第二章「衝動は、その身を焦がす」27話
彼女たちを探すために、俺は奔走していた。
「ったく、無事でいてくれよ」
もう既に、周囲の敵の姿はない。
死体は転がっているが、それらに命が宿ることはない。
「派手にやりすぎだろ、隊長達」
この場に派遣された〈SDK〉の人間は、6人。その全員が、俺の知り合いであり、仲間だ。
彼らに借りを作るのは何とも不安になるが、1人で動いても埒が明かない。この街の暴動を鎮めるのは、少しでも早いほうが良いのだから。
とはいえ、いつも見てきたはずの風景が、血に染まり、砂塵が吹き荒れ、退廃的になっていく様は見るに耐えなかった。
「⋯⋯“ノヴァ”の気配?」
彼らではない。
もっと冷え切っていて、凶悪な、禍々しい“ノヴァ”を纏う者が、ゆっくりと橋の方へと向かっていっている。
あの橋が破られれば、都市部へと進出されてしまう。そうなれば、今度こそこの街は滅ぼされるだろう。
別に、街を守りたいとかではない。
街を守れなければ、日高雫は殺されてしまうだろう。
そうなれば、俺達に未来はない。
「⋯⋯なら、この気配は何だ?」
俺は完全ではない、不完全な異能者だ。
“ノヴァ”による索敵は、訓練してる異能者より劣っているのは間違いない。
だとしても、この“ノヴァ”が内蔵された“何か”が、とても危険なものであることは感覚で理解できた。
この気配を、他の隊員が感知できないとは思えない。だが、このまま看過はできないだろう。
「⋯⋯様子だけ見るか」
幸いにも、この場所から橋まで対して離れてない。俺が辿り着く頃には、他のメンバーも集まっていることだろう。
「⋯⋯誰もいねえし」
周囲から彼らの気配が感じられない。
俺の力では遠くまで索敵することは出来ないが、恐らく他の防衛で手が一杯に違いない。
「俺1人でやれるか⋯⋯?」
“ノヴァ”を放つ正体は、少女と彼女が引きずる無機質な物体。
そこまで強力な気はしないが、あの物体が何であるか分からないである以上、迂闊に手は出せないだろう。
「⋯⋯やるしかねえか」
あまり気乗りはしないが、殺されに行くわけではない。
あくまで、必要とあれば排除するだけ。俺が殺されるとは思っていない。第一、武装していない人間に負けるつもりはなかった。
「⋯⋯何の用?」
「いや、別に用ってほどでもないんだけどな」
後ろから歩み寄り、振り向いた女の真正面で止まる。
正面から見れば、その物体が何かの兵器であることは、容易に分かった。だからといって、相手を刺激する真似は危ないだろう。
「その武器を置いてもらっていいか?出来れば、川の中にでも投げ捨てて――」
「それは無理な相談」
「⋯⋯どうしてもか?」
「どうしても」
目が、紅く輝く。
身に危険を感じ、咄嗟に後ろに飛ぶと、俺が先程いた場所に、一本の大剣が突き刺さっていた。
それと同時に大量に放出される“ノヴァ”に目を細めると同時に、状況を伺う。
奴の手元の武装と、地面に突き刺さる大剣と、それと同じ姿形をした宙に浮く3本の大剣。
俺の背後には建物の壁。左右には大通りが広がっており、奴の肩越しには都市部へ続く橋がある。
その橋の向こう側には、軍だろうか?バリケードを設置して、迎撃地点で待ち構えている。
向こうに行かせてはならない。
なら、こちらに誘導するべきか。
問題は、相手の武装だ。
空中に漂う剣は防げるとしても、アレの能力が分からない以上、迂闊な行動はできないだろう。
「なら、無理やりにでも」
「――バースト」




