第二章「衝動は、その身を焦がす」31話
「――残念」
身体を貫かれながら、彼女は耳元で囁く。
だが、その言葉に迷いはなかったように感じられた。
そこにあったのは、勝利を確信した笑みだけで。
気付いた時には、既に遅かった。
背中に、激痛が走る。
「アァ!なんテ!なんテェ!」
余力を振り絞った相手の胸を再び突き刺し、心臓を捻り、抉り取る。
そのまま相手を蹴り飛ばし、重心を保とうと踏ん張るが、耐えきれずに膝をついた。
「いってぇな⋯⋯」
貫通した剣先から、血が流れ続けている。
背中から腹へと貫いた大剣。
力の入らない膝に“ノヴァ”を込め、立ち上がりながら大剣は抜き落とす。
「―――――美味しそう」
落とされた剣が彼女の背後へと向かい、合わせて4本のそれが、鋒を向けて浮かんでいる。
「ったく、化物が」
こちらは満身創痍なのだが、こいつは違う。
胸部を穿った穴は、みるみるうちに塞がれていき、傷1つない白磁の肌が覗く。
そして、その肌が見えたのも一瞬のことで、服が再生して、何事もなかったように立つ彼女の姿がある。
「いただきマァァス!」
死を覚悟するのは、一度や二度ではない。
勝てない、死ぬかもしれないと思ったことは、それこそ百回を超えている。
だが、まだ死んでない。
ここで、死ぬわけには行かない。
俺と同じく戦い続けてるアイツのためにも、あの日以来姿が見えない、あのバカ野郎のためにも。
「⋯⋯ふざけんなっ!」
この傷は、塞がなければ死ぬ致命傷だ。それに対して、相手にいくら致命傷を与えても、奴は死ぬ素振りがない。
恐らく、こいつが狼人達の親玉。凄まじい再生力も、その力によるものだろう。
なら、一撃で仕留める。
再生される暇もなく、殺す。
心臓をねじ切っても生きてるやつをどうするのかは謎だが、少なくとも、相手の粒子砲を放たせるわけにはいかない。
飛びかかってくる相手の正面に、“ノヴァ”の奔流を編み出す。
その光はまるで、相手の行く先を示すようで。
「ッ!?」
「甘いッ!」
その流れ通りに力を乗せれば、流れに逆らうことが出来ず、俺の真横へと流されてしまう。
「これで、終わりだッ!」
今度は相手の左腕を根本から切り落とし、相手のがら空きの背中から、心臓を貫く。
周囲の剣が俺に殺到するが、そんなものには見向きもせず、相手を川の中へと蹴り落とした。
そして、自らの能力を解放し、剣を相殺する。
「はぁ、はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯これで、終わりか?」
“ノヴァ”を体中に巡らせて、少しでも長く生き足掻こうとするが、その“ノヴァ”が尽きかけていた。
恐らく、この都市全体を包む、真っ赤な“ノヴァ”の影響だろう。
先程、放たれたと思えば一瞬だけだったのに対し、俺が戦いだしてからずっと、光は漂っている。
「“ノヴァ”封じ、って言ったところか」
誰の仕業か知らないが、手練れなのは間違いない。
そして、馬鹿なのも。
「ったく、どうすんだよ⋯⋯」




