最終話
翌日の爽やかな朝、私たちは、いつもどおりに電柱で待ち合わせた。
「おはよっ、弥生」
「おはよう。武は朝から元気だね」
「元気が取り柄だかんなー」
なんてことない、いつもどおりのやりとり――。
でも、違うところもあって。
それは――。
「武、やっぱり私のこと、弥生って呼ぶことにしたんだね」
「あんまり突っ込むなよー。照れるじゃんか」
私たちは。
どちらともなく、手を繋ぐ。
まるで、あのとき、みたいに――。
「ねえ、志乃ちゃんに謝らなきゃいけないね」
「志乃ちゃんに?」
「きっと、心配させた。あんな手紙入れちゃって」
「ああ、そうだなー」
「あと、佐藤くんや、景子やむっちゃんや陸くんにも。つっけんどんな態度取っちゃって、わるかったなあって」
「それもな、そうだなー」
真夏の朝の風は、気持ちいい。
昨夜のぬるい風とは、比べものにならないくらいに――。
「……やよちゃん、きょうも、りぼんつけてるんだな」
「当たり前じゃん。だって、私たち」
私は、笑顔で言う。
「幸せに、なるんでしょ?」
私は、思ったのだ。
それは、あの男に対してできる、最高の復讐だろう――。
武もうなずいて、満開のひまわりのような笑顔で、だな、と言った。
武が、じつのところなにを考えているかなんて。
わからない。
けれど、いまはいつもと変わらない日常に、武が隣にいてくれる――。
それだけで、充分かなって。
頭のりぼんを、意識する。
私は、幸せを誓ったこのりぼんに、愛されている――と、感じた




