第27話 再会
お待たせいたしました。
今回は久しぶりにあの人達と再会いたします。
「以上を持ちまして第108回入学式を終わります」
入学式が終わった。あの後京極理事長の挨拶が終わると講堂に居る皆が溢れんばかりの拍手を彼女に送っていた。そりゃあんな美人の理事長の演説だ、内容がわからない奴でも拍手したくなるだろう。拍手を受けた京極理事長は表情1つ変えることなく壇上から降りて行く、う〜んクールな女性も良いものだ。一方金田学園長は自分の演説の時よりも拍手の数が多かったことが面白くないのか不機嫌な顔をしている。そりゃ脂ぎったおっさんの中身の無い話より美人の理論整然とした話の方が評価されるわな…。
「この後、学校説明会をこちらで行いますので保護者の皆様はこちらにお残り願います。在校生は自身の教室に戻り待機、新入生は講堂入口にある掲示板に教室案内が掲載されておりますので自身の名が記された教室に向かい教室に待機願います」
司会進行の教頭がそう言って式を締め括り在校生達が移動を始める。
「薫ちゃん起きて!入学式終わったよ」
「くかぁー……うぅん?ふあぁ〜〜もう終わったんだ」
すぐ隣では式の途中から爆睡していた薫を起こす留美の姿と留美に起こされて大口開けてアクビをする薫の姿があった。薫みたいに式の途中で寝ていた方が良かったのかもしれん、正直学園長のクソ長いしょうもない話のせいで俺は精神的に疲れている。前世含めてあそこまで為にならない演説は初めてだ……ハァ、帰ったら彼女達に癒して貰おう。
そんな不純なことを考えながら俺達も教室に向かう為に立ち上がるのであった。
「1年3組ですか……」
「え!?征男君3組?やった!私も3組だよ、よろしくね!」
「こちらこそよろしくお願いします」
クラスが一緒だと解り、お互い頭を下げる俺と留美、原作と同じクラスに安堵する。本来この場に居ない薫と留美が居ることでどんなバタフライエフェクトが起こるか心配していたがどうやらここら辺は原作通りのようだ。
「ちぇっ、留美は良いな〜征男と一緒で私なんて4組だよ」
「私は1組です……征男様と同じクラスじゃないなんて残念です」
俺と同じクラスじゃないことに拗ねる薫とガッカリしている理子の姿、理子も原作通りのクラスになったようだ。それにしても俺と留美以外見事にクラスがバラけたな……まぁ、全員一緒のクラスなんてありえないし留美と一緒のクラスになれただけでも有り難いのかもしれないな。
「まだ理子はマシな方じゃん昔の幼馴染が同じクラスに居るんだからさ……こっちのクラスは知ってる奴ゼロだよ!ゼロ!!ううっ……不安だ」
薫の指摘通り理子のクラスには恋と愛といった幼馴染2人の名が教室案内に記されていた。これも原作通りだ、ちなみに3人目の幼馴染である服男は俺のクラスだ(ここも原作通り)。原作では既に肉奴隷に仕立て上げた理子に1組の恋と愛の情報を探らせ、自分のクラスでは優秀な服男に劣等感を募らせていたオリジナルが描かれていたな……って、今はそんなことを考えている場合じゃないな。
「薫さん」
「何さ、征男……え?」
ぶーたれてる薫の近くによると俺は彼女の頭に手を添え彼女を撫でる。
「そう落ち込まないでください。休み時間とかには遊びに行きますから、今はこれで我慢してください」
「ゆ、ゆゆ征男!?何やってんの!?人見てるよ!」
茹でタコのように真っ赤になる薫、タカが頭を撫でた位でこれか……キスやらなんやらそれ以上のことをしたというのになんてウブな反応なんだろう。そんな薫の反応が気に入り俺は撫で続ける。
「良いでは無いですか、私達は付き合っているのですから」
「ま、まあ、そうなんだけどさ……うむむ」
