表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Justice Origin  作者: 黒雨星狩
第一章「少年は、涙の下で。少女は、志の下で。」
PR
13/31

第一章「少年は、涙の下で。少女は、志の下で。」12話

「おっ、凪!⋯⋯随分遅かったな?」

「⋯⋯すまない」

彼らのもとに到着した時既に、梶木は荷物持ちとして大いに活躍していた。

「謝罪はいい。行動で示せ。半分以上、お前の妹さんのなんだぞ」

「分かった分かった、そう怒るな」

別に、こうやって拗ねるのも無理はないだろう。

だが、こちらにも事情はある。

なんせ、血だらけの服で、彼らの前に姿を表すわけには行かないだろうから。一度帰宅して、着替えて戻ってきたのだ。急いだとはいえ、時間がかかってしまうのも無理はないはずだろう。

「あれ、柊さん。もう夏ですよ?コート、暑くないんですか?」

「⋯⋯別に、暑くない」

「⋯⋯凪、お前さっきまで、コート着てたか?」

「さっきもらった。邪魔だから着てるだけだ」

これも、俺の作戦だ。

着替えてしまったということは、当然、同じ服ではない。それでは、今のように怪しまれてしまうだろう。

もちろん、似たような服は何着があるが、それに気付かれる可能性も考慮すれば、こうやって隠したほうが、手っ取り早い。

それに、武装することも可能なのだ。完全に、利点しかない。

「で、どこまで買ったんだ?」

これ以上会話を長引かせると面倒なので、本題に戻す。

俺が離れてから、既に1時間近い。

当然、ほとんどのものは買っていると思っているが、一応聞いておく。

「美夢ちゃんの洋服と靴、それに化粧品とか、その他諸々⋯⋯あ、もちろん、下着も買いましたよ?」

「おかげで、俺が大変いたたまれない気持ちになったんだ。謝れ」

「いや、さっき、謝罪はいいって⋯⋯」

「謝れ」

「⋯⋯⋯⋯すまなかった」

「分かればよろしい」

2回も謝る羽目になった。何故だ。

「私たちも結構服買ったし、そろそろ帰ろーっ!って感じだったんですけど、柊さん、他に何か買うものありましたか?」

「あー、そうだな⋯⋯ついでに、夕食も買って帰れれば、とは思ってはいるが」

「ならなら、私たちもついて行って良いですか!?」

「⋯⋯⋯それは」

「こーら、夕菜」

「分かった、分かったってば、マサくん!あ、引っ張らないで!?」

「「⋯⋯⋯」」

空気を読んでくれたのだとは思うが、どうにも既視感が拭えない。

そんな退場を尻目に、美夢が耳元に顔を近づけてきた。

「(凪様、先程は――)」

「(問題ない。怪我1つないさ)」

「(ですが、凪様。靴が――)」

「靴?」

思わず、足元に目をやる。

黒を基調とした、質素なゴム製の運動靴。

それの至る所がすり減り、ところどころ足が露出しかけている。もちろん、靴下のおかげで、分からないが。

この様子では恐らく、靴裏は血が固まっているだろう。

よく足跡がつかないものだと、己の技量を褒めてやりたい。

「これは⋯⋯流石にまずいな」

この消耗は、分かっていたことだ。

あの場で、アレを相手に戦うとなると、アレを使わざるを得ない。

しかし、そこまで頭が回っていなかったのだろう。これでは、失格である。

「(ちゃんと行動用だったら、損傷はなかったんだぞ?これは、俺のミスだ)」

「(ですが、足を痛めている可能性もあります。今日のところは、お帰りいただいた方が――)」

「(いや、買い物は?)」

「(私がやりますので)」

「(⋯⋯護衛は?)」

「(それ、は⋯⋯)」

我ながら、ひどいことをしていると思う。

相手の善意を、建前を理由に押しのけるのだ。最低だ。

「とにかく、さっさと行くぞ。大丈夫だから」

「⋯⋯分かり、ました」

我ながら本当に最低だが、彼女の様子を見るには、これしかない。

「そういえば」

買い物をしながら、話を振る。

「⋯⋯何でしょうか?」

「学校、行かないのか?」

「っ!?⋯⋯いえ、私には――」

「どうせ、平日ずっと暇になるだろ?」

「⋯⋯任務もありますので」

「え、あるのか?」

「⋯⋯一応は」

なるほど。

先程の俺みたいに、突如として任務を振られることはあるらしい。

違う任務についている場合は、優先権を行使してくれても良いのだが。

「なら、なかったら行くのか?」

「―――え?」

「いや、仕事があるから、登校しないんだろ?だったら、仕事がなかったら、行くのか?」

「それ、は⋯⋯」

やはり、彼女は自分のこととなると、自重してしまいがちなのだろう。

他人の心配ばかりして、自分の心配は、何一つしていない。

そんな環境で育ってしまったのが原因だろうが、それは人として生きるのに、少し欠損している気がする。

「本音を聞きたい。お前は、どうしたい?」

学校。

俺自身も、中学まで行ってなかった。

だから、コミュニケーション能力が欠陥していることだって、理解している。

だが、それがこれから先、ずっと続いていけば、どうだ?

そんなことすれば、未来はない。

戦うことだけを義務付けられた、兵士と化してしまう。

それだけは、避けなければならない。

彼女には、未来がある。

真っ当に生きることが出来れば、今頃平和で幸せな日々を送っていたに違いない。

家族と喧嘩して、友人と談笑して、恋人と甘いひとときを過ごすことだって、出来たかもしれない。

でも、そんなことは許されなかった。

なら、せめて、元の暮らしを、真っ当な生き方を、教えてあげるべきではないだろうか?

もちろん、余計なお世話だってことは分かっている。自己満足なだけかもしれない。

それでも、彼女には、彼女の生き方がある。

それは、きっとこの世界ではない。

こんな世界が、正しいわけがない。

「私、は――」


全ては、虚無へと紡がれる。

そして、また初めから紡がれる。

その時が永遠でも、私は、いつまでも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