原作ヒロイン達や俺の彼女達がゲス共の毒牙に掛かってたら笑えない。だからと言って部活をやらなかったら彼女達が部活をやってるのに俺だけが帰って、俺がいない放課後の学園で彼女達がゲス共の毒牙に掛かるというパターンもあり得るので帰宅部は得策ではない。故に放課後の学園に留まる為にも何か自由度の高い部活に入らねばならないのだ(部活もしくは委員会をやっていない生徒は放課後は即座に下校しなければならない)。
「う〜ん、まだ直接部活動を見ていないのでまだなんとも……取り敢えず5限の部活動見学で決めようと思います」
取り敢えず5限になってから考えよう、幽霊部員でもOKな部活ねーかな?
5限、クラス担任の牧村先生から部活動案内のプリントを渡された俺達は各々目当ての部活を見学するために移動を開始していた。
理子も留美も薫も各々気になる部活の見学に行ってしまったので今俺は1人でめぼしい部活がないか探していた。
「どこもかしこも面倒くさそうな部活だな……楽なのないのかね」
プリントを見ながら歩く俺、2~3件比較的楽そうな文化系の部活を見学したがピンと来る部活は1つもなかった。
「あと何処行こうかな……ん?」
人がいないことをいい事に素の口調で呟きながらプリントを眺めていた俺はある部活の紹介に目が止まる。
「取り敢えずこの部活行ってみるか……」
目当ての部活を求め俺はその部活が行われている教室に歩を進めるのだった。
トントントントン
目当ての教室に辿り着いた俺は、教室の戸を叩く。
「はい、どうぞ」
中から聞いたことのある声が聞こえる、女性の声だ。
「失礼します」
オリジナルの口調に戻した俺は一声掛けて戸を開ける。教室内は長机とパイプ椅子そして本棚があるだけのシンプルな空間で中等部の生徒と思われる幼い顔立ちの男女が本を読んだり原稿用紙と思われる紙何かに書いていたりしていた。幼い顔立ちの中等部生の中に俺と同い年の紺碧のボブヘアーの女子生徒が俺に近づく
「あれ?君って同じクラスの悪原君だよね?」
「はい、憶えていてくれて嬉しいです。浅川さん」
俺の目の前に居たのはクラスメイトでクラス委員長を務める浅川 雫だった。
「ふふっ、クラスメイトの名前は全員分覚えるようにしてるんだ」
「まだ2日目なのにもう全員の名前をですか!?それは素晴らしい」
「そうでもないよ、それに君はクラスで一番印象に残ってるからね………三股君だっけ?」
「ハハハ、これは痛い所を突かれましたね」
痛い所を突かれ笑って誤魔化す俺と微笑みを絶やさない浅川さん、何気に彼女と話をするのは今日が初めてだったな。彼女は俺に対しても笑顔を振りまいているが時折瞳からなんとも言えない哀愁を漂わせているように感じるのは気の所為だろうか?
「ところで悪原君文芸部に来たってことはうちの部に興味があるってことでいいのかな?」
他愛もない話で盛り上がっていたが絶妙なタイミングで浅川さんが瞳を直視出来ない位置にさり気なく移動しながら本題に入ってきた(俺が瞳を覗いているが勘付かれたか?)。
「ええ、プリントに同級生の名が部長の欄に書かれておりましたので少し興味が湧きまして……」
プリントの部活動案内には部活動の名前、活動内容、活動場所部活の長である部長の名前が記されているのだが、部長の名前の欄に彼女、浅川 雫の名前が記されていたので興味を懐き俺は文芸部に足を踏み入れたのだ。
「たしかに他の部活は2~3年の先輩が部長やってるもんね」
彼女の話によると文芸部は彼女が中等部の時に立ち上げた部活なのだが彼女以外の部員が下級生ばかりだったので取り敢えず彼女が部長になったのだが同級生や上級生で入部してくる生徒は現れず高等部に進級してからも彼女が部長を続けることになったそうだ。
「なるほど、ちなみに活動内容の欄に本を読んで知識を養い本を書いて知識を広めると書かれているのですが具体的には?」
「ごめんなさい、少し大雑把に書いてたね。じゃあ詳しく説明しますね」
浅川さんの説明によると文芸部の活動は文芸部内にある書籍や学園の図書室にある書籍もしくは部員が持ち込んだ書籍を読み感想文を書き読書感想文のコンクールに参加すること、自作の小説、ポエム、詩、漫画などを書いて各部門のコンクールや大会に参加すること等である。
「と、言っても感想文と作品の執筆は強制じゃないからそこまで深く考えなくても良いですよ。今いる部員にも本読んでるだけの人もいるからね」
「ちなみに活動時間は?」
「平日だったら帰りのホームルーム終わってから完全下校時刻の午後6時まで、土曜日は朝の8時から夜の6時までで日曜日はお休みつまり週6で部活があることになってるけど遅刻早退でペナルティーは無いし週に最低3日来るだけでも大丈夫ですよ」
優しく説明する浅川さん、文芸部というからお堅い部活だと思っていたのだが遅刻早退ありで最低本読んでれば良いって楽な部活だな。てか、これ今の俺に一番相応しい部活じゃね?彼女達が部活に行ってる間、ここで本読んで時間潰して彼女達の部活が終わったら一緒に帰宅……完璧じゃないか。
「解りました、ありがとう御座います。取り敢えず見学良いですか?」
「良いですよ。でも見学って言っても本読むくらいしかないんですけどね」
「構いませんよ。本を読む為に来たようなものですから」
その日のうちに俺が文芸部の入部届にサインしたのは言うまでもない。
そろそろノクターン版の方にHシーンを久しぶりに投稿しよう思っております。近日全年齢版であるなろうの投稿が遅れる可能性がありますので、ご了承お願い申し上げます。