なんやかんや言いながら彼女も満更ではないらしく顔を真っ赤にしながら俺に撫でられるのだった。おっと、薫の言う通り自分の教室を確かめに来た新入生達が何事かと言わんばかりこちらを見ている。薫を宥める為に彼女の頭を撫でたがそれを見世物にするつもりは毛頭ない自身の教室が解ったのだし、さっさと引き上げるか……そんなことを思いながら3人娘を声をかけようと俺は振り向く。
「………」ドキドキ
「………」ワクワク
しかしそこには物欲しそうに俺を見つめ頭を突き出している理子と留美の姿がそこにあった。
「………oh」
俺が理子と留美の二人とアンコールを要求してきた薫の頭を公衆の面前で撫でたのは言うまでもない。
「1年3組…1年3組と…」
留美と手を繋ぎ(恋人繋ぎ)ながら廊下を歩く、手を繋ぐつもりはなかったのだが留美から手を絡めて来たのだ。悪くないのでそのままにしているが……うん、すれ違う生徒の視線がウザいな。秋穂中でマドンナと呼ばれていた留美の美貌はこっちの学園でも通用するらしく、すれ違いざまに彼女の顔を見て顔を赤らめる男子生徒が多数いた。
「1年3組……ここですね」
クラスは1組~4組の4つで俺と留美のクラスは3組であった。理子と薫と別れた俺と留美は早速3組の教室を見つけ扉を開けた。
ガヤガヤガヤガヤ
廊下に居た時から聞こえていたが3組は喧騒に包まれていた。俺達より先に教室に来ていた新入生達が教室内でお喋りに興じていたからだ。どうやら3組は内部進級組が多いようで「」新入生だというのにお互いもう慣れたようにタメ口で会話をしていた。
外部編入組である俺達的にはアウェイな空気だ。留美もそんな空気を感じたらしく繋いでいる俺の手を強く握る。緊張気味な留美の手を微笑みながら握り返すと俺は留美を連れ教室に入る。
「アハハハ!それでさ……はへぇ?」
「ハハハ!ん?どうした?……おぉ!」
入口近くで駄弁っていた男子生徒の1人が留美の美貌を目の辺りにして間抜けな顔をし、そんな相方を不審に思った話し相手のもう1人の男子生徒が間抜けな顔を晒す男子生徒の視線の先にいる美少女(留美)を見て驚きの声を上げる。
「うわ!スッゲかわいい子いんじゃん!」
「うちの中等部にあんな子居なかったよな?どこ中なんだ?」
「綺麗な髪……モデルさんかな?」
「女の私でも見惚れちゃうわ〜」
先の男子生徒の驚きの声で教室にいる生徒達が一斉に俺達の方を向き秋穂で深窓の令嬢と言われていた留美の姿を見て皆がその美しい姿に目を奪われる。元女子校故なのかこのクラスに男子生徒は少ない比率で言うと4分の1しかいないのだがその全ての男子生徒が留美の美しさに心奪われ頬を赤らめながら彼女を眺めている。一方、4分の3を占める女子生徒もモデルと言っても通用しそうな留美の美しさに羨望の眼差しを向けている。
「ゆ、征男君、私スゴく見られてる気がするんだけど……何かおかしいところでもあるのかな?」
皆の視線の理由がわからない留美が自分の格好におかしいところでもあるんじゃないかとキョロキョロと自身の衣服や身体を気にしながら俺に問うてくる。
「いいえ、おかしくはありませんよ。留美さんの美しさに釘付けになっているだけですから」
「う、美しさ?またまた征男君たら、そういう冗談言って…」
顔を赤らめながら否定する留美、美しいと言われて嬉しそうであるがクラスの皆が自分のことをそういう風に見ているとは思っていないようだ……。やれやれ、薫や理子もそうだが君等自分の顔面偏差値過小評価し過ぎだろ!逆に俺みたいなフツメン(ブサメンではない……筈)をカッコいいなんて過大に評価するし……訳がわからん。
「すみません少し宜しいですか?」
「え……お、俺?お、オウ!ど、どうした…んですか?」
このまま生徒達にパンダの如く見られるのも嫌だったので先の間抜けヅラを晒した男子生徒に声をかける。
「皆さん席に座っているようですが座り順等は決まっているのでしょうか?」
「え?あ、いや、来た順に適当な場所に座ってるだけだ……です。正式な席順は担任が来てから決めるんで……」
