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悪魔の隣りでお昼寝させて~幼い私があなたをお慕いしていることは誰にも内緒です~  作者: 吉沢月見


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31.バレエ3

 お披露目会でエイミーの舞を見た金持ちは満足したように彼女を指名した。妻ではなく愛妾らしい。それでも人生の保証がされればいいのだろう。


「これで納品完了」

 とライゾン様はご満悦。いつものように代理の人を作り上げたわけじゃない。相手が望む人に見せかけた。それでも商売になる。エイミーは努力した。もう会うことはないだろうが幸せに暮らしてほしい。


 それにしても私は疑問が消えない。


「そもそもどうしてあそこまでバレエを習得することが必要だったの?」


 過去にバレエをしていたことが条件なら今はできなくてもいいのではないだろうか。エイミーだって経験者なのだからお披露目会で一曲踊るまで覚えさせる理由がわからない。私がライゾン様に尋ねると、スティーブさんがそんなこと聞いてはいけないと咳払い。


 どうしてだめなのかしら。


 私はバレエのレッスンが終わってほっとしている。見てるだけでも足がつりそうだった。実際にやってみるとお腹がつった。毎日のストレッチが日課になってしまった。やらないと寝付けない。


 人に見られたくないから自室でしている。仰向けになって辞書を膝に挟み左右に倒す。ある程度のトレーニングも必要。


 エイミーの体はガリガリから細めになっていった。しなやかな筋肉がついて、別れるときはすごいきれいな体になっていた。彼女も背は高くなかった。それでもあんなしなやかな体になれるのね。あれを目指そう。


 私がきれいになりたいのは何のためだろう。ライゾン様のせいなのかしら。彼に選ばれたい、って結局、欲望。


 ライゾン様を見るたびに思うの。この人のどこが好きなんだろう。顔かしら。広い背中? 私を助けてくれたところ? いざというときに必ず救ってくれる点だろうか。全部のようでどこも違う。



 初夏になってもすっきりしない天気が続いている。それでなくても夏が短いのだ。


 日曜の昼はローストした肉にじゃがいもなどの付け合わせにヨークシャーブディング。今日はグレービーソース。家族で食べるものらしいが、いつもライゾン様と二人。エイミーがいなくなって人の皿を気にすることなく静かに食べられる。食の好みのみならず、相手の食べ方が気に入らないという人も少なくない。ライゾン様は割と大口で、そんなに大食いではない。お酒を飲みながら、

「最近はどうだ?」

 なんて養父みたいな口ぶりで私に聞いてくる。


「普通よ」


 お勉強に礼儀作法、時間があれば刺繍をしているふりをして窓の外を眺めてる日々。具合が悪ければ寝ていても誰からも文句を言われない。シャーロットさんが柑橘とハチミツで甘い飲み物を作ってくれるし薬も買ってもらえる。


 飢えない。ベッドもふかふか。服なんて毎朝シャーロットさんが選んでくれる。季節に合わせて。こんなに幸せでいいのだろうか。


 ライゾン様は私にもっと与えたいらしい。私が望むものはくれないくせに。


 学校には行ってないが勉強はしているし、仕事をしているせいで世の中を知るし、ちっとも退屈じゃない。ひとつ怖いことは、生活が充実しているせいで死ぬのが怖くなっている。この日々を失いたくない。

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