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先生の話が終わる。どうやらみんな今は各自自由に絵の具で絵を書いているらしい。先生は俺に、「サムは途中からきたし、急ぐ必要はないわ、わからない事があったら同じテーブルの人に教えてもらってね」と言ってきた、が…
聞きにくいなぁ…絵の具とブラシの場所はわかったが、画用紙がどこにあるかわからない。フードの男子は伏せたままだし、隣の女の子は夢中になって猫の絵を描いている。しかもめちゃくちゃ上手い…
普通に先生に質問しようか、いや…と頭の中で葛藤していると、いきなり黒いフードの男子ががばっと顔を上げる。びっくりした…寝てたんじゃないのかよ。
顔を上げたかと思うと今度は俺の方をじっと見つめたきた。
な、なんだ…?俺の顔になんかついているのか?それとも朝俺が隣に来たことについて文句があるのだろうか…それなら文句を言いたいのは俺の方だよ…!
「お前……」
「う、うん…?」
そこで少し間が空く。何だ何だ?
「表情暗っいなぁっ〜‼︎」
……は?
いや、いやいやいやちょっと待って。いきなり人の顔見つめてきてそれか?顔に滲み出るほど、表情俺暗いの?今までずっとそんな顔してたの俺?
俺が無言でいると、彼は追い討ちをかけるように、「服装もネクラそのものだな!」と少々口角を上げながら言ってきた。
なっ、なんだこいつッ…!たしかに俺はおしゃれではないが、そこまでダサいわけでもない!
……たぶん
俺が顔を顰めていると、隣の女子が絵を描く手を動かしながら口を開く。
「サム…だったかしら?彼の言ってることは気にしなくても平気よ。彼は人を貶さないと生きていけない、とても惨めでかわいそうな人間なの。」
おぉ…結構辛辣だが、よく言った!少しスッキリしたよ。
「はっ?それを言うのなら、お前だって常に上から目線だろ、人の事言えんのか?」
「上から言ってるわけじゃない、事実を言ってるだけよ、ディラン。それにあなたはいつも喧嘩っ早いところがあるからいけないの」
「お前はいつもそうやって正論ぶって…」
そこで先生が二人の会話がヒートアップしてることに気づいたらしく止めに入る。
「二人とも、やめなさい。また校長先生の部屋に送られたいの?」
また…?てことはよく喧嘩しているのだろうか。ていうか仲悪いのに同じ机に座るのかよ。
先生に注意された後は二人ともおとなしくなる。先生の力は偉大だ。まぁ、とりあえずこの流れで質問するべきではないかもしれないが…
「え、えっと…画用紙ってどこにあるのかわかる?」
黒縁眼鏡の女子の方を見ながら言う。
「あぁ、それならあそこの右から二番目の引き出しの中よ」
「そっか、ありがとう」
普通に教えてくれてよかった…画用紙を取りに引き出しへ向かい、引き出しから画用紙を取り出す。
俺が机に戻ると無言の空間が続いていた。
あ、そういえばこの男子の名前はディランって言っていたけど、女子の方は名前知らないな…
「ね、ねぇ…君名前はなんで言うの?」
俺がそう聞くと彼女はこちらをゆっくりと振り向き、口を開く。
「私はサリーナ…サリーナ・ビショップ。そして前の彼はディラン・ケラーよ。」
「おい勝手に教えんな」
「ふふっ、いいじゃない、クラスメイトなんだし」
「あのなぁ…」
…さっきはただ仲が悪いだけの二人だと思っていたけど、こう見ると以外と仲は悪くないのか?喧嘩するほど仲がいいって感じかな
「なぁ、二人は友達同士なのか?」
俺がそう二人に質問すると、ディランが顔を顰める。
「友達?
んなわけ…ただの知り合いだ」
「まあ、一応幼馴染ね」
一応って…幼馴染なのに知り合いってなんだか悲しくないか。
少々苦笑しながら、サリーナの描いてる絵に目を下ろす。
「それにしても、サリーナは絵がすごく上手なんだな…俺、そんな上手に描けないよ…」
俺がそう言うとサリーナは絵を描くのを中断し、筆を置いた。
「最初は誰だってそうよ、私だって最初は輪郭を上手く描けなかったの。でも上手な人の絵をお手本にして、練習していたらだんだん上達していったわ」
「やっぱ、練習あるのみか…」
「でももちろん、楽しむことも大事よ。自分が情熱を注げるものだからこそ、練習が続けられるの」
楽しむことも大事、か…
俺が何もかも挫折してばかりなのはやっぱり、がむしゃらにやっているからなのか。
「ディランは何も描いてないみたいだけど、もう終わったのか?」
「当たり前だろ、とっくの前にな!これが俺の作品だ」
そう言いながら、地面に置いてあるリュックからくしゃくしゃになった画用紙を引っ張り出し、こちらに広げる。
「…えっと、ただの白紙にしか見えないんだけど」
「ご名答、この絵は名付けて「白紙」。俺が現代のピカソさ!」
いや、ただ描くのめんどくさかっただけだろ。
「そういえばサム、お前朝のバスで俺の横に座ってきたよなぁ。あの時間のあの空間は、俺がゆったりまったりと一人で楽しむ時間なんだ、わかったらもう明日から隣に座ってくるなよ」
やっぱ朝の事覚えてるのかよ。まあ、そりゃそうだよな…俺だってよく覚えてるし
「し、仕方ないだろ…他の席は空いていなかったんだよ。ディランの横くらいしか座れる場所なかったし…」
「じゃあもう地面でいいだろ」
「いいわけない」
そこで俺らの会話を黙って聞いていたサリーナが口を開く。
「サムは今日引っ越してきたばかりなのよね、ランチは一人で食べるの?」
ぐっ…痛いところをついてきやがる…俺は前の学校でもランチは一人だったので、どうせここでも一人だろう。
「まあ、まだ…友達いないからさ…一人だろうな」
まだ、というか一生できないんじゃないかな
「そう、ならランチの時間は私達と一緒に座らない?あなたの事もっと知りたいわ」
あなたの事もっと知りたいわ
……そんなセリフ生まれて初めて言われた。今まで強がっていたが、実はランチを一人で食べるのは寂しいし、友達は欲しい。これは断らない理由がない。
「いいのか…!喜んでご一緒させてもらうよ!」
「ま、お前友達いなさそうだし仕方ないな」
「私達は一番右側の席に座っているの、ランチの時間待っているわ」




