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DUST & CREDIT  作者: てきてき@tekiteki


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第7話 役に立つのか、こいつ(後編)

Anne「私自身を売却するという意味ですか?」


Yajii「いや、違う違う、そんなことはしねえ」


Kitterrが割って入る。


Kitterr「こいつの言葉は気にするな」


Yajii「まて、俺の何が悪いんだよ」


Kitterr「頭のてっぺんからつま先まで全部だ」


Yajii「黙って聞いてりゃあ、おめえ、ひどいこと言うなあ」


Anneは二人を見た。


二人の表情。

声の大きさ。


距離。

視線。


それぞれを観察する。


Anne「あなた方は、いつもこのような会話をするのですか?」


Yajii「ん? だいたいな」


Anne「理解しました」


Kitterrが嫌な予感を覚える。


Kitterr「何を理解した」


Anne「Yajiiは、よく考えずに発言する」


Yajii「おい」


Anne「Kitterrは、それを訂正する」


Kitterrが黙る。


Yajii「合ってる」


Anne「そして二人とも、CREDITという単語に反応します」


Yajii「おお! それも合ってる」


Anne「理解しました」


Anneが頷いた。

Kitterrが眉をひそめる。


Kitterr「何をだ」


Anne「あなた方は、CREDITが好きなのですね」


Yajiiが胸を張る。


Yajii「ああ、大好きだ」


Kitterr「俺はそこまでじゃないよ」


Yajii「なに……嘘つけっ!」


Kitterr「おーい、お前と一緒にするな」


Yajii「昨日なあ、八百CREDITの端末を見た時、目が輝いてたぞ」


Kitterr「あれは、おめえ、確認だよ」


Yajii「何の?」


Kitterr「利益の」


Yajii「お金、好きじゃん」


Kitterr「……」


Anneが二人を見る。


Anne「理解しました」


Yajii「何を?」


Anne「CREDITは重要です」


Yajiiは満足そうに笑った。


Yajii「そういうことだな」


Kitterrは嫌な予感がした。


Kitterr「余計なことを教えるなよ」


だが、Anneはすでに作業を始めていた。

廃棄された機械を一つ手に取る。


スキャン。


Anne「再利用可能です」


別の機械。

スキャン。


Anne「三十CREDIT」


さらに別の部品。


Anne「部品として二百CREDIT」


Anne「これは価値がありません」


次々と判定していく。

YajiiがAnneの後ろをついて回る。


Yajii「すげえ」


Kitterrもスキャナを確認する。

表示される数値は、ほぼ正確だった。


Kitterr「……本当に使えるな」


Yajii「だから言った通りだろ」


Kitterr「お前は何もしてないだろがよ」


Yajii「ちゃーんと、見守ってる」


Kitterr「宇宙で一番いらない仕事だよ」


Anneは二人の会話を聞きながらも、手を止めない。


一つ。

また一つ。


拾うべき物と、拾わなくていい物を分けていく。

その判断には迷いがなかった。


時々、Anneは手に取った部品をじっと見る。


そして。


Anne「これは三百二十CREDIT相当です」


Yajii「さっきのより高い!」


Anne「こちらは五百CREDIT相当です」


Yajii「おお!」


Kitterr「おい、Yajii。全部拾うなよ」


Yajii「だって金になるんだぜ」


Kitterr「置く場所がなくなる」


Yajii「じゃあ俺が持つ」


Kitterr「お前が潰れる」


Yajii「俺は丈夫だ」


Anne「それは確認できていません」


Yajii「お前まで言うか!」


Anne「事実です」


Kitterrが笑う。


Kitterr「そりゃそうだ」


Yajii「お前らなあ……」


三人の間に、少しずつ妙な空気ができていく。

Anneは、それを不思議そうに感じていた。


昨日までは知らなかった二人。


名前も。

性格も。

行動も。

それが少しずつ分かってくる。


その日の午前中だけで。

二人が拾える価値は、いつもの倍以上になった。


