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DUST & CREDIT  作者: てきてき@tekiteki


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第27話 開かずの扉

 Anneは、研究所の奥へ向かっていた。


巨大な扉。

先ほどから、Anneはその扉を見つめている。


何かを思い出したような。

しかし、それが何なのか。


それはAnne自身にも分からなかった。


 「呼ばれている」


 「そこに行かなければならない。」


そんな感覚だけが残っていた。


Anneは、ゆっくりと歩いていく。



Yajii「おい、Anne」



Anneが立ち止まる。

YajiiとKitterr、博士、Josiahが後ろから追いついてきた。



Kitterr「急にどうしたんだ?」


Anne「あの、私……呼ばれています」


Yajii「誰に?」


Anne「分かりません」


Kitterr「分からないのに行くのかよ」


Anne「はい」


Kitterr「おーい、そこは否定してくれえ」


Anneは答えず、再び歩き始める。

皆はそのあとをついて歩いて行く。


やがてAnneの前に、巨大な扉が姿を現した。


壁と一体になったような、重厚な金属製の扉。

その中央には、六角形の紋章のような印が刻まれている。



Yajii「これはまた……でかい扉な」


Kitterr「なんの扉だ?城か?」


博士「さあな、分からん」


Yajii「あーあ、またかよ」


博士「あーあとか言うな。わしだって、何でも知ってるわけじゃないんじゃよ」


Kitterr「ええー?研究所の博士だろ?」


博士「ああ、そうじゃ」


Yajii「じゃあさ、なんかさあ」


Kitterr「もう少しくらいさ、なんか分かれよー」


博士「うるさい。分からんものは分からん」


Yajii「で、何か調べたのか?」


博士「多角的にスキャンしてみた」


Yajii「ああ…それで?」


博士「なんとなく、三層あるらしいことがわかった」


Yajii「え?なんとなく?」


博士「まあ、スキャンしただけだからなー」


Kitterr「スキャンしただけって……」


Yajii「なんかさあ、お宅さあ、もっと知りたいって気持ちとかないの?」


博士「それは、あるに決まっとるじゃろうが」


Kitterr「だよねー?曲がりなりにも、お宅、研究者だよね?」


博士「お宅ってなんじゃ?……ああ、研究者じゃよ」


Yajii「そnじゃあさあ、もっと詳しく調べればいいじゃん」


博士「だが、そのためにここを壊すわけにはいかんだろうが」


Yajii「じゃあ普通に開ければいいじゃん」


博士「普通に開ければ良いって、素人は簡単に言うなあ」


Kitterr「そりゃそうだろなあ」


Yajii「でも、開けないと中は分からないだろ?」


博士「そりゃそうじゃ。わかっとる」



博士は扉を見る。

そして溜息をつく。



博士「はあー。あのな、問題というのはな」


三人が博士を見る。


博士「見える危険なら、まだ対処のしようがあるんじゃよ」


Yajii「見える危険?」


博士「武器を持った敵とか、爆発物とか、そういうものじゃ」


Kitterr「おお、確かにな」


博士「だが、未知のものは違う」



博士の声が少し低くなる。



博士「病原菌がいるかもしれん」


Yajii「……」


博士「未知のウイルスかもしれん」


Kitterr「……」


博士「放射線に分類されるような、高エネルギーを照射する装置が残っている可能性もある」

博士「扉を開けた瞬間、それこそ何かが爆発するかもしれん」


Josiah「そうです。危険なのです」


博士「あるいは、この研究所そのものを破壊するトリガーになっている可能性だってある」



研究所の奥。

それは誰も知らない場所。


何が眠っているのか。

それを確認する方法はない。



博士「中に何があるか分からん」

博士「どういう仕掛けがあるかも分からん」

博士「開けたことで、何が起きるのかも分からん」



博士はAnneを見る。



博士「その状況で、踏み込めるか?」


Yajii「……あ」


Kitterr「……ん?」



Anneは黙って扉を見つめている。



Yajii「あの、俺なら多分行ける」


博士「は?」


Kitterr「まあ、お前はそういうやつだ」


Yajii「だよな」


Kitterr「そうだよ」


Yajii「そうだよな!」


二人「あははは……」


博士「笑ってる場合か!」



二人の笑い声が、静かな研究所に響く。


だが、その笑いも長くは続かなかった。


巨大な扉。

その向こうには、何があるのか。


本当に危険なのか。


それとも、もっと別の何かが待っているのか。

誰にも分からない。



博士「……わしだって、知りたいんじゃよ、本音を言えばな」


Yajii「じゃあ開ければいいじゃん」


