25.公爵家のパーティ1(ライゾン目線)
仕事の依頼は人づての紹介が主だ。信頼している相手からじゃないと受けない。奴隷商をしつつ、仕事の斡旋、身代わりを用立てその教育まで。一度、底辺を知っている人間は扱うのが楽だ。キリーナも然り。あいつは、俺の言いなりだ。
「娘さんですか?」
キリーナを連れてるとよくそう言われる。
「ええ」
と嘘をつくと一瞬キリーナの顔が曇る。
仕方ないじゃないか。俺は老け顔で君は幼く、世間では養女になっている。キリーナと暮らすためにはそうするのが最も手っ取り早かった。
「すっかり大人になったな、キリーナちゃん」
フランクがキリーナをエスコートする。今日は秘書のフランクとキリーナが変装し侯爵家のパーティへ出席。侯爵の息子と娘のきょうだいが共に家出中。行先も別らしく、金の無心しか連絡が来ないそうだ。体面を気にした侯爵からうちに代役の依頼があった。彼らになりすましパーティへ出席させる。背丈がフランクとキリーナにちょうどいい。衣装も借りられた。
「そうかしら」
ドレスを身にまとったキリーナはうちにいるよりも大人っぽい。既に我々は侯爵家の一室に滞在を許された。
「息子は娼館に入り浸っているそうね」
ミランがフランクの頬をこけさせる化粧を施す。噂が流れている以上、本人に似せる必要がある。知り合いがあまり出席しないことを祈るのみ。
「顔色悪いって」
フランクが自分の顔を鏡で見てぎょっとする。
「水タバコばかり吸っているそうだからそれでいい。キリーナ、侯爵令嬢は人見知りだ。そんなふうに笑わない」
能天気な二人に俺は言い放った。
「会場に行ったらちゃんとするわよ」
実際にキリーナがそうすることは読める。が、念には念を入れて侯爵家の間取りを頭に入れさせる。いざというときは自力で逃げてもらわねばならない。
キリーナは勘もいいし運もいい。本人はそう思っていないようだが。
「妹よ、どうだろうか」
「お兄様、髪色が違うようだから帽子は取らないでね」
二人はパーティが始まってからの入場になるので、それまでは部屋に軟禁。もしものために招待客の名前を覚えさせている。
立派な家の付き合いは大変だ。しかも侯爵の体調が思わしくなく侯爵夫人が取り仕切っている。故にフランクが扮している息子がしっかりしなければ。だが当人は娼館から出ようともしない。偽物の役割は少しでも世間にいい印象を与える必要がある。
「ダンス誘わないとだめか?」
フランクはリズム感がない。練習しろと言っておいたはずだ。
「私と踊る?」
キリーナだってそんなに上手ではない。
「令嬢を誘うなんて気後れする。そうだな、妹と踊っていい兄アピールをしよう」
フランクとキリーナはいつまでたっても子どものようだ。フランクは俺同様、いい家の子どもだったが、兄が四人もいては家を継げないし兄たちが次々と養子先が決まる中であぶれてしまった。自分の身の上や世の中に対しての鬱積をどうしていいかわからないようだったから仕事に引き入れた。今は秘書として様々なことに対応してくれている。残忍性を兼ね備えていて、拷問器具の収集が趣味。二十歳は超えているものの短気で思考も幼い。




