28.適当な女2
人と人との縁はいつも不思議だ。運がいいときもあれば逆も然り。この人はどっちだろう。
世の中には妻に暴力をふるう男の人もいるらしい。
「私も悪かったのです。夫が話しかけてくれても緊張してうまく返答できなくて」
その人は花屋で働いていたところを見初められ伯爵へ嫁いだがすぐに離縁されたらしい。鬱陶しいと殴られて、でも帰るところがなく仕事を探していたところをライゾン様に声をかけられた。
「それって妻っていうより奴隷をいじめるご主人様と一緒じゃない?」
私は言った。
「家の使用人たちも冷たくて、離縁されてよかった。元々、住む世界の違う人でしたから」
全く笑わない不思議な女性だった。シャーロットさんも笑わないけど、この人とは視線も合わない。
年の近いシャーロットさんとは話が合うようだった。私が子どものせいというよりも心に傷を負った者同士独特の、互いの領域には踏み込まずに癒し合う。
シャーロットさんは彼女に雲の名前を教えた。イワシ雲、ヒツジ雲、レンズ雲。何気ない会話の蓄積が、きっと彼女のこれからに役立つ。
「一緒に旅行に行くといいですよ。相手のことがよくわかります。前もって予定を立てる人なのか、その予定が狂うとどうなるのか」
シャーロットさんが言った。
「へぇ」
と私が相槌を打ってしまう。
彼女はシャーロットさんの手伝いをしながら、依頼人の妻となるべく修行に励む。フランクの知り合いは様々な会社のお金の管理をしているらしい。お金が絡むと人格が変わる人もいる。
「結婚、嫌ではないですか?」
私は聞いてしまった。だって、依頼人は亡くなった奥さんの代わりを探している。
「わかりやすい婚姻で助かります。最初の結婚よりはきっといい」
その言葉にシャーロットさんは同意しなかった。
半月ほどその人はうちに滞在した。結婚に期待をするというよりも彼女にとって楽に生きられる道のひとつのようだ。
彼女を引き渡した後でそれなりの報酬があったそう。
「お気に召していただいたようでよかった」
とフランクも安堵していた。
「歳を取ることをマイナスと捉える人、特に女性は多いけど、今回はそれが彼女とライゾン様の役に立ってよかった」
シャーロットさんがお茶を注ぎながら言った。ライゾン様はひとつの仕事が終わると褒美にケーキを買って来てくれる。私はシャーロットさんが作るケーキのほうが好きよ。素朴で、愛がこもっている。
彼女の幸せを願おう。お金で妻を買う人の気持ちはわからないけど、それによって二人が幸せならいい。




