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元数学者、異世界を数字で書き換える  作者: godrenkon
第一章 復讐編

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元数学者、異世界を数学で書き換える 第25話

元数学者、異世界を数字で書き換える


第25話「魔法陣の理」



ボルドとの決戦は、彼自身の希望で、王都郊外の演習場跡地に決まった。


「かつて、俺が学院で研究していた場所の近くだ」


ボルドはそう言うと、静かに杖を構えた。


「因縁の場所、というやつか」


「そんなところだな」


俺たちは、数メートルの距離を置いて対峙した。


「本気で来い、ライ」


ボルドの声には、確かな覚悟が宿っていた。


「お前の力が、俺の理論を証明できるものなのか――最後に、確かめさせてもらう」


「ああ、望むところだ」


俺は静かに、演算展開へと意識を集中させた。


「――行くぞ」


ボルドが、詠唱を開始した。複雑な魔法陣が、彼の周囲に展開されていく。


「炎槍・連続展開」


無数の炎の槍が、俺目掛けて放たれた。


「演算展開・座標設定」


俺は座標をずらし、初撃をかわす。だが、ボルドの魔法は、単純な直線軌道ではなかった。


「甘いぞ。俺の魔法は、軌道すら計算されている」


炎の槍が、まるで生き物のように軌道を変え、俺を追尾してきた。


「――なっ」


咄嗟に、俺は演算展開・境界設定を発動させた。ボルドの理論を応用した、強固な結界が、炎の槍を防ぎきる。


「ほう、俺の理論を、もう実戦で使いこなしているのか」


ボルドが、感心したように呟いた。


「お前が渡してくれたものだ。無駄にはしない」


俺は静かにそう言うと、反撃の機会を窺った。


「演算展開・演算加速」


意識を集中させ、思考の速度を上げる。ボルドの魔法陣の構造が、これまで以上に鮮明に見えてきた。


(なるほど、この数式――弱点は、ここか)


魔法陣の展開速度、威力、そして――発動から着弾までのタイムラグ。すべてを数値として捉え、俺は次の一手を組み立てた。


「演算展開・物体構築」


手のひらに、鋭い短剣を三本、同時に生成する。複数演算の同時処理――これまでの検証の成果だった。


「三本、同時にだと……!?」


ボルドが、驚愕の表情を浮かべた。


俺は、短剣を投擲すると同時に、座標設定でボルドとの距離を一気に詰めた。


「くっ……!」


ボルドは、咄嗟に防御魔法を展開したが、複数方向からの攻撃に対応しきれない。短剣の一本が、彼の肩を掠めた。


「……見事だ」


ボルドは、苦しげな表情を浮かべながらも、どこか満足そうに笑った。


「俺の理論が、確かに正しかったという証明を、お前が見せてくれた」


「まだ、終わっていない」


「いや」


ボルドは、静かに杖を下ろした。


「もう、十分だ」


予想外の行動に、俺は一瞬、動きを止めた。


「……降参、ということか」


「そうだな。俺の中では、もう答えが出た」


ボルドは、静かに眼鏡を外すと、まっすぐに俺を見据えた。


「ライ、最後に一つ、頼みがある」


「なんだ」


「俺の研究成果を、正しく使ってくれ。魔法陣の数式化理論は、まだ発展途上だ。お前の演算展開と組み合わされば、きっと、もっと先まで進めるはずだ」


「……」


「学院を追われた俺には、もう証明する術がない。だが、お前になら――託せる気がする」


その言葉に、俺は静かに目を閉じた。


「わかった」


短く、そう応じる。


「感謝する」


ボルドは、静かに微笑んだ。


「――来い」


その言葉を最後に、俺は静かに剣を構えた。



◇◇◇



演習場跡地に、静寂が戻った。


俺は、ボルドの亡骸のそばに膝をつき、彼が最後まで手放さなかった研究ノートを、静かに拾い上げた。


「……三人目、か」


俺は静かに立ち上がった。


ダグの誠実さ、セリアの脆さ、そしてボルドの――学者としての、最後の矜持。


三人の死に様は、それぞれ違う形で、俺の中に何かを残していった。


「残るは、ガイウス一人だ」


静かにそう呟くと、俺は懐から灰色商会の情報――セリアが遺したもの――を取り出した。


旧鉱山都市デルヴィン。


ガイウスとの決着は、単なる復讐の終わりではない。灰色商会という、もっと大きな存在との対峙の始まりでもあった。


「……ゼロ、行くぞ」


足元にいたゼロが、静かに顔を上げた。


俺たちは、静かにその場を後にした。



(第26話へ続く)


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