もしかして……。
………で、どうしてこうなったの私。
ここはキッチン近くのバース家のサロン。
目の前に座る綺麗な黒髪の女性をアイネスは見つめる。
遡れば数分前、何か作って気分転換しようとキッチンに向かっている途中なぜかこの女性が倒れていた。
びっくりして声をかければ女性は盛大なお腹の音を鳴らして答える。
「お腹……減った……。」
そして、なぜか今に至る。
目の前には綺麗に食べ尽くされたサンドイッチと牛乳が乗っていた皿が広がる。そして、どこか風格があり、毅然としたたたずまいの美しい女性。
きっとシュンが女装したらこうなるのかしら。アイネスはボーッと女性を見つめてしまう。
「あ、あの私はアイネス・ローネ・グラウンと申します。貴方は……。」
アイネスが恐る恐る答えれば女性はボーッとアイネスを見つめかえす。
「………。」
「………。」
2人の間に沈黙が流れる。
「……あの、このサンドイッチでよろしければおかわりご用意しましょうか?」
アイネスが無言に耐えきれず聞けば女性はこくんと頷く。
おかわりしてくれるって事は味は大丈夫だったのかな?
アイネスがサンドイッチを作るために再びキッチンに立ち、戻ってくると女性はアイネスが先程迄手にしていた手紙を眺めていた。
「あ、それは……。」
アイネスが手紙を女性から受けとるとそっと目を伏せた。
「すいません。お見苦しいものをお見せしてしまいました。」
「……別に謝る事ではないわ。むしろ勝手に中身を見てしまってごめんなさい。」
女性の声は凛としている。
「だけど、見てしまったついでにお節介かも知れないけど聞いてもいいかしら?貴方はそのお手紙をみてどう思った?貴方の婚約者さんは何か言っていた?」
「……解りません。」
アイネスは肩をすくめる。
「私もさっきこの手紙を見つけてしまったんです。今まで彼は1人で処理してくれてたんですかね。私は今までこんなやり取りがあったかどうかすら情けないことに解らないんです。」
アイネスは初対面の女性に正直に話す。
「そう。でも、今解ったじゃない。で、貴方はこれからどうするの?」
「これから……?」
「そうよ。これから。まさか貴方言われっぱなしで居るわけ?」
先程までボーッとしていた女性と打って変わり目の前にいる女性の眼光は鋭い。
女性はアイネスのサンドイッチを手に取ると口に運ぶ。
「正直解りません。私なんかになにができるのか。」
アイネスは肩をすくめる。
「ただ……私は自分が出来る事が有ればするだけです。彼が私にそうしてくれているように。」
「ふうん。なら、貴方この手紙の主の娘さんと貴方の彼が万が一良い雰囲気になったらどうする?彼がこの御嬢様を選んだら、貴方は彼が選んだからと受け入れる?」
「まさか!でも、どうしましょうか。そんなことになったら。」
「あら、簡単よ。こっちから彼を捨てて、彼より良い男を捕まえて後悔させるだけだわ。」
「あら、それは素敵な考えかもしれませんね。」
アイネスと女性はクスクスと笑いあう。
「まぁ、話はそれてしまったけど。貴方への嫌がらせはきっとこんなものでは収まらないわ。直接会っても嫌みがあったりするのよ。まぁ、そこは夫婦でなんとかしなさいね。ここは国一の財閥、バース家だもの。嫁ぐならそれなりの覚悟も度胸も必要よ。やられたらやりかえさなきゃ!」
女性に言われてアイネスはキッと気持ちを引き締める。
どうしてか女性の言葉にはそう思わせる力がある。
「そうですね。正直不安しかないけれど、シュンに守られッぱなしも嫌だから。」
アイネスがそう答えれば女性はクスクスと笑う。
「それにしてもあの子はどこか詰めが甘いわ。もう一度鍛え直さなきゃかしら。」
あの子?
アイネスが口を開きかけると後から明るい声が聞こえる。
「あ、やっと見つけた!イディス!もう!お腹空いたって言ってどこか行っちゃうんだからって……この子だれ?」
「あら、ケイド。来るのが遅いわよ!私はもうシュンのお嫁さんにサンドイッチをご馳走になってお腹いっぱいよ。」
「え?あ!この子がグラムの娘さん?アイネスちゃんだっけ?大きくなったね。」
アイネスが、話について行けずキョトンとしているとこれまた見目麗しい男性がやってきた。その顔はどこかレオやカイを連想させる。
それに、今グラムと……。グラムはアイネスの父親のファーストネームだ。
「……え?あ、あの……。もしかして……。」
アイネスが目を見開いていると女性と男性はにっこり笑って答える。
「シュンのパパとママでーす。」
アイネスは眩暈がした。
ここまでお読みくださりありがとうございます!
ブックマーク本当にありがとうございます!
遂にでた!パパとママ!
バース家はママのほうが強かったりします。笑
いつかパパママ欄外編かけたら良いなと思ってます。




