第二章「衝動は、その身を焦がす」34話
「り、理事長先生、助かりました」
「君は、大企業の令嬢だからね。助けなければ、私の名も地に落ちるというものだ」
軍基地のヘリポートに降り立った私は、日高雫へと振り返った。
「ここなら安心して良い。私も良く訪れているからな」
暇な時には、“ノヴァ”災害への対策を講じるために、足を運ぶことが多い。
「ほ、他の方々は――」
「軍の人間が回収に行っている。生き残った市民は、回収されるはずだ」
とはいえ、大群に遭遇すれば、ただじゃ済まないだろう。
柊凪。
彼の戦闘能力も目を見張るものながら、そのバックに居るであろう組織の力も見過ごせない。
彼の目的は、私の前にいる生徒だ。恐らく、護衛を主としている。
彼ならば、大群を引き寄せるには絶好の的になるだろう。そして、切り抜けれるはずだ。
それに、先程の衝撃。
大規模な攻撃があったのは間違いないが、地上からそれを確認するのは難しい。
被害はないと思いたいが、どうなるかは分かったものじゃない。
「勿論、柊凪も生きている。安心してくれ」
「⋯⋯ええっと?」
「ん?」
元気づけるつもりで発した言葉だったが、彼女は首を傾げてしまう。
「そ、その⋯⋯」
「⋯⋯はっきりしたまえ」
「は、はい」
どこか言葉に詰まっている彼女に圧をかけ、その先の言葉を急がせる。
「ひ、柊凪様」
「⋯⋯」
「って、どなたですか?」
「―――は?」
だが、そこに待っていたのは、想定外の言葉だった。
声が裏返りながらそれを発した彼女は、俯きながら私の言葉を待っている。
「え、いや、ほら」
予想していなかった展開だが、どうにか状況を掻い摘んで説明する。
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「理解できたかね?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「おーい」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「おーい!」
「ッ!?」
完全に、思考が止まっていたようだ。
だが、その抜け落ちていた表情に、次第に色が戻ってくる。
それが、驚愕だったのか、歓喜だったのか、私には理解することが出来なかった。
「柊、凪様」
「ああ、君を助けた生徒の名前だ」
「ッ!その御方は、今どこに!?」
「お、落ち着きなさい!?」
突如として発狂しだした彼女が落ち着くのは、もう少し後の話だった。
「で、俺に勝つ、だったか?」
「⋯⋯⋯⋯」
「おいおい、だんまりか?」
負けた。
それも、完膚なきまでに。
「おーい」
全てが、敵わなかった。
全てが、叶わなかった。
だから、全てを欲する。
「お、おい⋯⋯」
力が、欲しい。
誰にでも勝つ強さが。
欲しい。
欲しイ――――欲シイ。
「グルァァァアアア!」




