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第二十五話
そんなことを思い出しているうちに、家であるマンションの前に着いた。
俺は、そびえ立つマンションを見上げる。
そして、思う。
あのころよりも、ほんのすこしだけおとなになった俺は、思う。
世界のすべてが弥生の敵だというわけでは、ない。むしろ俺だって、佐藤や志乃ちゃんだって、弥生の友人たちだって、みんな、弥生のことが好きだ。
しかし。
弥生にとってだいじな世界の一部であるはずの両親、とくに親父のほうは、あきらかに、弥生の敵だ。
弥生――俺が、生まれてはじめて、愛しく思ったひと。
俺には、うしなうものなんかなにもない。兄貴みたいに勉強ができるわけでもないし、佐藤みたいに人望があるわけでもない。
知ってるか? 弥生。
俺は、できそこないなんだよ――。
そんな、俺だけど。
せめておまえを守らせてくれ。
頼むよ。
できそこないの俺の、ゆいいつの願いなんだそれは――。
これから家の修羅場を迎えるであろうというときに、どうして、弥生のことを考えているのか。それは、わからなかった。わからなかった、けれど。
もしかしたら、弥生は、弥生だけは守れると、俺は思っているのかもしれない。




