66 予感に満ちた朝
66 予感に満ちた朝
おきた。お腹の上にはソルティア、ベッドの脇にはシエラ、ダリア、レミ姉が前面に、間からスズカとうーたんがこちらを見ている。なんおいうか、老人が大往生する時の親族の集まりみたいな感じである。……勝手に送るなし。
「おはよう、皆どうしたの?」
「おはよう御座います。お嬢様」
「おはよう朧ちゃん。ソルティアちゃんを抱っこさせてくれますか?」
「…や! ママと一緒がいい」
「えっと…」
「…ではまずこちらから、今の朧ちゃんの能力値です。見てください」
ダリアが上質そうな紙を私に手渡してくる。
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名前:エレナ・ルビーライト?
種族:測定不能-[?]
性別:測定不能-[?]
年齢:測定不能-[?]
職業:商人見習い
賞罰:測定不能-[?]
称号:測定不能-[?]
特殊能力:測定不能-[?]
~~中略~~
状態:測定不能-[?]
装備:女性用寝間着
物理耐久:?/F
精神耐久:?/E
魔力:?/SS
筋力:D
精神力:C
対物理性能:G
対魔法性能:B
俊敏性:D
器用さ:E
知力:B
魔力運用効率:SS
発動可能魔法種:測定不能-[?]
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!、ステータスがカンストしたりマイナスになったり、称号なども文字化けしながら絶え間なく変化している。瞬間のステータスではなく平均値から算出すると筋力などはおおよその物が算出される。耐久力がマイナスになったときは死んでるんじゃ無かろうかと不安になるものの、体調が悪いと言うこともない。良くもない。
「なんか、ステータスっていうか状態が安定しないみたいね。でも普段通り、大丈夫そう」
「そうですか、良かったです。見た目には致命傷は無いみたいですね。ひとまず朝食にしましょうか」
……。
シエラとソルティアの三人になった。まずはお着換えである。
「お嬢様、大丈夫でしょうか……」
「難しい魔法を瞬間的に使えないみたいだけど、体調は悪くは無いかな」
「ママ、ごめんね…。たぶんソルティアのせい…」
「ソルティアのせいじゃないよ。ママはソルティアが居てくれて嬉しいよ?」
生後数日のアホのかわいいソルティアの精神の様だ。これがお姉ちゃんの演技だったら迫真すぎる。竜なのにしょんぼり顔してる。ふーむ、竜神ってなんだろうな?希望の神とは違うのか?、昨日の夢?もはっきりと思い出せるが…、なんとも急に夢枕に立ってきたものだ。ホントに夢なら、だけど。とにかくこのステータスは私の呪いへの応急処置的な何かなのだろう。
バンザイして服を取り換えてもらう。吸血鬼で魔女っ娘装備は似合わな…くもないかな、そもそも外見は変わってない様だし。
呪いの対策、か……、
「シエラ、えと、……」
「何か御座いましたか?、……。私は、いつなんどきもお嬢さまにお仕えしたいのです。……ご迷惑でしたでしょうか?」
顔に出てたかな。ダリアに何か言われてたかな?
「ううん、シエラが居てくれてとっても助かってる。でも、一つ約束してほしい事があるの」
「なんなりと、この身の限り果たし申し上げましょう」
「私が死ぬ前に、私を庇って死なない事」
「……善処致します」
「うん、ありがと。…シエラは、さ、どうして私のメイドさんになってくれたのかな、聞いても?」
「……多くは罪滅ぼしでしょうか。お嬢様にお聞かせしても、長くて詰まらない昔話ですが――」
聞いてもなんの益にもならない事はある。今がそうだと感じた。
「んや、その話を聞くのはまた今度にしよう。なんとなく、だけど、ふふっ」
そういう暗い過去語りはフラグと言う奴だ。ついぞ最期まで聞かないのがいいのだろう。
着替え、水回り、身だしなみをシエラにやってもらってからキッチン兼リビングの部屋に行く。うーたんとレミ姉が朝食の準備をしてくれた様だ。
スズカの前にあるベーコンエッグだけ不格好だ。「私やります!…ごめんなさいむりでした」というお決まりのイベントをこなしたんだろうな。
如何にも洋風な朝食の揃ったテーブルに着く。ダリアの羽は天使のソレだ。金の首輪にギリシャ風の布地を通した肩と背中を大きく露出したドレスのような…ザ・天使な装束をしている。
「朧ちゃん、吸血鬼になってますし、魔力も枯渇してるようですが、原因に心当たりありますか?」
どうにも、今の私は吸血鬼ベースになっているらしい。
私のベースがエルフとヴァンパイアで魔法の神的な物があって、魔法の神と魔力を封じられてヴァンパイアの力が表に出てきたっぽい。
ソルティア(姉)の啓示を思い浮かべる。ある程度ぼかして喋ってみるか。ソルティアを生んで、今は力が吸われてるのかな?みたいな。
