第二章「衝動は、その身を焦がす」3話
どこまでも澄み渡る青い空。
手を伸ばしても届きそうにないほど、遥かな空。
いつか、たどり着きたい、空。
何があっても、どんな時でも、手を伸ばし続けていたい。
「なぎー」
「⋯⋯何だ?」
「ひーまー」
「⋯⋯⋯」
再び瞼を閉じ、鳥の囀りへと耳を傾ける。
この鳥たちはやがて、あの大空に翼を広げて、飛び立っていくだろう。
そして、いつの日か――
「なぎー!」
「⋯⋯⋯次はどうした?」
「ひまー!」
「⋯⋯⋯⋯はぁ」
このままでは埒が明かなそうなので、梶木の方へと顔を上げる。
「そういえばさ、今朝のニュース見たか?」
「ニュース?」
朝は毎日ドタバタしていることが多かったので、テレビを見るという習慣がすっかりなくなっていた。
「ラーミリア共和国でさー」
「ああ」
「大量殺人があったんだとよ」
「へぇー」
「しかも、なんとその犯人が不明なんだってー」
「へー」
「死体もなかったんだってー」
「ほへー」
「⋯⋯聞いてんのか?」
「聞いてる聞いてる」
隣国でそんな事があったのは初耳だが、それよりも興味深い情報があった。
「死体がないのに、殺人なのか?」
「らしいな」
どうも、詳細は梶木も知らないらしい。
隣国の機密情報に繋がることなのか、その分情報規制も厳しいのだろう。
「何でも、政府の秘密部隊の小隊が潰されたとか何とか」
「へぇー」
噂程度はあるのだろうが、火のない所に煙は立たぬ、何か根拠があるのだろう。
とはいえ、隣国の内政なんぞに興味はない。
一時は国境沿いが緊迫状態、両者戦争に踏み切るかもしれないと言われていたが、今では外交が結ばれ、すっかり落ち着いている。
そのため、俺達がそちらに足を運ぶことはないだろう。
「そういえばさ」
「ん?」
「妹ちゃん、めっちゃ頭よくね?」
「⋯⋯そうか?」
よく言われるが、基準がよく分からない。
頭の回転は早いのだろうが、天性の物かと言われると、疑問は残る。
とはいえ、頭が良いことには変わりないのだろう。
「あと、めっちゃ可愛くね?」
「⋯⋯⋯⋯はぁ?」
「あの、お淑やかなところとか、従順なところとか」
「⋯⋯⋯⋯」
「少しクールなところも良いよなー」
「⋯⋯⋯⋯」
悲報、俺の知り合いが、壊れてしまった件。
恐らく――いや、やめておこう。
「あと――って、凪、どうした?そんな顔して」
「いや、ちょっと言っていることが分からなくてな」
確かに、美夢のことは、美人だとは思う。
整った顔立ちはしているし、淡い黒髪が色白の肌によく映える。
スタイルもいいし、性格も十分と言っていいだろう。
だから、モテるのは必然なのだ。
これは、天性の才能と、日々の努力によって成り立っているものだ。
「いや、美夢ちゃんだっけ?めちゃくちゃ可愛いぞ。あれで、お前の妹だって言うんだから、未だに信じられん」
「悪かったな、俺が兄で」
「⋯⋯⋯(いや、でも、結構釣り合ってはいるのか?)」
「何だ?」
「あ、いや、そのー」
「性格は真反対だって言いたいのか?」
「⋯⋯結構似てね?」
「そうか?」
確かに、口数が少ないところは――
「は?」
突如とした衝撃に、身体が耐えきれず宙を舞う。
そして、そのまま窓の外へと投げ出された。




