表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元数学者、異世界を数字で書き換える  作者: godrenkon
第一章 復讐編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/30

元数学者、異世界を数学で書き換える 第9話

元数学者、異世界を数字で書き換える


第9話「安全ルート表」



Cランクに昇格してから、俺は少しずつ活動の幅を広げていった。


依頼をこなしながら実戦経験を積み、演算展開のスキルレベルも着実に上昇していく。今では小規模な建造物――簡素な小屋程度なら、時間をかければ構築できるようになっていた。


「演算展開・物体構築」


森の中の空き地で、俺は試しに簡易的な四阿を組み立ててみた。木材の分子構造そのものを操作し、釘も工具も使わずに組み上げる。


「……悪くない出来だ」


完成した四阿を眺めながら、俺は満足げに頷いた。


まだ一軒家を建てるほどの規模には及ばないが、着実にスケールが大きくなっているのは実感できる。


その帰り道、俺はふと、ギルドの依頼掲示板に目を留めた。


「白銀の獅子」の名前が、また新しい討伐依頼の受注者として貼り出されている。


「……また、あのルートか」


討伐対象は、王都近郊に出没する凶暴化したホーンラビットの群れ。依頼内容の詳細を見ると、やはり俺が以前作成した地図とほぼ同じルートが使われていた。


少し複雑な気持ちになりながらも、俺はふと気になって、依頼票の隅に描かれた紋章を確認した。


やはり、あの灰色の紋章がある。


「灰色商会、か」


気になって調べてみようかとも思ったが、今の俺にできることは限られている。深追いはせず、俺はギルドを後にした。



◇◇◇



その日の夜、俺は宿の部屋で、これまでの検証結果をノートにまとめていた。


前世の癖で、こういう地道な記録作業は苦にならない。むしろ、数字や現象を整理していく過程が、どこか心地よくすらあった。


演算展開(アルゴリズム)検証記録】

・座標移動:現在の限界距離、約8m。連続使用時のクールタイムは約10秒

・物体構築:小型武器は瞬時に生成可能。建造物レベルは要時間、現状は簡易的な小屋程度が限界

・思考負荷:複雑な演算ほど消費が大きい。単純な処理ほど負荷は軽い

・魔力消費:演算の規模に比例。レベルアップとともに総量、消費効率ともに改善傾向


「ふむ」


記録を見返しながら、俺は顎に手を当てた。


レベルが上がるにつれて、演算展開の効率も明らかに向上している。今のペースで成長を続ければ、いずれはもっと大規模な演算も可能になるはずだ。


(問題は、時間だな)


ダグたちのパーティーは、既にAランク昇格試験に挑戦するほどの実力をつけている。今の俺との差は、まだ決して小さくない。


だが――と、俺は考える。


数字の世界には、"追いつく"だけでなく、"追い越す"ための理論もある。指数関数的な成長曲線というものを、俺は前世でよく知っていた。


「地道な積み重ねが、ある時点から爆発的な伸びに変わる。……それを信じるしかないな」


俺はノートを閉じた。



◇◇◇



数日後、俺は王都郊外の森で、ダグの姿を偶然目撃した。


一人で薬草採取の依頼をこなしているようだった。パーティーメンバーの姿は見当たらない。


「……何をしてるんだ、あいつ」


気配を殺しながら、俺は少し離れた場所からその様子を窺った。


ダグは、手元の紙切れと睨めっこしながら、薬草の群生地を探し回っていた。だが、その動きはどこかぎこちなく、明らかに要領を得ていない。


「くそっ、どこだよ……」


苛立たしげに呟きながら、ダグは何度も同じ場所を行ったり来たりしている。


俺はふと、彼が握りしめている紙切れに目を留めた。ボロボロに擦り切れ、何度も折り畳んだ跡のあるそれは――どこか見覚えのある形式だった。


(まさか)


遠目からでは、はっきりとは見えない。だが、あの紙の形式――俺が以前、パーティーのために作成した安全ルート表と、酷似しているように見えた。


「……使ってるのか」


思わず、声が漏れた。


パーティーを追放される直前まで、俺が地道に作り続けていたあの地図やルート表。てっきり、追放と同時に捨てられているものと思っていた。


だが、ダグは今も、それを頼りに動いているらしい。


(単純に馬鹿にしていたわけじゃ、なかったのか)


そんな考えが、ふと頭をよぎった。だが、すぐに首を振る。


過去の関係性がどうであれ、あの日、あの瞬間に俺を「役立たず」と切り捨てた事実は変わらない。多少の情が湧いたところで、それを理由に何かを変えるつもりはなかった。


俺は静かにその場を後にした。



◇◇◇



その夜、俺は再び自分のステータスを確認した。


【ライ・アーデン】

種族:人間

ギルドランク:C

レベル:22

HP:88/88

MP:65/65

筋力:15

敏捷:18

知力:42

──スキル──

演算展開(アルゴリズム):Lv.6


一ヶ月足らずで、これだけの成長を遂げていた。


「悪くない、な」


だが、まだ足りない。ガイウスたちのパーティーに追いつき、追い越すには、もっと圧倒的な力が必要だ。


「……もう少し、追い込むか」


俺は静かに拳を握りしめ、翌日からの鍛錬計画を練り始めた。



(第10話へ続く)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