「ソルティアに、授乳みたいに力を注いでいるみたい…なのかな?」
「ソルティアちゃん、竜神で、魔族ってのがわからないんですよね。いきなり朧ちゃんから生まれて来るのもおかしいですし。私、そんなナマモノ見た事無いんですよね」
「…でも、私の娘なんだよ、生きてるんだよ。被検体にしちゃだめだよ?だめだよ?」
「ちょっと天界に連れてくだけでいいですから」
「ママ、この人嘘ついてるよ!」
え、そんなん分かるんですかね。私には何か含みがありそうな顔ってくらいしかわからないけど。
「ソルティアちゃん、きめつけ言っちゃいけませんよ。……ソルティアは私と一緒がいいみたい」
「…そうですね。んー、原因がわからないですね。最近誰かに会いましたか?念話で話をしたとか、お告げが聞こえたとか、幻覚が見えたとか」
夢で会ったのはノーカンだな。と屁理屈を考えて、
「会ってないかな?昨日は王子に会ったりダンジョンでお米作ってたくらいで」
「私の主神と私との念話が朧ちゃんに届かなくなってるんですよね…」
ダリアがしょぼーんしている。なんかかわいそうだけど、こっちも自分の未来が掛かってるからね。
「私、魔力をソルティアに流してるから、上手く魔法が使えなくなったみたい、どうしようかな…」
膝に乗せたソルティアから魔力を奪う様に集中してみる。うにょうにょと何か虹色のオーラを引っ張る感じである。思い通りに魔力は引っ張れるけどすぐにソルティアに流れてしまう。
「うーん、ダリア、丈夫な紙と魔水銀インク壺と羽ペンある?」
「…ここに」
さすがダリア。ドラ○もんより使える。私の時空アイテムボックスを開けるための魔法式を書いていく。完全に手動だとなかなか上手く書けない。基本は念力使ってたからな~。
「う、うぅ…」
「…こうですか?」
ダリアが私の書こうとしている式を綺麗にして書いてくれた。
「ダリアってほんと天使」
「じゃあソルt――」
「それはダメ。なぜならこの子は私の魔力タンクになるんだから」
魔水銀で作った符にソルティア経由で魔力を通す。魔力を一度符に汲み出せば後は魔水銀に残った魔力で燃費のいい魔法なら何回か発動できるはず。符の上に私の時空アイテムボックスの口が開いた。おお、成功。
「よかった、私魔法の使えないエルフとして生きてくのかと冷や冷やしたよ」
「良かったです。それでですね朧ちゃん。今日から魔物が世界中で活性化していきます」
「はい?」
「魔物がヒャッハァァァーで世紀末になります」
「っぶッ!」
スズカがヒデェ事になった。というかスズカここに居ていいんかね。レミ姉も居てカオスなんだが。
「オーガ軍団が肩パッドで棍棒もって徒党を組んで里に下りて来る感じです?」
「そういう感じですね。魔物の発生が多くなり各種魔物のテリトリーが移動するでしょうから人の領域に踏み入ってきます。アンデッドも発生しやすくなります。各所で防衛戦力が必須になるでしょう」
「どうしてまたそんなことに」
「逆ですね。そんなことになるから転生者をこの地に呼び、またアカデメイアが教育、援助してきたのです」
ここに来て衝撃の真実の発覚である。まぁそんな事だろうなとは思ってたけどね。だって今まで転移者呼ぶ理由なあなあだったじゃんね。
スズカは撒き散らしたスープ拭きもそこそこに固まっている。レミ姉も固まっている。
ああ、あの顔は念話掲示板と私のママに連絡入れてるよ。ダリアはその様子を見て含みのある顔をしている。狙ってやってるね。策士乙。何にしろ魔物対策は必要だろうね。
……。
そんな感じで朝食は終わった。ダリアはまた暇を見て来ます。とのことだ。
私は教員として碌な事をやってなかったが、魔法が満足に使えないので無期限産休を貰う事になった。幼女にそれはなんと背徳的な響きなのだろうか。そんな話はなるべく広げない様にお願いしといた。
「わたし赤ちゃんできちゃったけど、みんなにはないしょにしておいて」
「……ぐすっ」
なんか知らないけど皆泣いた。幼女がそんな台詞を言うなんて世も末感が半端でなかったらしい。さて、世の中も魔物が世紀末ヒャッハーかぁ……。
私にはもうここで出来ることはあまりないかな。何処かに行こうかと考えているが、まだ行先は決まっていない。私のダンジョン【深淵への道】を始め、主要な活動場所に転移魔法陣なり転移魔法戸を開通させる作業がまずは必要だと思うので、まずはその施工作業をしよう。
天から身を隠し、表から身を引きつつ、都合のいい邪伸やら悪魔やらなんやらの力を上手く使って呪い?を解くのが一先ずの目標だろうか、でもそういわれても何していいのかわからないので、ソルティア姉、ソル姉に言われた様に大人しく…はつまらないので各地の謂れのある地でも巡って当て所も無く旅をするのもいいかなと思う。