しどろもどろになりながら俺の質問に答える男子生徒、てかなんだその取ってつけたような敬語?後チラッチラッ留美の方見るなや、話してんの俺やぞ(怒)という思いは表に出さず紳士的な態度で男子生徒の発言に耳を傾ける。
「そうですか、ありがとうございます。留美さん先生が来るまで時間がありますので薫さん達の所に行きませんか?」
薫が新しいクラスに馴染めているか心配だったし、理子のクラスにいる恋や愛にも会いたい気持ちがあったので留美にそう提案した。
「うん、そうだね私も薫ちゃんがクラスに馴染めててるか心配――「ヤッホー征男!留美!」ふふ、噂をすれば」
バシャン!と教室の引き戸が勢い良く開き左手を腰に添え右手で俺達に手を振る薫がそこにいた。
「うお!?美少女二人目!!」
「最初の子とは別タイプの美少女だ……」
「元気っ子って感じだな……俺はこっちの子の方がタイプだ」
ズカズカと教室に上がり込む薫に再度生徒達は目を奪われる。
「さっきぶりです薫さん、自身のクラスはどうでしたか?」
「うん、なんか知らないけど色んな人が私に話し掛けて来て友達になれたよ!」
そう言ってVサインを掲げる薫、そりゃあ薫みたいな美少女がクラスメイトになったら友達になりたいわな……でもまぁ薫が新しい学校でも上手くやっていけそうなことに安心する(友達以上の関係になろうとする悪い虫が出ないかという心配事が増えたのは言うまでもない)。
「ねえ、これから理子のクラスに行こうよ!私、理子と征男の幼馴染に早く会いたいなぁ」
「ふふっ、薫ちゃん私達もそれ考えてたんだ。ねえ?征男君」
「ええ、先生方が来るまで時間がありますし、早速行きましょうか?」
「さんせー!じゃあ早速行こっ!ん、左は留美に取られてるから右は私が貰うね」
俺が左手で留美と手を繋いでることを確認した薫は俺の右手を取り手を繋いだ。
「出発!進行!」
「もう薫ちゃんたら……フフフ」
俺の手を握った薫がズンズンと前に進む、そんな姿に苦笑しながら留美も薫に続き結果俺も二人に引っ張られるように前に進むのだった。
「アイツ、美少女と手繋いでなかったか?」
「ああ、しかも二人と……」
「え?どっちかの彼氏ってことか?」
「まさか、あんな普通の奴と?冗談だろ」
「そうそう、彼氏にするならあんな冴えない奴より俺の良いに決まってる」
教室を出る時、男子生徒のそんなやり取りが聞こえた。そういう話は俺達が行ってからにしてくれませんかね?冴えないって自覚してても他人に言われる傷付くんだぞ(豆腐メンタル)!まぁそれはともかく3組の教室を見回したが、服男は居なかったな……俺達みたいに他の教室に足を運んだのだろうか?
薫と留美に引っ張られ俺は1組の教室前にたどり着いた。
「おっ邪魔しまーす!」
薫が元気よく教室の引き戸を開ける。1組の教室内は3組と同じように生徒達の喧騒に包まれていた。
「あ、理子みっけ!」
薫の指差す方に理子がいた。しかし理子は他の生徒達と話していてこっちに気付いていない。
「理子ちゃん!」
「あ、留美さん!」
留美の呼び掛けで俺達の存在に気付く理子、そして理子が反応したことで理子と会話をしていた生徒達もこちらを向く、生徒の数は3人、1人は短髪で艶のある黒髪のジュニアアイドルも素足で逃げそうな爽やかフェイスの持ち主で先の入学式で新入生総代を努めた少年、善野 服男、3組に居ないと思ったらこっちに来ていたのか……。
もう1人は水色の腰まである長髪をツーサイトアップにした垂れ目の少女、男ウケ間違いなしのボン・キュッ・ボンの高校生とは思えないナイスバディな少女……3年ぶりだが間違いない彼女は西寺 愛、俺の幼馴染の1人だ……彼女がいるということは……。
ここまでくれば3人目が誰であるか解る。ピンクの髪をツーサイトアップにした釣り目の少女、しなやかなでスレンダーな愛と対比的なボディの持ち主は間違いない……東堂 恋、小学生の時メタボリックだった俺の体を鍛えるのを協力してくれた一番世話になった幼馴染だ。
