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二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!  作者: 南野 雪花
新1章

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第29話 意外すぎる行動


 サリエリが引いた間合いは、もう一方の突進によって埋められる。

 迎撃姿勢を取る暇なんかない。


 そのままばっさりとやられるサリエリを俺は幻視した。


 が、地面からのびた草の蔓がハスターの手足に巻き付く。

 スネアか!


 目を見張った。

 ここまでまったく魔法を使わなかったのは、彼女がミリアリアに匹敵するくらいの魔法の使い手だということを隠すため。


 じっさい俺も意識の外側だった。


「私は忘れていなかったよ。時間稼ぎにもならないね」


 ハスターは速度を落とすこともなかった。

 ぶちぶちとちぎれる草の蔓。


 スネアってしょせんは草だからね。強靱なものでもなんでもない。

 それなのにどうしていつも大きな戦果をあげるかといえば、思いがけず足首を掴まれたらどうなるかってだけの話なんだ。


 判っていれば、草が絡みついたくらい、痛くも痒くもない。


 え、というハスターの顔。

 に、と笑うサリエリ。


 ほんの一瞬、ハスターの動きが鈍った。


 千切れない蔓が一本だけあったのである。左手に絡まっていたもの。しかしそれも長時間のことではなく、改めてぐっと力を入れて引けば千切れる。


 その程度のもので、砂時計からこぼれる砂粒が数えられるほどの短時間に過ぎない。

 しかし、アスカが一撃を入れるには充分すぎる時間だった。


「がぁぁぁっ!」

「かわされた!?」


 叫びは二つ。

 宙に舞ったハスターの左腕がさらさらと砂に変わっていく。


 ギリギリのところで回避して大きく右に飛んだハスター。すぐに腕は再生するものの大きく肩で息をしていた。


「な、何をしたんだ? 勇者サリエリ」

「草なんだからちょっと力を入れれば千切れる。だから、千切れなかったら不思議に思った」


 いつもののへのへした口調ではない。

 三日月のカタチに開いた口は、まるで魔女のような邪悪さだ。


 つまり、サリエリは固定観念を逆手に取ったということか。


 蔓の中にひときわ丈夫なものがあったのだろう。あるいは鉄の糸とかが含まれていたのかもしれない。


 もちろんそんなものでハスターの動きは止められない。

 えいって力を込めたら千切れたわけだしね。


 だけど違和感を持たせることができた。

 なんだ? って、思考が流れたわけだ。


 それこそが()


 戦場で、戦い以外のことを一瞬だけ考えてしまったのである。


「きみの勝負勘は、頭がおかしいレベルだね。勇者サリエリ」

「褒めてもおっぱいは見せてあげないょぉ。ネルネル専用だからねぇ」


 のへっとした口調に戻り、とんでもないことを言う。

 ハスターの言った頭おかしいは、そういう意味のおかしいじゃないと思うよ。


「それは残念。お母さんがうらやましい限りだね」


 冗談に冗談で応じて、再びハスターが構える。


 しかし、先ほどまでの圧倒的な迫力がない。

 アスカの一撃は、おそらく致命傷に近いものがあったのだろう。


「たたみかけるよ! サリー!」

「あぅいー」


 同時に斬りかかるアスカとサリエリ。

 これは決まった、と思った。


 しかしその瞬間、俺はとんでもないものを目撃する。


 ハスターが大きく後ろへと跳んだのだ。

 むなしく宙を薙ぐ二人の剣。


 鋭さがなかったのは、ハスターの意外すぎる行動に虚を突かれたためだ。


 だって、普通は信じられない。

 悪魔だよ? 邪神なんて呼ばれるレベルの高位の悪魔が、計算も作戦もなく逃げを打つなんて、誰が予想できる?


 ひらりと宙を舞ったハスターが、飛んできたビヤーキーに着地する。


「今日のところは私の負けだ。体勢を立て直してまたくる。それまで元気でね、お母さん。Hasta luego」


 にこやかに手を振って飛び去っていく。

 三機まで撃ち減らされたビヤーキーとともに。


「なんだそれ……」


 全員が、ぽかんと立ち尽くしてしまった。




「逃げたんですよね? 悪魔が」


 呆然としたままミリアリアが口を開く。


「……どうやら、そうみたいだな」


 俺も呆然としているよ。自分で見たものを脳が理解していない感じだ。

 だって、悪魔が逃げたんだよ?


 あいつら人間に背を向けるなんて絶対にしない。舐めてるからってのももちろんあるけど存在意義ってやつにも関わってくるから。


 人間は世界にあってはならない。自分たちも世界にいてはならない。すべてを壊し無に帰そうって思想が悪魔のデフォルトだもの。

 快楽殺人狂みたいなおかしい奴もいるけど、そういうのは個体差の範囲だ。


 で、絶対に滅ぼさなくては人間を相手に、負けそうだから背中を向けて逃げるなんてやってはいけないんだ。

 それくらいなら最後まで戦って消滅する。


 そこがまあ、人間とは絶対に相容れない部分なんだけどね。


「ハスターは、もぐもく、ちょっと他の悪魔とは、むぐむぐ、違うみたいですわね」


 俺の外套に手を突っ込み、隠しから勝手に食料を出して食べながらメイシャが言った。


 奪うなとは言わないけどさ。

 メイシャに食わせるために、みんな隠しに携帯食料を入れてるわけだし。


「せめて、食べるか喋るかどっちかにしないか」

「…………」


 無言で咀嚼を始めるメイシャ。

 こいつ……言語コミュニケーションを放棄しやがった……。


「撤退してくれてありがたいスよ。こいつを実戦で使うなら、まだまだ改良しないとたせめスね」


 担いでいた石火矢をメグがぽいっと捨てる。


 足元には使用済みが何丁か。

 一発ごとに捨てないとダメなのか。

 そりゃちょっと使えないな。



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