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U are less

 シャルムに美味しい物を食べさせる為に二人で外に出た。お腹の子を含めるのなら三人だが。


「今日はどうしたの?」


「いや、体力の付く食事をしてもらいたくてな。お前には頑張って貰わないといけないからさ」


「それはこっちの台詞でもあるんだけど。でもありがと。頑張るよ。この子をちゃんと産む」


 シャルムは恍惚な表情を浮かべながら自分のお腹を撫でた


「………あ、動いたっ」


 嬉しそうに言うシャルムに少年は、


「本当か?」


 と声を弾ませる。その反応はまさしく生命の印だ。

 だが、その喜びも長くは続かない。夢害。相も変わらず、彼女と出掛けると高確率で狙われる。どうしてなのかそれが解らない。何故彼女なのか。どこに狙われる理由があるのか。


「悪い、少し下がっていてくれ」


 彼はそういうと、魔術回路を回転させる。


「Iron de scwarz『黒き始祖の母』」


 回路がフル回転し、その魔力の大部分がつぎ込まれていく。シャルムを守るべく会得されたそれを彼は全力でぶつける。それは一つの剣だ。彼女に渡したあの詠唱を更に効率よく回転させ、生み出したこの魔術。彼の想像ではなく、一度生成した全ての物を記憶し、瞬時に使う。言うなれば認知外からの追撃。

 地面を蹴るとそれを前へと投げ放つ。それは魔力によって強化された投擲だ。それ相応の力を持っている。巨大な狼の形をしている影はそれは躱す。だが、それに意味は無い。生成された剣は一本ではないから。彼が記憶している武具、現象が次に控えている。それがどれだけの脅威か、敵にしてみれば解るだろう。


「Fou yos add EXE『それは付随する』」


 瞬間辺りを包み込む程の炎が広がった。それは狼を捉えこみ更に燃え広がる。逃げれるのなら遠に逃げている。逃げられないのだ。何故ならそれは付随するから。文字通りの意味だ。その炎は狼へと着いて行く。否憑いて行く。逃げ惑い、肢体は地面に叩きつけ逃れようとしても無駄だ。最早呪い。反撃など許す物じゃない。容赦がないと言えばそうなのだろう。狼が炎から逃れようと身を翻した。そこに少年の形成した剣が放たれる。ッドンッ‼‼という音は狼が射程圏内に入り、その剣と激突した時に発せられたものだ。それでもその狼は活動を停止しなかった。何の為に彼らが人間を襲うのかは全くの不明だ。謎に包まれている。解明出来るものなら、研究者が総力を挙げて調査しているはずだ。それこそ、ドラハ家だって投資もするだろう。でも違う。一度は研究者も研究の為自室に引きこもった。だが意味は無かった。


「喰らえ、化け物」


 少年の声と同時に放たれたのは無数の剣。ただ一つも外さずに当てて見せる。そこまでしてようやく狼は活動を停止した。

 基本的に夢害は近づかなければいい。夢に出てくる場合はどうしようも無いが、それ以外ならばどうにかなるだろう。


「ありがと」


 シャルムに礼を言われると少年ははにかんだ。何が恥ずかしいのだ何が。彼女が彼の手をぎゅぅっと握る。安心からの行動だろうが、何を見せられているのだろうか。いや、確かに男女がイチャイチャしているシーンはそれらしく微笑ましいと思うし、心温まるけれど、ここは道のど真ん中。しかも先ほどの爆音で人が集まっている。何時の時代になっても野次馬は居るようだ。それで被害が出なかったのは僥倖。


「取り合えず、移動を再開しよう。ここに居てもどうにもならないし。腹減っただろ」


「ん。そうだね。今日は美味しい物食べさせてくれるんでしょ?」


「あぁ。そりゃな。もう出産が控えてるんだ。体力をつけて貰わないと」


 そう少年が言うと彼女は微笑みを返した。

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