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DUST & CREDIT  作者: てきてき@tekiteki


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第22話 博士と助手(前編)

yajii第12話 博士と助手(前編)


地下の研究施設。

赤い警報灯も止まった。


三人は、白い壁に囲まれた通路を歩いていた。

それまでの地下とは、明らかに雰囲気が違う。

そしてドロイド犬もついてきている。


床には埃がほとんどない。

壁には規則正しく配管が走り、

天井には古いながらも機能している照明が並んでいる。


太いパイプの表面には、

金色のフィルムが巻かれ、その上から金属製のメッシュが覆っていた。


Yajii「……すげえな」


Kitterr「本当に研究所みたいだ」


Anne「研究施設である可能性が高いです」


Yajii「でもよ」


Yajiiは周囲を見回す。


Yajii「なんでこんなところが、廃棄場の地下にあるんだ?」


Kitterr「俺が知るかよ」


Anne「不明です」


Yajii「だよな」



三人はさらに奥へ進んだ。

その時だった。

一瞬、Anneの足が、ほんの少しだけふらついた。



Anne「……」


Yajii「Anne?」


Anne「問題ありません」


Kitterr「またそれか」


Yajii「本当に大丈夫か?」


Anne「はい」



そう答えたAnneだったが、歩く速度は明らかに落ちていた。

博士は、その様子を少し離れた場所から見ていた。


白衣。


ずんぐりむっくりとした体型。

四方八方へ爆発したような髪。

そして、顔いっぱいに広がった立派な髭。


そう、どこからどう見ても博士だった。


博士がゆっくり三人へ近づいてくる。

まず、Yajiiがそれを見つけた。



博士「……ふむ」


Yajii「……」


Kitterr「……」


Yajii「え……博士?まぼろしじゃねえよな?」


Kitterr「こりゃ、博士以外は考えられないな」


Yajii「でも大丈夫なのか……」


Kitterr「何がだよ」


Yajii「いや、なんかこう……」



Yajiiは目の前の博士をまじまじと見る。



Yajii「ああ、やっぱり博士だな」


Kitterr「うん、紛れもなく博士だ」


Yajii「こんな博士らしい博士、まだこの時代にいたんだ」


Kitterr「いやー、漫画の中だけかと思ってた」


Yajii「だよな」


博士「こら、何をグダグダ言うておるんだ」


Yajii「わ!しゃべった!」


Kitterr「当たり前だろ!」


博士「当たり前じゃ!」



博士は呆れたように二人を見る。



博士「それより……これは」



博士の視線がAnneへ向く。



博士「あららー、お前さん」


Anne「はい」


博士「これはいよいよ、エネルギーが足りんようだな」


Anne「あ……」


Yajii「分かるのか?ハカセ!」


博士「そんなもんは、見れば分かるじゃろ」


Kitterr「ええ!?見ただけで?ハカセ!」


博士「そうじゃ。というか、語尾に”ハカセ”といちいち付けるな、鬱陶しい」



博士はAnneの周囲を歩きながら、身体の状態を観察する。


Yajii「おいおい、変な事するんじゃねえぞ」


博士「ほお、こりゃあ、かなり消耗しておる」


Yajii「やっぱり消耗してるのか」


博士「こんな感じだと、これまでもまともに補給しておらんじゃろ?」


Anne「……はい」


博士「まあしかし、それでよく動いておったな」


Kitterr「ええ!?そんなに悪いのか?」


博士「悪い」



博士は即答した。



博士「エネルギーの残量だけなら、とうに警告が出ておってもおかしくない」


Yajii「実際、出てたよな」


Kitterr「もっと早く言ってくれよ」


Yajii「しかしなあ、早く言われても、俺達にはどうしようもなかっただろ」


博士「しかし妙じゃな」



博士はAnneの胸部を見る。



博士「消費量と残量が計算と合わん」


Kitterr「どういうことだ?」


博士「これだけ動いておれば、もっと早く機能が低下しておるはずじゃ」


Anne「……」


博士「それなのに、まだ動ける」


Yajii「そりゃあ、Anneも頑張ってんじゃねえか」


博士「そういう問題ではない」



博士は腕を組んだ。



博士「内部のエネルギー機構そのものが、わしの知っているものと違うのかもしれん」


Yajii「つまり?」


博士「ああー、分からん」


Yajii「博士でも?」


博士「博士でもじゃ」


Kitterr「なんか安心したような、不安になったような……」


博士「とにかくエネルギーの補給が必要じゃ」


Yajii「何を入れる?」


