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DUST & CREDIT  作者: てきてき@tekiteki


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第18話 なんだこれ?

巨大な生体が通路の奥へ消えていった。


三人は、しばらくその場から動けなかった。


やがてKitterrが、ようやく息を吐く。


Kitterr「……行くぞ」


Yajii「おう」


三人は、巨大生体が進んでいった方向とは反対へ歩き始めた。


地下の通路は、どこまでも続いている。


古びた配管。


崩れた壁。


積み上がった廃棄物。


地上とは違い、音がほとんどない。


聞こえるのは、天井から落ちる水滴くらいだった。


ポタ……。


ポタ……。


Anneは少し前を歩きながら、周囲を確認している。


YajiiとKitterrは、その後ろを歩いていた。


Kitterr「……なあ」


Yajii「なんだ?」


Kitterr「俺ら、どこまで行くんだ?」


Yajii「さあな」


Kitterr「さあなって……」


Yajii「戻ったら、あいつがいるかもしれねえだろ」


Kitterr「それはそうだけどよ」


Yajii「だったら前だ」


Kitterr「理屈になってねえぞ」


Yajii「でも、戻るよりマシだろ」


Kitterr「……まあな」


二人が歩いていると、Anneが足を止めた。


Anne「待ってください」


Yajii「ん?」


Kitterr「何かあるのか?」


Anne「前方に異常を確認しました」


三人が前を見る。


暗い。


何も見えない。


Yajii「何が?」


Anne「音です」


Kitterr「音?」


Anne「接近しています」


その直後だった。


ズズ……。


地下の奥から、低い音が響いた。


三人の足が止まる。


Yajii「……」


Kitterr「……」


Anne「……」


ズズズズ……。


今度は、はっきり聞こえた。


何かを引きずるような音。


あるいは、大量のものが流れてくるような音だった。


Yajii「……また、あいつか?」


Anne「生体反応は確認できません」


Kitterr「じゃあ、何なんだ?」


Anne「現時点では不明です」


Yajii「不明か」


Anne「はい」


Kitterr「それ、一番嫌なやつだな」


その瞬間。


通路の奥から、黒いものが現れた。


ドロ……。


床を這うように流れてくる。


黒い液体だった。


一筋。


二筋。


やがて、その量が一気に増える。


ザァァァ……。


黒いドロドロが、通路いっぱいに広がってきた。


Yajii「なんだ、これ!」


Kitterr「知らねえよ!」


Anne「こちらへ向かっています」


Yajii「逃げろ!」


三人は走り出した。


しかし、黒いドロドロの流れは速かった。


Yajii「こっちも来てるぞ!」


Kitterr「上!」


Kitterrが叫んだ。


少し先に、崩れた瓦礫が積み上がっている。


三人はそこへ駆け寄った。


Yajii「乗れ!」


Kitterr「早く!」


三人は瓦礫の上へよじ登った。


その直後。


ザァァァ……。


黒い液体が、三人の下を流れていく。


瓦礫の隙間にも入り込み、低い場所をすべて埋めていった。


Yajii「……」


Kitterr「……」


Anne「……」


しばらく、三人はそれを見つめていた。


Yajii「……なんだこれ?」


Kitterr「だから、俺に聞くなって」


Yajii「地下って、こんなの普通なのか?」


Kitterr「普通なわけあるか」


Anneは黒い液体を見つめている。


瞳の奥で解析が進んでいく。


Anne「成分を確認します」


Yajii「分かるか?」


Anne「分析中です」


しばらくして、Anneが口を開いた。


Anne「一部の成分に、先ほど採取した物質との類似性があります」


Kitterr「さっきのネバネバと?」


Anne「はい」


Yajii「じゃあ、これも高エネルギーか?」


Anne「現時点では判定できません」


Yajii「そうか」


Yajiiは黒い流体を見る。


さっきのものと似ている。


だが、同じではない。


そして何より。


その量がおかしい。


Kitterr「……どこから、こんなに出てくるんだ?」


Anne「流入源は確認できません」


Yajii「上からじゃねえのか?」


Anne「上方からの流入ではありません」


Kitterr「じゃあ、奥か」


Anne「可能性があります」


