↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Justice Origin  作者: 黒雨星狩
第二章「衝動は、その身を焦がす」
PR
49/62

第二章「衝動は、その身を焦がす」30話

気がつくと、俺は見知らぬ白い空間にいた。

先程まで川底に沈んでいたのに、である。

「目が覚めましたか?」

周囲に人影はないが、声が聞こえてきた。

透き通る、淡い残響。

鈴を転がしたような声音に何処か既視感のようなものを持ちつつ、俺は立ち上がった。

「ここはどこだ?お前は――」

「お前って呼ばないで下さい。これでも、神と同じような身分なんですよ?」

「いや、姿見えないやつに言われてもな⋯⋯というか、神とか信じてないし」

ムキになって反論してきた神を僭称する女だったが、俺の言葉で気付いたらしい。

慌てたように淡い光が集合し、人の形へと化した。

「初めまして、柊凪さん」

セミロングの銀髪、その頭上にヴェールを被った、可憐な少女。

その顔立ちはまだ幼いが、どこか威厳すらも感じられ、表情によっては凛々しい女性に見えることもあるだろう。

鏡のような瞳に光が瞬き、周囲の光がより一層強くなったところで、彼女は名乗り始めた。

「私は、ルナと言います。こんな外見ですけど、もう何千年も生きてるんですよ?」

要するに、年下扱いするなということなのだろう。

どこか子犬のような雰囲気を纏う少女だったが、その言葉には不思議と説得力があった。

「ここは、現世と隔離された、謂わば、精神の世界です」

「精神世界?なら、俺は――」

「別に、凪さんが死んだわけではありません。現実で私が救命措置を施しておりますので、その途中で目覚めないように、と」

「⋯⋯えっと?」

救命措置、ということは、命が危ないのは間違いないだろう。

だが、俺はどうやって水中を脱することが出来た?あの河の水深は意外と深い。その川底に沈んでいた俺を見つけることは、普通であれば不可能だ。

「ただいま、ご自宅をお借りしておりますが、よろしかったでしょうか?」

「別にいいが――いや、待て。何で俺の家を知ってる?」

「どうでもいいじゃないですか。神なんですから」

どうでも良くないが、そろそろ頭が痛くなってきた。話を戻そう。

「で、俺はいつ帰れるんだ?」

「私の気が向けば、とでも言っておきましょうか。身体の損傷こそ少ないですが、“ノヴァ”の拒絶が激しいんですよ?」

「拒絶?」

「どうでもいいじゃないですか、助かるんですから」

それこそ良くないだろう。また同じことになるかもしれないのだ、命の危機を看過することは流石に出来ない。

「教え――」

「そういえば」

いきなり真剣な顔をした少女に言葉が遮られ、何事かと彼女の顔を注視する。

「凪さんの恋人って、今どうしてるんですか?」

「⋯⋯⋯」

「え、あれ?どうしてそんな顔するんですか?ちょっとした疑問で⋯⋯あ、何故知ってるのかは、私が神様――」

「⋯⋯⋯は?」

突然の発言に、俺の思考は完全に止まった。

この際、神だとかそんなことはどうでもいい。

問題は、こいつが何でこんなことを言ってるのか、だ。

「え、ちょ、怒らないで下さいよ!?私だって、人の心配ぐらい――」

「いや、待て。別に怒ってない。というか、何で、俺に恋人がいると?」

「ですから、それは――」

「存在しない存在を、どうやって知るんだ?」

「⋯⋯⋯え?」

俺の質問の意味が分からないのか、目を瞬かせる少女。

その目には完全なる疑問が宿っており、本当に俺に恋人がいると信じて疑っていなかった様子だった。

数瞬静止していた彼女だったが、何かを察したのか、口元を手で覆った。

そして、何を思ったのか分からないが、急に泣き出した。

「ちょ、泣くなよ!?俺に恋人がいないことが、そんなにショック――」

「やっちゃった!?私!また!やらかしちゃいました!?」

「ちょ、耳元で騒ぐな」

とうとう泣き崩れてしまった彼女に慌てて駆け寄り、その背中を撫でる。

華奢で、小さな、それいて、膨大な力を秘める、少女のそれは、とても何千年も生きてきた威厳は感じられないが、今の泣きじゃくる彼女からは、何故かそれが感じられてきた。

それは、色々な経験を積んできた証で――。

「ルナ、大丈夫かい?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。