第三章「まどろみは解けて、また交わって」2話
「鬼灯先輩、ここは⋯⋯?」
「見たら分かる通り⋯⋯通路」
「いえ、ここがどこかって話ですよ」
「⋯⋯⋯知りたい?」
つくづく掴みどころのない人だ。
というより、面倒なだけなのだろう、この会話自体が。
「柊凪は、ポータルって知ってる?」
「⋯⋯ポータル、ですか?」
門を意味する、魔法的な転移術。
遥か昔には小説の中の話だったらしいが、今では“ノヴァ”によって不可能ではないと理論的に言われていた。
「そう、ポータル。それ」
「⋯⋯」
「⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯それで?」
「⋯⋯え?」
「え?」
どうやら、それが答えだったらしい。
その言葉が本当に正しいなら、この通路は、異空間、ということでいいのだろうか?
「いやいやいや、ポータルなんて、まだ実装されてないですよ!?」
「⋯⋯⋯私にも、原理は分からない」
「⋯⋯なら、どこでこのポータルを?」
素人が作れるような、そんな仕組みのものではないのは確かだ。そして、今の技術でも、再現することは不可能だろう。例え、〈SDK〉が総力を上げたとしても。
「⋯⋯覚えてない。家にあった、それだけ」
「家にあったって⋯⋯実家は確か、道場では?」
「在ったのは事実」
そう言って取り出したのは、ルービックキューブサイズの黒い塊。
“ノヴァ”が込められているのは分かるが、俺にはそれまでしか分からない。
皐月でもいれば、もっと深く分かるのだが。
「それで、どこに繋がっているんですか?」
「⋯⋯⋯⋯⋯さあ?」
「今、絶対すっとぼけましたよね!?」
「⋯⋯⋯そんなこと、ない⋯⋯はず」
絶対に誤魔化している。
北嶺音の“ノヴァ”の流れは、全ての都市と似たものがある。ポータルの理論上の性質を考えれば、“ノヴァ”に共通を繋がりさえあるなら、違う都市へも一飛びだろう。
「まあ、行き先がどこであろうと、俺は構いませんが⋯⋯どうして、俺も一緒に?」
「⋯⋯それは偶然。私が、向かおうとしたら⋯⋯柊凪が、ポータルの中に、入ってきた」
どうやら、俺がポータルに乱入していたらしい。
⋯⋯⋯というか、俺はさっきまで何をしていたんだろう?
謎の男にやられて、その後、少女に――
「⋯⋯大丈夫?」
「あ、ああ。すみません」
大して時間は経っていなかったのだが、どうやら俺の顔色が悪かったらしい。
だって、あの時の俺は――。
「何か、予定があった?」
「え?え、あ、ああ。無いと言えば、嘘になるが――」
あれ、何か大事なものを忘れている気がした。
そうだ、任務だ。
「⋯⋯いえ、やっぱり、用事があります」
「妹?なら、当分は安全。むしろ、貴方の力を欲しているのは、妹より私」
「先輩が?」




