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22 バンガオ。


 郷長の目がまんまるになった。


「覇王将軍イスカンダル様、だと……?」


 頭目が胸を張った。


「ああ、そうだ。あの恐るべき土蜘蛛と戦い続け北辺を護り続けた覇王将軍の右腕だ。皇帝の裏切りで覇王将軍が謀殺されたあと、覇王将軍の軍団はちりぢりになった。その偉業を支えた隊長達は皆、覇王将軍以外の者に仕えるのを拒否して軍を抜けた。そのひとりバンガオは放浪中たまたま俺と出会い意気投合して兄弟盃を交わしたのだ! 覇王将軍の右腕が鎮軍如きにどうにかされると思うか!?」


 スーパープロレスラーが前に出て頭目の頭をはたいた。後ろにぽい捨てられたらしい盗賊サンが転がっていた。


「右腕じゃねぇよ」

「す、すまねぇ、兄弟」

「俺如きがイスカンダル将軍の右腕なんぞおこがましい。二十四将なんて呼ばれていたっちゃーいたがただの百人長だ。イスカンダル将軍は俺の百倍強かった……あー、なにしてんだろ、俺。イスカンダル将軍の下で土蜘蛛相手に迷わず戦っていた頃に帰りてぇ……」


 規格外の身体を乗せて馬が苦しそうだった。動物虐待だと思った。


 スーパープロレスラー改めバンガオが空を見上げた。

 

「そ……そんなこというなよ。これだって反乱だろ?」

「反乱じゃねぇよ、こんなの。騙された。帝国に反旗を翻した義賊だっていうから入ったのに、ただの盗賊じゃねぇか」

「まだ力が足りないんだよ! 力さえあれば帝国打倒のために立ち上がるぜ。それに盗賊稼業は帝国の法に反しているし、ちっぽけな反乱みたいなもんじゃねーか」

「全然違う……こんな姿、仲間に到底見せられないぜ」

「そうだ! 鎮軍相手ならどうだ!? 反乱だろ!」


 バンガオの気配が変わった。俺の背中がぞわりとするほどの怪物性が表出した。

 バンガオの強さがはっきりわかった。俺がある程度コントロールできるようになった熱がバンガオの全身から数倍の勢いで発せられていたからだった。

 とても敵わなかった。


「そうだな。鎮軍をぶっ飛ばすのは悪くないな」

「それでこそ兄弟だ! やってやろうぜ!!」


 バンガオがニヤリと笑った。それだけで空気が歪むような恐ろしさだった。

 次の瞬間、空気を斬り裂いて矢が飛んだ。


 全員が固まった。俺も驚いた。なんとなくバンガオと頭目のやりとりを皆で見る、そんな雰囲気になっていたからだった。


 空気を読まずに矢を放ったのは郷の側で、矢は驚くほどの勢いでバンガオにまっすぐ飛んだ。


 だがバンガオは空中で受け止めた。背負った槍を使うこともなく、コマ落としのようにバンガオの右手が前に出ていて矢を掴んでいた。そのまま片手でへし折った。

 平然とした動作だった。


 振り返ると矢を放ったのは郷の大人で確かバイドという名前だった。構えていた矢を恐怖のあまり離してしまって結果として矢が飛び偶然それがバンガオに向かった、という事のようだった。今も震えている。


 なんにしても攻撃してしまったことには変わりは無かった。


 攻撃を受けたら反撃するだろう。

 誰だってそうする。俺だってそうする。


 やるしかない。

 俺は構えた。

 突然、郷長が吠えた。


「敵わない! 皆、訓練通りに逃げよ!」


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