65 ハジマリの夢
プチ失踪してますた(^_^;)すみません
最初から書き上げると展開考えないといけないので遅々として進まなくてウアーってなるんですが、前世の記憶があると修正するだけなので良い感じですね~
65 ハジマリの夢
王子御一行を見送った後、ご飯に買い置きしていた串焼きを乗せて刻んだネギを乗せた焼き鳥丼(肉は鶏?)で晩御飯を済ませ、そのままお店で就寝である。五人で一部屋を使うのは窮屈なために、私とシエラとソルティア、スズカとレミ姉(乙女の防犯に)に分かれて寝た。
…夜中に目が覚めた。
今宵は雲が出ているのか、ミスリルのガラスのからは殆ど光が入ってこない。
エルフの目のおかげか、はたまた真理の魔眼のおかげなのか、暗闇でも物の輪郭がはっきりと見える。私はベッドの中央でベランダに足を向けて仰向けで横になっている。
お腹にはソルティアが乗っている。この大きさだと抱き枕に丁度いいのだ。シエラはベランダに背を向けて椅子に座って寝ている。ドラゴンは一見して寝ているように見えて、縄張りの小さな機微、例えばネズミ一匹見逃すことは無いらしい。
伊達にダンジョンの宝物庫の前とかで寝てたりしない。寝ている所に奇襲しようとすると、急にドラゴンが動いてびっくりした冒険者がカウンターを食らうという逆の不意打ちトラップである。
ひょっとしたら私の呼吸のリズムすら把握しているかも知れない。あるいは私の瞼が開いているか閉じているかも分かるかもしれない。というか、私はシエラが寝ている所を恐らく初めて見た。
「おはよう、エレナちゃん」
とても近い所から囁くような声が聞こえてきた。ソルティアの声だ。様子が少し妙である。
「それともお姉ちゃんかな?でも私の方が早く生まれてるから妹だよね」
「ひょっとして……エレナちゃん?」
「そうだけど、分かりづらいから私の事はソルティアと呼んで」
恐らく、この子はエレナの元来の魂が入ったソルティアだ。しかし、こんなに大人びた言動をしているのは違和感がある。順当に考えれば6歳のはずである。
動悸、焦燥とでも言うのか、緊張感を感じる。寝汗ではない汗がじっとりと背中を、全身を湿らせている。
「うぅ、シエラっ」
とにかくまずはシエラを起こす為に声を出した。
「シエラさんは起きないよ。神の力ってやつかな」
ソルティアはそう嘯きながら私の腹に圧し掛かっている。体を大きくして私の四肢をがっちりとベッドに縫い付けている。
念話を理の神に、シエラに、ダリアに飛ばそうとして魔法式が展開しない事に気づく。時空アイテムボックスも開かない。
ソルティアに接触している為か、そこから常時魔力を吸い尽されている。魔力が枯渇して全身が怠くなっていてなにも出来る気がしない。金縛りのような感覚だ。
私は魔法が使えないとただの幼女エルフである。こういう事態になるとは。お腹の上には圧倒的な肉体ステータスのソルティア。暗くて毛布の中で圧し掛かられているためにソルティアを視認する事ができない。シエラを見ると状態は【睡眠中】である。
「大人しくしていてね。その気になれば殺すこともできるんだよ?」
さっきソルティアは神の力と言ったが、私を殺すことが出来るほどなのだろうか、この状況を作り出した時点で、私の身に潜んでいる因果系の神よりも優位に居る可能性は十分にある。なんだっけ、三すくみだ。
そう考えればソルティアは不思議系が濃厚。理の神に連絡が付けばこちらが優勢だ。奴は私のご機嫌スカウターを作ってたハズだから、そのうち私の危機を察知して急行してきてくれる、かもしれない。
「なにが目的なの…」
「話をしに来たの。まずは自己紹介をしましょう。私はエレナ・ルビーライトとして生きた後、ある神の助けを借りてここに、ソルティアとして転生した存在よ。丁度、あなたが異世界で生き、その体、エレナ・ルビーライトに転生してきた様にね」
「……よかった」
自然と安堵が漏れた。時系列があべこべな気がするが理の神はきちんと仕事を履行してくれたみたいだ。自分の状況はとにかくおいといて、それは純粋に喜ばしい事だと思った。
「色々知ってるんだね。えっと、ソルティア?」
「おねーちゃんって呼んでみて」
「おねーちゃん…」
「ふふ、エレナちゃん。…それでここからが本題よ。その体には呪いが掛かっているわ」
「チートとか神の力とか守護神じゃなくて?」
「大きな力には違いないけど、神学的には因果、かしら?とにかく貴方の意に寄らず物事を強制する力、ただ一つの帰結に必ず矯正する法則、呪いに近い現象に捕らわれているの」