Yajiiは笑いが止まらなかった。


Yajii「Anne」


Anne「はい」


Yajii「今日、いくらになりそう?」


Anneは周囲を見回す。


拾った物。

まだ拾っていない物。


売却可能な物。

部品としての価値。

それらを一瞬で計算する。


Anne「現時点で二千三百四十CREDIT相当です」


Yajii「二千!」


Kitterrも目を見開く。


Kitterr「そんなにか」


Anne「はい」


Yajii「今日の給料、いくらだっけ?」


Kitterr「お前、そこを比べるなよ」


Yajii「だってよお」


Yajiiは嬉しそうに笑った。


Yajii「ゴミが金になるんだぜ」


Anneはその言葉を繰り返す。


Anne「ゴミがCREDITになる」


Yajii「そう」


Anne「興味深いですね」


KitterrがAnneを見る。


Kitterr「何がだ?」


Anne「価値がないと判断された物が、価値を持つことです」


Kitterrは少し黙った。

Yajiiはいつもの調子で答える。


Yajii「簡単だろ」

Yajii「誰かが捨てた」

Yajii「俺たちが拾った」

Yajii「誰かが欲しがった」

Yajii「CREDITになった」


Anneは考える。


拾った物を見る。

壊れた端末。

古い工具。

使い道のない部品。


さっきまで、誰かに捨てられていた物。


Anne「価値とは、物そのものに存在するものではないのですか?」


Yajiiは頭を掻いた。


Yajii「難しい話は分からん。Kitterr、任せた」


代わりにKitterrが答える。


Kitterr「たぶん、誰かが欲しいと思った時に生まれるんじゃないか」


AnneがKitterrを見る。


Anne「では」


Kitterr「なんだ?」


Anne「私も、誰かに必要とされた場合」


Anneは一度、言葉を止めた。


自分自身を見る。

人間のような顔。

人間のような身体。

だが、その内側には自分でも分からないものがある。


Anne「価値を持つのでしょうか?」


Kitterrはすぐに答えられなかった。


YajiiがAnneの肩を叩く。


Yajii「持つだろ」


AnneがYajiiを見る。


Yajii「だってもう」


Yajiiは笑った。

そして、親指を立てて、自分の方へ向けると。


Yajii「俺たちが必要としてる」


Kitterr「……」


AnneはYajiiを見る。

次にKitterrを見る。

二人の顔を、しばらく見つめる。


Anne「……そうですか」


ほんの少しだけ、目が細くなる。

それが笑顔なのかどうか。

二人には分からない。


Anne自身にも、分からなかった。


ただその言葉だけは、記憶しておこうと思った。


そしてその日の帰り。

三人で廃棄区画を出ようとした時だった。


遠くから警告音が聞こえた。

Kitterrが足を止める。


Kitterr「Yajii」


Yajii「なんだ?」


Kitterr「誰か来る」


Yajii「作業員?」


Kitterr「これは違うぞ」


Kitterrが端末を確認する。

廃棄区画の監視システムが動いていた。


その瞬間、Anneも足を止めた。


目が淡く光る。

周囲の情報が、一気に読み込まれていく。


監視カメラ。

通信。

人の動き。


そして、自分たちへ向けられた視線。


Anne「……」


Yajii「どうした?」


Anne「何でもありません」


Anneは二人を見る。


今はまだ、何を伝えるべきなのか判断できなかった。


Kitterr「ここは本当に閉鎖区画だ」


Yajii「だから?」


Kitterr「誰かが、俺たちを見つけたって事だな」


Yajiiは笑った。


Yajii「じゃあ逃げるか?」


Kitterrが頷く。


Kitterr「ああ、逃げるしかないな」


Anneが二人を見る。


Anne「なぜ逃げるのですか?」


Yajii「面倒だからな」


Anne「理解しました」


Kitterrが走り出す。

Yajiiも続く。

Anneも二人を追う。


その背後で、廃棄区画の監視カメラが、静かに動いた。


レンズが三人を追う。

そして、赤いランプが、一度だけ点滅した。

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