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隣国で有事シャツ

 今日は満月か。

 もうここに来てしばらく経つわね。


 月をバルコニーで見ながらアイネスはボンヤリと思う。

 夜空を思わせる漆黒の髪や瞳を。


 逢いたいなぁ……。


 彼は黙って傍を離れた自分に怒って居るかしら?とアイネスは苦笑いしてしまう。


 それでも、これは自分で決めた事。

 彼の隣に凛として立ちたいから。


 彼と同じ方向を共に向いて歩んで行きたいから。

 彼だって今までそうして努力し続けて来てくれた。それだったらば自分もそれに答えなけれ行けない。


 もう少し。

 もう少しだ。


 アイネスは彼の有事シャツをキュッと抱き締める。


 もう、シャツからは彼の匂いはだいぶ無くなって来てはいるが何度これのお陰で自分を励ませただろう。

 

 シュンに逢いたい。

 

 どうか彼が黙って出てきた自分を嫌いになってませんように。

 アイネスは月に祈り、部屋にもどった。




 遡ること半月以上前。


 「シュンのパパとママでーす。」


 突如目の前に現れたシュンの両親、つまりバース家の当主達のいきなりの出現にアイネスは眩暈を覚えた。


 だけど、シュンのご両親はとても気さくでアイネスはホッとしたのを覚えている。


 そして、そんな御両親にシュンに相応しくなるにはどうすれば良いのかもアイネスは悩みを漏らしたが故に今ここで、花嫁修業させて貰っているのだが。

 

 だけど、まさか隣国のタガス邸に夜中ひっそりと運び込まれる羽目になるとは考えてもいなかった。

 ここまで来るには車で3日程かかるのでは無かったのか?

 

 朝起きた時部屋にキョウナが喜んで飛び込んで来たときは流石に目を白黒させてしまった。


 後にイディスに聞いたところ「財力で時間のやりくりは多少できるものよ。」とウィンクされた。



 アイネスはキョウナと過ごした日々を思い出してふふふと思わず笑みが零れる。



 彼女は最初出会った頃に比べだいぶ変わっていた。

 タガス家の一人娘でアイネスと同い年。

 それなのに既に素敵なクレンと言う伴侶を周囲の反対を押し切って得るだけで無く、タガス家の跡継ぎとしても経営の手腕を振るっていた。

 

 同い年なのにここまで差がつくものね。

 

 いかに自分が甘えて来たのか、箱入りで守られて来たのか。

 タガス邸に花嫁修業に来てからは嫌というほど痛感させられてきた。



 だけど、キョウナはアイネスに忙しい中でもとても良くしてくれた。それがまた楽しくて。


 キョウナと居たからと言うのも耐えられた理由の一つね。


 キョウナ夫婦はとても素敵だった。

 お互いの手を取り支え合い微笑みあう2人は本当に素敵だ。

 クレンもキョウナと共に居るためにこちらに来てからはタガス家の跡継ぎの婿として相当な努力をしたようだ。




 あともう少し。

 私もシュンとそうなりたい。



 アイネスは有事シャツを再び抱き締め目をつぶる。

 また朝にはキョウナ、エレン、イディスからのスパルタ花嫁修業が始まる。

 

 「おやすみなさい、シュン。」


 アイネスはそっと有事シャツに口づけて瞳を閉じる。

ここまでお読みくださりありがとうございます!


ブックマークありがとうございます。

がんばります!!


アイネスの居場所

それは隣国タガス邸でしたー。


またキョウナに少し活躍して頂きます。

キョウナ贔屓

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