「理子知り合いなのか?」
俺達に気付いた服男が理子に聞く。
「あれでしょ?さっき理子が話してたアキホだっけ?引っ越し先で仲良くなってそのままうちの学園に入学したっていう友達でしょ?」
理子が説明する前に恋がそう言い結論づける。
「初めましてね。理子から聞いてると思うけどあたしは東堂 恋、理子の幼馴染よよろしく」
「君達がりこちゃんの言ってたお友達だね!初めまして!私の名前は西寺 愛よろしくね♪」
無い胸を張って自己紹介をする恋と理子の友達と聞いて目を輝かせながら自己紹介する愛、態度は違うが二人とも薫と留美に好意的で安心する。
「こちらこそ、私の名前は星川 留美、よろしくね。恋ちゃん愛ちゃん」
「私は皐月 薫、よろしくね。恋!愛!」
留美も薫も笑顔でそれに応じる。この調子なら問題なさそうだ。
「ねえねえ、るみちゃん!りこちゃんとゆきおくんが向こうでどんな風に過ごしてたか教えてよ」
「ふふっ、良いよ愛ちゃん、替わりにこっちのこと私余りわからないから教えてね」
「勿論だよ!」
留美は愛と会話に花を咲かし……。
「理子と征男から聞いたよ運動神経抜群な幼馴染が居るって……それ恋のことでしょ?」
「へぇ理子ったらそんなこと話てたんだ。勿論それはあたしのことよ!」
「奇遇だね。私もスポーツは大好きなんだ!恋、今度私となんかやろうよ!」
「良いわねそれ、望むところよ薫!」
褒められて満更でなさそうに腕を組んでいる恋に趣味が同じ薫が勝負を仕掛けている。両者とも仲が良さそうで嬉しいのだが、俺蚊帳の外じゃね?
「ところ、そちらの方は幼馴染の善野君ですか?」
「おっと、ごめん紹介が遅れた。俺の名前は善野 服男、恋と愛の幼馴染だ。俺のことも名前で呼んでくれると嬉しい」
ガールズトークが盛り上がり俺と同じく蚊帳の外だった服男が留美が話を振ったおかげで何とか自己紹介に漕ぎ着けた。イケメンでもガールズトークに踏み込めないのかと思ったが自己紹介の時に浮かべたイケメンスマイルがサマになっていたのが少し癪に障るが幼馴染なので見なかったことにする。
「初めまして服男さん私も留美って呼んでください」
「よろしくね。服男!私も薫で良いから」
「これで全員自己紹介終わったわね。改めてよろしく……ってそういえばあんたの紹介がまだだったわね」
そんなことを言いながら俺に視線を向ける恋……って、え?
「あの恋さん、そちらの方は征―――「向こうの男友達?でもそういう話は聞いてないし……あ、まさか理子!入学してすぐに男引っ掛けたの!?あんたやるわね〜」いえ、そうじゃなくて……」
「コラ恋、男引っ掛けたとか言うなよ。初めまして俺の名前は服男、君は?」
なんか勘違いしている恋と俺に自己紹介する服男……どういうことだ?なんか初対面みたいな対応されてんのだが……まさか俺だって気付いてない?
「ふ〜ん整った良い顔してんじゃない。理子、あんた良い男見付けたじゃない。まあ、服男ほどじゃないけどね」
あ、これ完全に俺だって気付いてないパターンだ……マジかぁ〜……まあ、3年も経ってるし、小学生の時はまだポッチャリしてたから気付かないのも無理ないかもしれないけどさぁ……少し凹むわぁ……orz。
「あのすみません。こちらの方が征――「それにしてもブタオの奴、理子放っといてどこで油売ってんのよ!私達に挨拶もしないなんてホント舐めてるわね!」ですから……」
理子が何とか恋に伝えようとするのだが恋に遮られてしまっている。どうしたもんか、俺から伝えるのもなんかアレだしな……。
「ジー……」
ふと横を見れば愛がジーと俺を観察していた。ん?なんだろうか?
「久しぶりだね!ゆきおくん!」
「「「「えっ………」」」」
俺を含めてその場にいた皆が驚きの声を上げる。まさか愛は俺のことを気付いていたのか?