Yajii「地下の奥……」


三人は暗闇を見る。


その先には、何があるのか分からない。


Yajii「……」


Yajiiは少し考えた。


そして、ふっと口元を緩める。


Yajii「そういや……」


Kitterr「なんだよ」


Yajii「さっきの話」


Kitterr「……」


Yajii「売れねえかなー」


Kitterr「まだ言ってんのか」


Yajii「高エネルギーかもしれねえぞ」


Kitterr「まだ分かってねえだろ」


Yajii「まあな」


Anne「販売価値については、現時点では算出できません」


Kitterr「Anne、そこは真面目に答えなくていい」


Anne「分かりました」


Yajiiは少しだけ笑った。


その時だった。


ズズ……。


三人の笑いが止まる。


Yajii「……」


Kitterr「……」


Anne「……」


今度の音は、黒い流体が流れる音ではない。


もっと低い。


そして、どこか遠くから響いてくる。


ズズズズ……。


Kitterr「……何だ?」


Anne「生体反応を確認しました」


Yajii「いるじゃねえか!」


Kitterr「やっぱりいるのかよ!」


Anne「距離はあります」


Yajii「さっきの奴か?」


Anne「判定できません」


Kitterr「……」


Yajiiは暗闇を見る。


その横で、Kitterrも同じ方向を見た。


何も見えない。


ただ、音だけが続いている。


ズズ……。


ズズズ……。


Yajii「……なあ」


Kitterr「なんだ?」


Yajii「ラグビーみたいだな」


Kitterr「何が?」


Yajii「大事に持ってさ」


Kitterr「……お前、タックルするなよ」


Yajii「なんだよ」


Kitterr「それ、大事に持ってるだろ」


Yajii「まあな」


Kitterr「そのまま突っ込んでいきそうだからな」


Yajii「しねえよ」


Kitterr「本当か?」


Yajii「たぶん」


Kitterr「たぶんって何だよ」


Yajii「……ノーサイド」


Kitterr「おい、試合を終わりにするな」


Yajii「なんだよ」


Kitterr「まだ続いてるぞ」


Yajii「そうか」


Kitterr「そうだよ!」


Anne「……」


Anneは二人を見る。


Anne「ラグビーとは何でしょうか?」


Kitterr「今、それ説明してる場合じゃねえ!」


Yajii「そうだぞ」


Kitterr「お前が始めたんだろ!」


ズズ……。


再び、低い音が響いた。


三人が暗闇を見る。


今度は、先ほどより近い。


Anne「接近しています」


Yajii「……」


Kitterr「……逃げるぞ」


Yajii「おう」


三人は瓦礫から降りた。


黒い流体を避けながら、通路の奥へ走り出す。


背後から、低い振動が追ってくる。


ズズズズ……。


Yajii「速え!」


Kitterr「振り返るな!」


Yajii「見たい!」


Kitterr「見るな!」


Yajii「気になるだろ!」


Kitterr「気にするな!」


Anne「前方に分岐があります」


Kitterr「どっちだ!?」


Anne「左です」


三人は左の通路へ飛び込んだ。


その直後。


ドン……!


背後で何かが壁にぶつかった。


Yajii「うわっ!」


Kitterr「来てるぞ!」


Anne「走ってください」


Yajii「言われなくても!」


三人はさらに速度を上げる。


やがて、後ろの音が少しずつ遠ざかっていった。


ズズ……。


ズ……。


そして、消えた。


三人は足を止める。


Kitterr「……撒いたか?」


Anne「現在、生体反応は確認できません」


Yajii「よし……」


Kitterr「……」


三人は息を整える。


しばらくして、Yajiiが前を見る。


そこには、また別の通路が続いていた。


Kitterr「……まだ先があるのか」


Anne「はい」


Yajii「戻れねえしな」


Kitterr「戻りたくもねえ」


Yajii「じゃあ行くか」


Kitterr「……ああ」


三人は歩き出した。


地下は静かだった。


だが、その静けさの奥には。


まだ何かがいる。


そして。


三人はまだ知らない。


この地下で流れている黒いものが、何なのか。


先ほどの巨大な生体が、何をしているのか。


そして――


この先に、何が待っているのか。


ズズ……。


遠くで、また低い音が響いた。

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