第一章「少年は、涙の下で。少女は、志の下で。」16話
突如として放たれた一閃を、こちらも銅丸を抜き放ち、何とか受け止める。
だが、その大太刀の威力に耐えきれず、体勢が崩れてしまう。
しかし、今の間合いは、短刀の間合い。大太刀には、近すぎる。
だから、敢えて間合いを一気に離した。
「〈悠幻〉、背後を取れ」
既に武装を展開している〈悠幻〉に指示を飛ばし、自身は正面の人物を睨みつけた。
そして、どこかで見知った顔だということに、眉をしかめる。
「⋯⋯よく受け止めた。でも、戦う気がない?」
「当たり前だ。必要な殺し以外、人に手をかけないって決めてるんでね」
「⋯⋯私を、殺せるとでも?」
「多分な―――」
彼女の視線から嫌な予感がして、思わず体を沈め、銅丸を構える。
それにより、大太刀による一閃を短刀の平で流すことに成功するが、続けざまに放たれた膝蹴りを避けきれず、後ろへと転がる。転がり続ける。
十分に距離を取ったところで起き上がり、体勢を立て直した。
「⋯⋯前言撤回してやる。だが、お前には、俺を殺すことは不可能だ」
その言葉と同時に、俺に意識を取られていた少女の背後から、〈悠幻〉が斬りかかる。
武装の名は、SP19。正式名称はScorpion一式改ver.9。一式なのに、9番目とかいう、意味分からないやつだ。
サソリの名の通り、双剣の形を取っていて、どちらも二枚刃によって構成されている。
斬るというより、叩くという威力のほうが大きいが、斬られれば裂傷はするし、貫くことも可能だ。
そして、この武装最大の特徴は、それぞれの柄に、銃口が隠されていることだ。
装弾数は、どちらも12発。柄を外すことでリロードは可能なようだが、戦闘中にリロードすることは難しいだろう。
引き金はなく、柄に仕込まれた装置を起動させることで発泡が可能となる。
「甘い」
だが、この武器はあくまで奇襲用であり、存在がバレている場合では、あまり殺傷能力は高くない。
それに、相手は異能者だ。
通常兵器では、大した損害は与えられないだろう。
「ですが、もう1発!」
双剣は、連撃に長ける。
対して、長剣は一撃に長けている。
リーチこそ違うが、双剣の間合いは、大太刀には近すぎるはずだ。
だが、肉弾戦が得意であれば、大太刀でもその不利を失くすことが出来る。
「くっ!?速い!ですが!」
激しい攻防の末、〈悠幻〉が間合いを外す。
そして、再び突入しようとしたところで、少女の、気配が変わった
「うるさい」
空気が重くなる。光が、薄くなる。
まるで、彼女自身が、全てを吸い込む淵滅穴になってしまったかのように、周囲の全てが、消え去った。
「うるさい」
一瞬、この場を、少女の“ノヴァ”が包みこんだ。
だがすぐに、まるで押し殺したかのように、一切の“ノヴァ”が、この場から消え去る。
「弱者は、吠えるな」
そして、殺意が満ちた。