「ち、ちょっと愛、何言ってんのよ……あのブタオと全然似てないじゃn―――「恋さん……愛さんの仰る通りそちらの方が征男様です」えっ……嘘……でしょ…」
愛の発言を信じて居なかった恋は理子の発言で目を見開き俺を見詰める。
「お久しぶりです愛さん」
「うん、久しぶりだね、ゆきおくん」
「嘘……」
「マジかよ……」
俺が愛に征男として挨拶すると恋と服男から驚きの声が上がる。一方、愛は俺との再会が嬉しいのか上機嫌だ。
「メールでやり取りはしてたけど、ゆきおくんカッコよくなったね」
「ハハハ、ありがとうございます。あ、そうだ、愛さんLifeやってます?連絡先交換しませんか?」
「ゆきおくんもスマホ持ってるの私も持ってるから交換しよ!しよ!」
自身のスマホをシャカシャカ振る俺と愛、よし!登録人数が増えたぞ!
「ねぇあんた……本当にブタオなの?」
俺がLifeの登録人数が増えたことでテンションを上げている時に恋がいまだに信じられないという表情でそんなことを言われた。
「ええ、お久しぶりです。恋さん服男君3年ぶりですね」
そう言って頭を下げる。二人が息を呑むのが解る。
「ゆ、征男なのか、だ、だいぶ変わって驚いたぞ」
服男が驚きながらも俺にイケメンスマイルを向ける。ケッ!イケメンは驚いた顔も絵になりやがる。
「ふ、ふーん、久しぶりね。ブタオ、少しはマシな姿になったじゃない」
腕を組んみソッポを向いてそんなことを言う恋、あれ?さっき俺のこと良い男って言ってなかったけ?正体解った途端一気に評価がダウンしたんですけど……。
「ハハハ、恋さん、ありがとうございます。あ、お二人もLifeやってます?よろしければ交換しませんか?」
そう言ってスマホを取り出す俺、連絡先が解ってる方が後々楽だからな。
「え!?お前スマホ持っての!?あ、すまん以外だったからつい……えっと交換だよな?いいぜ俺も幼馴染と再会出来て嬉しいよ」
何故か俺がスマホを持っていることに驚く服男、失礼なやっちゃな……まぁ快く応じてくれたから別に良いけどさ。
「フン!仕方ないわね。どうせブタオのことだから理子達以外にLifeの連絡先ないんでしょ?ならあたしが特別に交換して上げるわ!感謝しなさいよね!」
ビシッと人差し指で俺を指差してそう宣言する恋……うっ、否定したいが事実なので否定出来ない……悔しいが彼女のお言葉に甘えるとしよう。
「ありがとうございます。服男君、恋さん」
こうして俺は3人のLifeの連絡先を手に入れた。
「おっと、そろそろ先生が来る時間ですね。そろそろ戻りましょう」
久しぶりの再会に喜ぶ俺達だったが時間が過ぎるのは早いもので腕時計を見たらそろそろ各クラスの担任が来る時間帯になっていた。
「えぇ!もうそんな時間!?恋ともっと話たかったのに……」
「残念、私も恋から小学生時代の征男君のこと聞きたかったのに」
「せっかくの再会なのに残念です……」
幼馴染と久しぶりに再会した理子と新しい友達に出会えた留美と薫は残念そうな顔をしている。
「そう残念がることも無いわよ薫、この学園に通う以上話す機会なんていっぱいあるんだから」
「私もるみちゃんから中学生時代のゆきおくんがどうしていたのか聞きたかったのに残念……」
「まあ、こればっかりは仕方ないよ積もる話は後日ということで……」
恋達も新しい友達と多く語り合いたかったようだがこればかりは仕方ない。
「恋さん服男君の言う通り、話す機会はまだありますし話は後日にしましょう。それではお三方、失礼します」
頭を下げて会釈した俺は理子を残し薫と留美を引き連れて1組の教室から出る。出る時1組の生徒の注目の的になっていた。無理も無い、学園内の美少女上位に入る恋と愛そして文武両道でイケメンな服男という中等部時代から男女共に絶大な人気を誇るあの3人の前に突然現れて仲良く会話をする外部編入組の3人の美少女とフツメン男子生徒(ブサメンではない……筈)注目されない方がおかしいくらいだ。
