第二章「衝動は、その身を焦がす」4話
背中に衝撃が走る。
その衝撃は、すぐさま痛みへと変換される。
コンクリートが焼けるように熱い。
まだ夏前だというのに、ここまで地熱を持っているのは珍しかった。
「いってー」
外傷はないだろうが、単純に落とされた衝撃が痛い。
「⋯⋯ったく、誰だよ、カバンぶん投げたの」
体勢を起こしながら、俺を落とした凶器を睨む。
「俺だ、俺」
「⋯⋯⋯」
まさか、すぐに犯人が見つかると思わず、無言のまま相手を待った。
「おいおい、だんまりか?俺が話しかけてやってんのによぉ?」
「なら、まず謝れよ⋯⋯」
「あ?何か言ったか?」
「謝れって言った」
その言葉の直後、殺気を感じる。
それが鋭く澄み渡った瞬間、俺は自ら地面を転がった。
「ほぉ?避けるか」
「死にたくないんでね」
「よく言うな?2階から落ちて無傷のくせによぉ」
「⋯⋯受け身は得意なんだ」
「受け身だぁ?」
正直、こいつが何を言っているのかすら分からない。
俺が異能者だと目星をつけているの可能性も高いが、そんなことはどうでもいい。
問題は、こいつが俺を攻撃した理由だ。
「⋯⋯⋯何が目的だ?」
「目的だと?そんなもん、決まってんだろ」
「⋯⋯⋯⋯⋯?」
分かって当然だという顔で語ってくるので、少し考えてみる。
そして、気まずい沈黙が流れた。
「お、おい?何か言ったらどうだ?」
「いや、少し考えていてな」
「はぁ?」
まず、こいつの素性が分からない。
次に、俺が落とされた理由が分からない。
最後に、こいつが俺に絡んでくる理由が分からない。
「お前、異能者だろ!」
「お前なぁ⋯⋯それ言っても、自爆するだけだろうが」
「な!?な、なんで、お前がっ!?」
「いや、カバンに“ノヴァ”込めてる時点でバレてるだろ」
「っ!確かに⋯⋯」
こいつ、あれだ。
バカだ。
「で、何のようだ?まさか、それを言うためだけに、俺を殺しかけたわけじゃあるまい?梶木の足止めも、そのためではないんだろ?」
「⋯⋯⋯なら、話が早い」
突如繰り出された拳を、ギリギリで躱す。
先程の一撃より速く、とても重い一撃。
空を切りこそするが、込められた“ノヴァ”は避けられなかったらしい。
数メートル吹き飛ばされ、地面を転がる。
「その程度のステップだけじゃ、俺の攻撃は避けられないぞ?」
先程と、空気が格段に違う。
いや、最初と同じか。
「⋯⋯何が目的だ?」
「あ?そんなこと決まってんだろ、お前だよ」
「⋯⋯⋯俺?」
「っていうより、お前の妹だな」
「っ!?はぁ!」
「おっと、危ねえ」
信じられない言葉が聞こえ、反射的に本気で殴りかかる。
格闘術は、あまり好きではない。
威力と速度、タイミングを図らないといけないからだ。
とはいえ、人っ子一人制圧するなら、造作もない。
「どうした!俺が、なんで知ってるのか、気になってしょうがないって顔だな!」
「⋯⋯うるさい」
こいつは、さっきまで話してた奴じゃない。
恐らく、この学園に潜む異能者の中でも、卓越した戦闘力の持ち主。
その条件に当てはまるのは――




