第二十四話
しばし、抱き合ったあと。
俺は、そっと弥生の身体から離れた。
永遠にだって、抱き合っていたかった。けれど正直なところ、これ以上抱き合っていたら、理性を保てる自信がなかった。
弥生は、呆然としたような顔をして、潤んだひとみで俺を見ている。こんな弥生の顔を見るのは、はじめてだった。
しかしそんな表情は、わずかな時間のことで。
弥生はすぐに、いつもの澄まし顔になった。
『びっくりした』
『俺、わるいことしちゃったかなー』
『しょげないでよ。そうじゃない。うん……びっくりしたけど、嬉しかったし』
『まじ?』
『まじ、まじ』
弥生は、くすっと笑った。そして、大きく伸びをすると、俺に向き直った。
『ねえ、武』
あ、呼び捨ては定着なんだなやっぱり、と思った。
『なんだー?』
『私たちって、そのさ』
『うん』
『あのさ』
『うん』
『つきあって、るんだよね?』
俺は、はにかむようにして言うかわいすぎるこのひとを。
ふたたび、抱きしめたい気持ちになった。
でも、それはせず。その代わり、弥生の頭に手を置いた。柔らかい、髪の感触。
そして俺は、弥生にもたれかかった。甘えたがりな俺のことだって、弥生は受け容れてくれる、と思った。
弥生も、おそるおそる、といった感じで、俺に身体を預けてきた。
俺は、言う。
『つきあって、ください』
『遅いよ』
そんなことを言う弥生の髪を、わしゃわしゃ、と撫でる。弥生は、くすぐったいよ、と言って笑った。
弥生――この先、なにがあっても。
たとえ、世界じゅうがおまえの敵になっても。
俺は、守る。
弥生を、ぜったいに、守りきる――。
星がきれいなこの夜において、俺はほんとうに幸せだ、と思った。