「ねぇ…征男君やっぱり私の格好変じゃない?こっちの教室でも凄く見られてるような気がする……」
3組同様に他の生徒の視線を感じた留美が自身の身嗜みを確かめる。まったく、留美は自分の魅力に自覚を持つべきだ。
「留美さん、さっき言った通り、皆貴女の美しさに見惚れているだけです」
「う、美しいって……征男君たらまた冗談言ってる……」
顔を赤らめて俺の発言を否定する留美、冗談じゃないんだがな……。
「アハハ!流石秋穂のマドンナ!都会でも人気ですなぁ〜「言っておきますが薫さん貴女もですよ」ふえぇ!?う、嘘だぁ……」
―――どうやら自分の魅力に気付いていないのは留美だけでは無いらしい……留美同様顔を赤らめる薫を見ながら俺は溜息を吐くのだった。
4組の薫とも別れ3組に戻った俺と留美、幸い担任はまだ来ていなかったので適当な席に座り(留美の隣)担任が来るのを待つ。
「遅くなってごめんなさ~い……あ、痛っ!」
バシャンと扉が開き丸眼鏡のゆるふわヘアな教師、牧村 美弥が教室に飛び込むようにして入って来たが段差に躓いてすっ転んでしまった。オイオイ……大丈夫か?
「いたた……あ、皆さんご入学ご進級おめでとうございます!私はこの1年3組の担任、牧村 美弥って言います。これから1年よろしくね♪」
転んだ拍子にズレてしまった丸眼鏡を掛け直しながら黒板に丸みを帯びた女の子ぽいっ筆記体で自身の名前を書く牧村先生(教師がそんな字書いて良いのか?)。
「やったぁー!みーちゃん先生だ」
「みーちゃん先生よろしく~」
牧村先生と面識がある内部進級組と思われる生徒達から牧村先生を歓迎する明るい声が聞こえる。牧村先生の人気がわかる場面だな。
「もぉ〜!みーちゃんは止めてって言ってるでしょ〜!」
みーちゃんと呼ばれたことがお気に召さないのか牧村先生はプリプリと怒っているしかし童顔で可愛らしい彼女が怒っても迫力がない寧ろ可愛い。牧村先生は生徒から人気が高いのだが小柄な体型と童顔のせいで教師というより少し年が上のお姉さんという風に生徒達から思われている。本人はそれを払拭したいようだが……あの調子じゃ、しばらくは無理だな。
「まったくもう!次から牧村先生って呼ぶこと!」
「「「「「ハァーい」」」」」
適当な返事で返す内部進級組達、この様子じゃあ彼等が牧村先生と呼ぶのはしばらく無さそうだ。それどころか牧村先生を知らない外部編入組も牧村先生の可愛らしい反応を見て笑っていることから彼等も彼女のことをみーちゃんと呼ぶのは確定と言えた。
「それじゃあ、先生の自己紹介も済んだことだし、次は君達の自己紹介だね。廊下側から順にお願いね」
生徒達の適当な返事に満足した牧村先生は生徒達に自己紹介をするように提案した。
自己紹介……懐かしいな。秋穂中の頃は入学当初に一回クラスメイトに向けて教室でやったが進級してもクラスが変わらなかったからそれ以降やってないんだよな。
「善野 服男、京極学園中等部の出身です。趣味は読書とスポーツ、同じ中等部出身の人は改めてよろしく、外部から編入して来た人はわからないことがあったら俺に聞いてくれ、最後に皆一年間よろしくな!」
最初に自己紹介をしたのは服男だった。爽やかな笑顔と共に自己紹介する姿は正しくイケメンである。
「キャー♥服男君よ!」
「服男君と同じクラスだなんてツイてるわ!」
「ヤダ!新入生総代のイケメン君だ♥」
「服男のヤツまた女子人気独占しやがったよ」
「イケメン死すべし」
女子からの黄色い悲鳴が凄まじい、見た目だけじゃなくて自己紹介もあんな爽やかだったらそりゃ黄色い悲鳴の1つや2つ上がるか、一方一部の男子から怨嗟の声が聞こえる。クラスの全男子からじゃないことから服男の人徳が伺い知れる。
「最初が服男ってハードル高いな…」
