23 決闘の輪。
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決闘はその場で行われた。
盗賊たちが百メートルほどの円を人垣で作った。
マイアは怯えていた。目の前で父親を傷つけられ殺されたのだ。当然だろう。だがそれ以上に姉として弟を守らなければと思っているようで、懸命に気丈に振る舞っていた。俺が決闘とか言いだしたわけだが、そもそも、抵抗せずに奴隷になるか、抵抗して奴隷になるか、という二択だと思っているようで、「絶対無理しないで」「謝るときはお姉ちゃんも一緒に謝るから」と繰り返し俺に言った。
俺は姉に「もちろん」と答えながら冷静になろうと思った。
ここから先は絡み合った網の中から一本の髪の毛をたどるようなギリギリの戦いになる。
「じゃあ、勝ってくるから」
そう言って俺は人垣の中に入った。
当然無手である。そもそも俺は武器を持っていない。一番手に馴染んでいるのは木製の鋤なくらいだ。
俺が腕を組んで中央で待っていると、それを見てバンガオは槍を頭目に渡すと人垣の中に入った。
俺は内心頷いた。ひとつ正解をたぐり寄せたのだった。バンガオは俺が無手なら無手を選ぶと思っていたのだ。
異世界転生ものでよくある設定として、「無手での格闘術が発達していないため、格闘技の技術で無双する」というものがある。
隠していたが実は俺は陸○圓明流の継承者ーーということはなく、格闘技は高校時代の体育で柔道を習っていた程度の経験しか無かった。それでも総合格闘技やボクシングは見ていたし、「無手で相手を仕留める技術体系が存在する」ということを知っていることも優位に働くはずだった。
例えば掌底で顎を狙う、関節を極める、ローキックでフットワークを潰すーーそんな方法で相手を倒す、これが俺の狙いだった。
だが、向き合った瞬間、そんな夢想は霧消した。
ただでさえ俺の倍くらいの大きさのバンガオが向き合ってみるとさらに三倍くらい大きく見えた。大豪院邪鬼の登場シーンくらいのインパクトがあった。
なんだこいつ。
怪物に見えていた相手は向き合ってみるとやっぱり怪物だった。
だが負けるわけには行かなかった。姉と村の人々の命がかかっている。
俺は気持ちを奮い立たせて熱を身体に巡らせた。いつも瞑想しながらやっていたので、逆にざわついていた心が落ち着いていった。訓練していてほんとうに良かった。
「ほう」
とバンガオが呟いた。
バンガオも俺に対応して熱を巡らしたのがわかった。目の前で体勢を変えていないのに圧がさらに高まった。
気圧されそうになるのを振り払い、俺は自分から前に出た。
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