許してくださいの格好
「次に淋しくさせたら私、シュンの事嫌いになっちゃうかも。」
しばらく泣いて落ち着いたアイネスはシュンの腕の中で呟く。
「もう淋しくはさせない。嫌いになられたら好きにさせるから。」
そう言って優しくアイネスの額にシュンはキスをする。
「それに…もうすぐ結婚の手続きが終わる。来週には結婚式をして俺達は夫婦だ。」
………ん?
……………来週?結婚式?
シュンの言葉にアイネスは固まる。
「え?シュン……?今なんて?」
「あぁ、来週には結婚式をして夫婦。」
「は?来週?」
アイネスは更に固まる。
シュンはその表情を見て不思議そうで不安そうな顔をしてアイネスを覗き込んだ。
「アイネス?」
「…………シュン………。」
ワナワナとシュンの腕の中でアイネスが震え出すとシュンは思わず手を緩める。
「シュン……来週は無理。ダメ、嫌。」
再びアイネスからハッキリとした拒絶にシュンは打ちのめされる。
「アイネス?……なぜ?どうして……。」
珍しく彼にしては弱々しい声でアイネスに向かって絞り出せばアイネスはシュンの腕を振りほどきベッドの上に立ち上がる。
そしてキッとシュンを冷たい目で睨む。
「当たり前でしょ!バカじゃない!?シュンのバカ!バカ!ただの変態!」
シュンの胸にはアイネスの言葉がグサグサと突き刺さる。
「アイネス……。早く夫婦になりたいって……」
「限度があるわよ!シュンのバカ!」
トドメのアイネスの一言でシュンはベッドに沈んだ。
ーーーーしばらくアイネスは怒り続けていた。
いくらシュンと夫婦になりたいと思っていてもこちらにもそれ相応な準備やら覚悟だって必要なのに。
まして、顔立ちが整ったシュンの隣を結婚式では歩くのだ。今までのようにお嬢様と執事としてではなくパートナーとして今度は歩くのだ。
それなら少しでもシュンに胸を張れるように自分の事だって磨く時間は欲しい。
それなのに……いきなり来週だなんてあり得ない。
アイネスはため息をつく。
「……とにかく、来週はダメだからね。絶対嫌よ。」
アイネスに拒否されてシュンは項垂れながら肯く。
「……アイネス。それなら君はいつならいいんだ?」
消え入りそうな小声でシュンは呟く。彼にしては珍しい。
アイネスは項垂れているシュンがだんだん可愛そうになってきた。彼だってやり過ぎではあるがアイネスの為にここまで頑張ってきてくれたのだ。やり過ぎだけど……。
再びため息をつくとベッドにちょこんと座って項垂れている彼の頭をなでてやる。
「そうね……。あと3ヶ月は欲しいかな?」
シュンの頭を撫でるのをやめて両手でシュンの頬を包み顔を上げて貰う。
完全に憂いを帯びた黒い瞳と目が合う。
「あのね、シュン。早く夫婦になりたいって私だって思ってるわ。でも、こんなに素敵な旦那様の隣を歩くんだもん。私だって少しくらい貴方に素敵だって思って欲しいの。今更付け焼き刃かも知れないけど自分を少しくらい磨きたいわ。だから私にもちょっと時間を頂戴?」
シュンを宥めるように優しく語り、シュンの額に優しいキスをすればアイネスの体はいつの間にかベッドに押し倒され、シュンが覆い被さってくる。
シュンはギュッとアイネスを抱き締めると呟く。
「わかった。」
そして顔をあげたシュンの瞳はさっきとは違いいつもの人を惹きつける黒い瞳に戻っている。若干煌めいているのは気のせいだろうか?
「シュン……。貴方反省した?」
「勿論してる。アイネスにバカだの変態だの言われたのも正直こたえた。」
「そう……それならこの格好はなに?」
「もうしないので許してくださいの格好。あと、アイネス……愛してるの格好。」
そう言ってシュンはアイネスのシャツのボタンに手をかける。
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やっぱり一人でも増えていると、もう貴方の為に頑張りますって思っちゃいます!
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