実際、服男の後に自己紹介をした男子生徒に対する女子の反応は薄かった。それほど服男のインパクトが凄かったという証明なのだが後から自己紹介する俺達男子からしたら溜まったもんじゃねーな。
「京極学園中等部から編入しました浅川 雫です。好きなことは読書と料理、みんな1年間よろしくね」
おっ!新たな原作ヒロインの登場だな。教卓の前で自己紹介するのは、紺碧色のおかっぱボブと泣きボクロがトレードマークの美少女、彼女の名は浅川 雫、原作ではこの1年3組のクラス委員長を務める薄幸の美少女だ。薄幸と言ったのは彼女の並々ならない事情があるのだがその話は後日にしよう。
「雫!今年もよろしくね!」
「浅川が居るってことは委員長は決まったもんだな」
中等部の頃から浅川さんに面識のある女子が彼女に笑い掛け、中等部の頃からクラス委員長を率先してやっていることを知っている男子が今年のクラス委員長も彼女がやるだろうと安堵の笑みを浮かべる。
浅川さんは終始笑顔を浮かべているがそれが自身の抱える問題を周囲に悟らせない為の作り笑顔だと言うことをどれほどの人が気付いているのだろうか?彼女の抱える問題をいち早く取り除いてやりたい所だがこの世界が原作とどれほどの差異があるのかわからない以上、心苦しいが慎重に行動するしかない。
「なんか緊張して来ちゃったな」
ふと視線を移せば緊張気味な留美が不安そうな顔を俺に向けていた。いけないいけない浅川さんも大事だが自分の彼女を疎かにして良い訳ではないからな。
「大丈夫ですよ留美さん、貴女の社交性なら普段通り振る舞えば大丈夫です」
そう言いながら俺は隣に座る彼女の肩に軽く手を添える。
「征男君……うん、ありがとう!」
俺の励ましが効いたのか笑顔になる留美、良しこれで彼女は大丈夫だろう。
「次は……悪原君、悪原 征男君、君の番だよ」
おっともう俺の番か早いものだな。俺は留美に行ってくるとウインクしながら言った後、俺も教卓の前に向かう。教卓からは教室にいる生徒全員を見渡せる。留美や薫といった美少女と仲良くしていたせいか他の生徒の自己紹介より注目されているような気がする……。まあ、なんとかなるだろう。
「初めまして皆さん、秋穂中学校から参りました。悪原 征男と言います。どうぞ、お見知り置きを……小学生の頃までは京極に住んでいましたが、中学は東北の田舎に住んでいましたで右も左もわからない浦島太郎状態ですので皆さんにご迷惑をお掛けするかもしれませんがどうぞよろしくお願いします」
そう言って俺はペコリと頭を下げた。
「悪原?どっかで聞いたような………?」
「おい馬鹿!アイツ、ブタオだぞ!小学校にいたあのブタオだ!」
「オイオイ、何冗談言ってんだよ。体型とか全然違うじゃねーか」
「ねえあの彼って見た目は服男君程じゃないけど口調とか立ち振る舞いとか素敵じゃない?」
「わかるわかる!落ち着き払ってるからかな?同年代とは思えないくらい大人びてるよねぇー」
男女から様々な意見が飛び交う。女子が言っていた立ち振る舞いは前世の頃、金持ちの護衛を引き受けた時に身に着けたものだ。金持ちはやたらとパーティーに行くもんだから嫌でも一流の立ち振る舞いをマスターしなけりゃならん。まぁ、それのおかげで女子からは比較的好評価だったのは嬉しい誤算だ。それより問題なのは男子達だ、俺の名を聞いた途端にあの驚きよう……ん?よく見れば見知った顔がチラホラと……小学生の時の同級生かな?俺のあだ名を知ってるのはそれくらいしかいないからな。
「ちなみに悪原君、新入生総代は辞退したけど入試の筆記試験を首席で合格した天才君だから勉強でわからないことがあったら彼に教えて貰うのも1つの手かもね♪」
俺について補足説明を入れる牧村先生……って、ちょ、ちょっと!何勝手に首席合格者&新入生総代辞退したこと暴露してんの!?目立ちたくない(めんどくさい)から総代辞退したのに……これじゃあ首席で合格したのに総代辞退した変わり者ってことで目立つやんけ!