博士「これじゃ」


博士は白衣のポケットから、小さなケースを取り出した。

蓋を開ける。

中には、六角形の透明な欠片が入っていた。


Anneの胸部にある凹みと、よく似ている。


Yajii「……それ」


博士「ヘキサのかけらじゃ」


Kitterr「ほらこれ。やっぱり、あの石と同じものなんじゃないのか?」


博士「この子に今装着されているものとは、完全に同じとは言えん」



博士は欠片を持ち上げる。



博士「だが、エネルギー特性は近い。なんとかなるだろう」



Anneの視線が、その欠片へ向く。



Anne「これ……」


博士「これを使ってみるかのう」


Yajii「大丈夫なのか?」


博士「大丈夫でなければ使わんよ」


Kitterr「ああ、その言い方、ちょっと不安だな」


博士「素人は黙っとれ」


Yajii「いやらしい手つきしたら、張り倒すぞ!」


博士「そんなもんするか!」



博士はAnneの胸部へ近づく。



Anne「わたし、何をすれば?」


博士「じっとしておれ」


Anne「はい」



博士はヘキサのかけらを、Anneの胸にある接続部へ近づけた。


 カチッ。


小さな音。

欠片が、まるで吸い込まれるように接続部へ収まった。


次の瞬間、Anneの身体が淡く光った。



Yajii「おお」


Kitterr「光ったな」


Anne「ん……」



光は胸部から全身へ広がっていく。

先ほどまで不安定だった身体の動きが、少しずつ落ち着いていく。



Anne「……少し、回復しました」


博士「よし」


Yajii「これで治ったか?」


博士「いや」


Yajii「え?」


博士「こんなもんじゃあまだ、応急処置くらいじゃ」



博士はAnneを観察する。

しばらくして、眉をひそめた。



博士「……」


Kitterr「どうした?」


博士「ふー。やっぱり……これでもまだ足りんのか!」


Yajii「そんなに?」


博士「うむ」



博士の顔に、明らかな驚きが浮かぶ。



博士「普通なら、今のでかなり回復するはずなんじゃ」


Anne「……」


博士「それなのに……なんじゃ、この程度しか戻らん」


Yajii「Anne、そんなに減ってたのか」


Anne「はい」


Kitterr「……」


Yajii「じゃあ、もっと入れれば?」


博士「そう簡単な話ではない」

博士「この欠片を大量に入れればいいというものでもない」


Yajii「難しいな、この金平糖みたいなやつ」


博士「ああ、見た目の2万倍難しい」


Kitter「2万倍って、どんくらい?」


Yajii「わかるわけなかろう」



博士はAnneを見つめる。



博士「しかしまあ、見れば見るほど、ますます分からん」



その時、博士の背後から声がした。



???「博士」


博士「おお、来たか」



博士が振り返る。

そこには、もう一人のアンドロイドが立っていた。


Anneによく似た姿。


整った顔立ち。

細身の身体。

ただし、その立ち姿にはAnneとは違う安定感がある。



博士「助手君も来たか」



そのアンドロイドは、静かにAnneを見る。



博士「そんなに警戒するな。大丈夫そうだぞ、この人らは」


Yajii「警戒、大丈夫、この人らって……」


Kitterr「ええ!?俺たち、そんなに怪しく見えるか?」


博士「見える」


Yajii「即答かよ」


博士「地下の研究施設へ勝手に入り込んでくる奴が、怪しくないわけなかろう」


Kitterr「それはそうだけどよ」


博士はアンドロイドを見る。


博士「Josiah」


Josiah「はい」


博士「Anneを見てやってくれ」


Josiah「了解しました」



Josiahと呼ばれたアンドロイドがAnneの前へ歩み寄る。

AnneもJosiahを見る。


そして、二人の視線が重なった。



Yajii「……」


Kitterr「……」


Yajii「やっぱり、雰囲気が似てるな」


Kitterr「ああ、かなりな」


Yajii「そう!かなり似てる」


博士「まあ、そうじゃろうな」


Yajii「これ博士が作ったのか?」


博士「Josiahはわしが作った」


Yajii「じゃあAnneも?」


博士「……」



博士は答えなかった。



Yajii「あれ?だんまりか」



Josiahの瞳が淡く光る。

Anneの身体を、頭から足元まで走査していく。



Josiah「……」


博士「どうじゃ?」


Josiah「分析を開始しました」



Josiahはしばらく黙ったまま、Anneを解析していた。


やがて――



Josiah「……不明です」


Kitterr「何が?」


Josiah「不明点が多過ぎます」



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