第一章「少年は、涙の下で。少女は、志の下で。」14話
「⋯⋯凪様」
「何だ?」
「先程の荷物なのですが⋯⋯」
「うん?」
先程来た、大きな段ボールの宅配便だろうか?
ちなみに、宅急便は某黒猫運送会社での名称なので、宅配便が一般的である。
「中に、これが入っていたのですが⋯⋯」
そう言って、美夢が見せてきたのは、紺のセーラー服だった。
「ああ、それのことか――」
「凪様、コスプレのご趣味があったのですね?」
「いやいや、なんでそうなる」
「ですが、この服を着る人間は、この家に――あ」
「察しが良いな」
「良くなくても分かります!だって⋯⋯」
昨日の今日だ。流石に、展開が早すぎるのだろう。
俺だって、今日荷物が届くとは思っていなかった。
「⋯⋯驚かせたな。サプライズに、とでも思っていたのだが」
「⋯⋯でしたら、何故荷物を私に?」
それはそう。
そこら辺は、最近彼女が至り尽くせリしてくれるので、頼り切ってしまっているところが原因だろう。
「とはいえ、本当に良かったのか?編入とはいえ、学業は――」
「こう見えて私、勉学の基礎は習っていますから。凪様も、この間まで、そうでしたよね?」
「⋯⋯⋯確かに」
ここ1ヶ月のおかげですっかり忘れていたが、俺も彼女と同じ境遇だった。
学校なんて、小学生の低学年までしか行っていない。それも、ほとんど登校できていなかった。
なので〈SDK〉では、義務教育の時期になれば、誰でも自立できるように、勉学は必修となる。
戦闘訓練と並行して行われるので、普通の学生よりハードな生活を送ることにはなる。
だが、その質は最高クラスだった。所謂、英才教育だ。
おかげで、高校範囲なら、勉強しなくとも理解することは出来るし、専門的な話も、その部隊に所属していれば、否が応でも知ることが出来る。
ただし、命と引き換えに、だ。
「それより、今日の任務、本当についてくるのか?」
「それが、私の仕事ですから」
相変わらず、迷いが無いようで。
「戦闘は極力避けるが、自衛手段だけは持っていてくれ」
「⋯⋯つまり、今回は調査が主体だと?」
「当たり前だ。探っていることを、獣に勘付かれたくない」
特に、狼と狐は、とても鼻が利く。奴らには、気付かれたくない。
「凪様は確か、対人戦闘がお得意でしたよね?でしたら、奇襲すれば、勝率は――」
「確かに、それも一理ある。だが、それは今回の調査が、結末にたどり着くための鍵だとしたら、の話だ」
「⋯⋯今回は、そうではない、と?」
どこか、残念そうに美夢が俯く。
こういうところを見ると、案外、戦闘狂なのかもしれない。
「情報を探すって言っても、何を探すか決まってないんだ」
「⋯⋯え?」
清々しいほどの笑顔とともに、言ってみた。
そうしたら、案の定、彼女の目が点になり、俺への信頼度が下がる。
予想通りだ、うん。
「探れば、何か出てくるかもしれない。その、何かが欲しいんだ。砂漠から、ある1粒の砂を探すための、鍵と成り得るピースが」
「鍵、ですか⋯⋯」
後手に回っているだけだったら、何も出来ない。どこかで、攻勢に出る必要がある。
それは、出来る限り早い方が良い。
被害が出る、その前に。
何かを、守るために。
「1つ約束してくれ」
「⋯⋯?何でしょうか?」
「絶対に、俺の前方にいてくれ。何があっても、な?」