実際、牧村先生の発言のせいで教室中から驚きの声が上がってるし……。
「え、ウソ!?彼、服男君より頭良いの!?」
「首席なのにどうして総代辞退のかしら?」
「ブタオが首席合格!?」
「ブタオが首席合格って、信じらんねぇ……」
ヤベー目立ちたくないのにとんでもないことになってる。こりゃ他のクラスに広がるのも時間の問題だな……。
「ハハハ、紛れですよ」
俺は笑みを浮かべて誤魔化す羽目になった。
「征男君、人気者だね」
注目の視線から逃れるように席に戻った俺に留美が笑みを浮かべる。自分の彼氏が注目の的なのが嬉しいのだろうか?
「人気というより物珍しいから注目されてるだけです。しばらくすれば飽きられますよ」
生徒達から向けられる驚きと好奇の視線、まるで客寄せパンダになった気分である。
「次は……星川さん、星川 留美さん、自己紹介お願いね」
ついに俺の隣の留美の番がやってきた。彼女は俺に軽くウインクすると先程の緊張が嘘のようにゆったりとした落ち着いた足取りで教卓前に向かう。流石、秋穂のマドンナ歩く姿もサマになっている俺に注目していた生徒達も今じゃ彼女に釘付けだ。
「東北の秋穂中学校から来ました。星川 留美です。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げる彼女、頭を上げて生徒達にニコっと微笑む、こりゃ決まりましたわ……。
「綺麗な黒髪……」
「何処かのお金持ちのお嬢様かな?」
「黒髪ロングの美少女キター!」
「1年のマドンナ、恋や愛に並ぶ美少女だ!」
留美のことを男女問わずに絶賛する3組の生徒達、彼氏としても嬉しい限りだ。
「あれ?秋穂中って悪原君も確かその学校の出身だよね?二人って何か関係あるのかな?」
「そういえばさっきから二人とも仲良く話してたよね?」
「話どころかこの教室に入ってきた時、手繋いでたぞ」
「そうそう!あ、後、隣のクラスかな?日に焼けた短髪の美少女とも仲良くしてたよな?」
「美少女二人と仲良くって羨ましいな……ブタオの奴二人とどういう関係なんだよ」
あ、ヤバイな、感の良い奴が俺と留美そして薫との関係に興味を持ち始めてる。折角美人の留美で俺に対する注目がなくなったと思ったのに、また俺に注目が集ってしまった。
「ねぇねぇ星川さん、悪原君と手繋いでたけどどういう関係なの?」
女子の1人が直接留美に聞いて来た。一瞬こちらに視線を向ける留美、これ以上注目を集めたくない俺は留美の高いコミュ力を使って上手く話を誤魔化して欲しいという思いを込めて真剣に彼女の目を見る(届け!この思いッ!!)。すると、俺の思いが届いたのか留美は俺に微笑んだ。よし!これでなんとかなったな。
「えっと……その……征男君は……」
アレ?なんか留美モジモジしてね?顔も赤いし……。
「征男君は私達の彼氏です♥」
「「「「え、えええええぇ!?」」」」
な、なぜだぁーー!クラスメイト達の驚きの声で包まれた教室で俺も心の中で叫んでいた。どうやら俺の真剣な目線の意味が留美は伝わらなかったようだ。
「美少女の恋人があんな冴えない奴って……何かの間違いだろ」
「キャー!彼氏だって!ねぇねぇ星川さん馴れ初め教えてよ」
「てか、私達の彼氏ってどういうこと?……ッ!?まさかさっき教室に来てた短髪の子も?」
「なんだよそれ……二股じゃねぇか!」
「でも星川さんの口調からして同意の上だろ?それ二股じゃなくね?」
「美少女二人が彼女って……ナニそれうらやま」
「ううっ……先生まだ彼氏いないのに高校生になったばかりの子にはいるなんて……世の中不公平過ぎるよぉ〜」
様々な声が飛び交う教室、俺はその中でただ苦笑するしかなかった。
今回で入学式関連の話は終了です。次回は学園での生活を描きたいと思います。