「その、ただ一つの帰結って、なに?」
「天界を破滅し、地上を神から開放をする破壊の権化みたいな存在になる運命ね。その体に眠る神の目的もたぶんそう」
「えぇぇ、そんなこと言われても……」
「私が、その、死んでから天に召される時にその光景を見たわ。その時に、貴方が多分数日前に会ったと思うけど、【希望の神】と名乗る神様が私の魂をこの体に送ってくれたの」
「凄いスケールの大きい話だね。えと、理の神って知ってる?」
「ええ、確かにその神様のおかげで私がこうしてここに居るのだけど、その神様、マッドサイエンティストよ」
「でも、私には優しいけど……違うのかな、この魔眼もくれたし、いろいろと便宜も図ってくれるし、地域にも貢献してるし……」
「そう見えても、違うのよね。……神を理解しようとは思わない方がいいわ。肝心な所で人間の心が分からないから、裏切られることがあるわ。神を当てにするのは危険よ。それだけは心にとめて欲しいの、いいかしら?」
有無を言わさないという迫力でソルティアお姉さん?がそう詰めてくる。シエラは寝てるし天界の関係者はまだ来る様子はない。いまいち実感の湧かない話だが、信じるに足る誠実さは確かに感じられる。
まぁ神と人はどこまで行っても分かり合えない様な気はしていた。それでも、たとえ表面上であったとしても良くしてくれる者に対して斜に構えることは出来そうにない。
忠告通り、気に留めておくくらいにしておこう。天界の人はセコム待機してないのかここに駆けつけてこないのは良い事なのかそうでないのか…。
「はい、おねーちゃん」
「それでね、その呪い、解くことはできないの」
「えぇ……じゃあどうすれば」
「解決策はいくつかあるわ。私みたいに魂を移動させて逃れること。神になる条件を満たさない事、天界に召されないで時間を稼ぐこと。今の所、これが現実的ね」
「具体的に何したらいいかわからないけど…」
「魔界に引き籠るのが手堅いわね。後は勇者や英雄や聖女っぽい行動をしない事、それに類する者と距離を置くこと。善行を積みすぎない事、強くなりすぎない事、人の畏怖や信仰を集めすぎない事、などかしら」
「エルフだからいずれ強くなってくよね。あと、私は死んでも蘇るらしいけどその辺は……」
「ああ、それね、神になる条件を満たして死ぬと天界に召されるわ。つまりどうあっても時間の問題なの。あと、条件を満たした辺りから災難に見舞われることになるわ。いきなりロンキヌスの槍が天から降ってくるとか、そういう極めて直接的に命を狙ってくるのよ」
「……周りの人は、」
「近くに居る人は、巻き込まれるわ。特に…いいえ、そうならない様に努力しなさい」
「……」
「魔界は案外悪くないところよ。神の力が比較的に弱くなるし、あそこから出ない限りは大丈夫よ。ただ悪魔は思ったより弱いから気を付けないと天界の手勢に強襲されて誘拐されるわよ」
「魔界かぁ、居心地悪そう」
「私の【竜神】の力でエルフの能力上昇を停滞させる事もできるわ。あと、その眼、多分【真理の魔眼】だと思うけど、それ神ポイント高いのよね。一気に2割くらい稼いでるのよ」
「魔法の使えなくなる何かを探したり、ぐるぐる巻きで地下に封印されたり、達磨になって目を潰したりコンクリ詰めで海溝に沈められたりしないといけないとかそういう感じだね……もうおしまいだぁ」
「そんなこと言わないでよ。シャンとなさい。とにかく状況はわかったわね?できるだけ能力を封印するから、後は大人しくしてくれればいいわ。私が色々と調べておくから」
「それはそれでなんかモヤモヤする。人任せっぽいし」
「これは私の為でもあるのよ、気にしないでいいのよ。」
「……お姉さまは何歳くらいでしょうか?」
「まぁ普通と違うとだけ。そんなことより、神の力にはあまり頼らない事、有力な魔族と関係を作っておくこと。野良の魔物はどうでもいいけどダンジョンはどんどん凶悪にするとベターよ。いざという時の籠城に使えるわ。あまり関係ないけど、転移者には派手に暴れてもらうと状況が動いてくれていいかしらね。じゃあ能力を弱体化するからビックリしない様に。あと実はこれ、夢落ちだから悪しからず」
「え、凄いリアルだけど、これ夢なの…」
「どこからどう考えても夢よ」
「はぃ……そうなんですね」
神の力が封印されていく。それは力の奔流を暗渠に流すような、あるいは川を堰き止めて水路に逃すような物。力そのものは消える物事は無い。
川底に隠れていた何かは表出する。