博士「だからさっき……もう、本当に簡単に言うなあ、素人は」


Kitterr「研究者なのにね」


博士「研究者だから慎重なんじゃよ」



その時、Josiahが突然、顔を上げた。



Josiah「博士」


博士「なんじゃ?」


Josiah「先ほどの話ですが」


博士「どの話じゃ?」


Josiah「『微笑みの雫』です」


Kitterr「まだ気にしてたのか」


Josiah「はい」


Yajii「そんなに気になる?」


Josiah「非常に気になります」



Josiahの目が光る。



Josiah「本部のマスターDBに検索をかけてみます」


Yajii「いやいや、俺の創作だって」


Josiah「まだわかりません。確認します」


博士「勝手にせい」



Josiahが端末を操作する。

数秒後。



Josiah「……ありました」


Yajii「え?」


Kitterr「……は?」


博士「なんじゃと?」


Josiah「『微笑みの雫』」



Josiahは画面を見つめる。



Josiah「鉱物分類です」



三人が固まった。



Yajii「……」


Kitterr「……」


博士「……」



Josiah「登録名称は『乙女の微笑みの雫』」



Yajii「……俺の創作なんだけど」


Kitterr「お前、何を創作したんだよ」


Yajii「知らねえよ」


Josiah「詳細データがあります」


博士「……見せてみろ」


Josiah「はい」


その瞬間、キーンとした高音とともに、

扉の中央にある六角形の紋章が、淡く光った。


Anne「……」


Yajii「Anne?」


Anneは、扉を見つめていた。

胸元の六角形も呼応するように光っている。


一度。


二度。


三度。


扉の紋章が明滅する。

Anneの胸元も光る。


まるで、互いに存在を確認しているようだった。



Yajii「……Anne」


Anne「はい」


Yajii「お前、何かした?」


Anne「何もしていません」


Kitterr「本当に?」


Anne「はい」


光が、さらに強くなる。

博士は扉を見つめていた。


その表情から、先ほどまでの余裕が消えている。



Yajii「博士?」


博士「……」


Yajii「何か知ってるのか?」


博士「いや」


Yajii「いや?」


博士「知らん」


Kitterr「本当に?」


博士「本当に知らん」



扉の奥から。

低い音が響いた。


 ズズズズズ……。



Yajii「……動いた?」


Kitterr「扉が?」


重い音が続く。


 ギギギギ……。


巨大な扉の一部が、わずかに動いた。


その隙間から白い光が漏れ出す。


誰も動かなかった。

そして、博士が呟く。


博士「……何があるんじゃ」


その言葉に答える者はいない。

そこには、様々な危険が眠っているかもしれない。


でもそこに研究所全体を動かす何かが、眠っているのかもしれない。


ただAnneは、光を見つめていた。


そしてどこからともなく、アナウンスが流れる得る



System『お帰りなさいませ』


Anne「……」


Yajii「……」


Kitterr「……」


博士「……」


Josiah「……」



誰も動かなかった。

否、動けなかった。


ただAnneだけが、ずっと扉を見つめている。


その顔には、驚きも、喜びも、恐怖もない。


ただ、理解できないものを前にした、静かな沈黙だけがあった。


扉が、さらに開いていく。

白い光が、通路へ流れ出す。


Anneは、その光の中へ一歩踏み出した。



Yajii「Anne!」



Anneは振り返らない。


もう一歩。


その身体が、白い光の中へ入っていく。


そして、姿が見えなくなる。


YajiiとKitterrは、呆然とその姿を見ていた。

博士も動かない。


Josiahは、まだ端末を見ていた。



Yajii「なあ、Kitterr……微笑みの雫って言ったじゃねえか」


Kitterr「ああ、いってたなあ」


Yajii「……あれは俺の創作だ」


Kitterr「だと思ってたよ……最初からな」


Yajii「ばれてたか」



Yajiiは、開いた扉の向こうを見る。

白い光しか見えない。

その奥に何があるのか、誰にも分からない。



Yajii「そんな事よりよ」


Kitterr「……」


Yajii「Anne……どうなっちまうんだ?」



Kitterrは答えなかった。


博士も、Josiahも、誰も答えられなかった。



Josiah「……微笑みの雫」


Kitterr「おい、まだ言ってるのか」


Josiah「これは、鉱物なんですよ」


Yajii「今そこかよ」


Josiah「とても気になります」



白い光の向こう、Anneの姿はもう見えない。


ただ、開いた扉の向こうから。

白い光だけが、静かに流れ続けていた。

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