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64 キプロスの王子1

64 キプロスの王子1


 勢いでダンジョンを作ってしまった。これでいいのだろうかという気がしてきた。知る人ぞ知る隠しダンジョン的な位置づけでやってこう。


「やっぱりこのダンジョン、秘密にしようかな」


「朧ちゃん、一応ギルドに報告しないと」


「朧先生、このダンジョンは金の生る良いダンジョンです。自信持ってください」


 っむ、ちょっと目を離した隙に一階層に敵性反応が大量に……見てみると、

 【ストーム・バッタ(嵐飛蝗)】【ゴールド・スパロウ(黄金雀)】が侵入してきていた。え?やめてよ。


「大変、一階層にバッタと雀が侵入してきた!」


「そんな魔物?この辺りで見た事無かったけどどこから出てきたんですかね」


「あー、その害虫と害鳥は美味しい植物の反応が数十キロ先でも分かるらしいわよ」


「あ、麦食べてる……絶対に許さないっ!」


 急いで一階層に【ハンター・スパイダー】を100匹生成して解き放つ。

 一時的に発生させる魔物は魔力を消費することも賄えるみたい。DP(ダンジョンポイント)を使うとその階層に定期的に魔物をスポーンさせる事も出来る。今は1回ポッキリのインスタンス召喚したよ。


 空間が一瞬揺らぎ、渦が出来たかと思うと、次々と体長30センチ程の黒茶の蜘蛛が出現する。正直気持ち悪いが、この魔物は人間を襲わない魔物である。


 ストーム・バッタは見た目は普通のバッタだが大きさが20センチ程だろうか、何千匹居るかわからない。統率を執っているバッタが魔物であり魔核を持っている。その個体は体長50センチ程だ。悠遊と麦を食べている。

 ゴールド・スパロウは体長40センチを超える大きさで、雀を鳩サイズより一回り大きくしたようなやつ。背中の羽毛が黄金に輝いている。近くのバッタを食べながら、地面に落ちた麦を啄んでいる。


 狩蜘蛛はバッタの群れにピョーンと飛び込んでは捕食を繰り返している。黄金雀が群れから離れた狩蜘蛛に狙いを付けて飛びかかる。嘴が蜘蛛の胴体に突き刺さる。


 キュイーーーー!


 蜘蛛って発声器官があるか知らないけど、何か悲しげな声を上げた。胴体に取りつかれた蜘蛛は成す術が無く嘴で穴を空けられ動きが鈍くなる。が、その時遠くから糸が飛んできて黄金雀に命中する。


 ピ、チチッチ!


 何度も羽ばたく黄金雀だが蜘蛛の糸が何本もかかり、ついに地上に縫い止められた。狩蜘蛛がグサッと噛みついてビクビクっと痙攣した黄金雀はそのまま動かなくなる。

 そこでゴブリンが三匹参戦してきた。何時かここに迷い込んできた三匹組に似てないこともない。気のせいかな。DP溜まったらいいモニターを買おう。


 ピィーっ


 他の黄金雀が遠くから飛んでくる。ゴブコの頭に刺さるかと思ったが、ゴブオが割って入って盾で防ぐ。カッコイイタルー!すかさずゴブタが盾に刺さった黄金雀を切り払う。


 ギャッギャギャ!


 しかし、バッタがゴブリンの周囲に集まり始める。ゴブリン達が段々と血で赤くなっていくのがわかる。うわぁグロイ…。すぐに狩蜘蛛も集まって来てゴブリン達の周囲に糸を吐いて守りを固めていく。


 ……。


 暫くすると、生き残ったのはゴブリン三匹に狩蜘蛛が67匹。お疲れさまでした。

 倒した魔物は黄金雀が42匹、嵐飛蝗(本体)が5匹でDPは2180増えて合計2230DPになっていた。


 一階層にDPを500使って狩蜘蛛を追加。ゴブリン集落を100DPで、ホフゴブリンを800DPで追加。これらは魔力の集積に合せて定期的にスポーンする。


 後は200DPを一階層の拡張に突っ込む。更に100DPを使いそこそこ良いモニターを買う。このモニターは持ち運びができる端末の様だ。ナイス!


 そうこうしているとダンジョンコアに文字が浮かび上がる。『魔物のダンジョン内での社会化を開放しますか?』と表示されている。

 えーと、説明文『魔物の社会化:管理者とダンジョンへの害意を抱かない上で、ある程度生物的、社会的な行動ができるようになります。食欲、性欲はありませんが生存欲求がある程度発生します。ダンジョン管理に役立つでしょう』

 ほう、悪くない、かな?問題があったら後で制限もできるみたいだし有効にしておこう。


 暫くモニターを眺めてニマニマしてるとスズカが言う


「先生、そろそろ私に魔道具作る勉強教えてくれませんか?」


「あっ、……忘れてないよ?魔道具作ったことあまり無いけど」


「……え?」


「うぅ……作り方はわかるからそんな目で見ないでくださいです。それで、どういうのを作ってみたいのかな?」


「まずは杖か剣の形の魔道具を作ってみたいです。振ると火が飛ぶとか」


「オーソドックスなファンタジーアイテムだなー。魔力消費は本人由来の奴かな?」


「そっちの方が簡単、なんですよね?それでお願いします」


「じゃあ、この魔水晶で出来た板の中央に、火魔法の魔法陣を掘ってくれる?魔導本に乗ってる基本の奴でいいよ。そしたらね、……」


 ……。


「この板を杖なら中にはめ込む、剣もはめ込むと使えるようになるよ。握りの部分までこの魔銅線を伸ばしておけば、魔力を込めるだけで棒の先端から火が飛んでくよ。剣は打ち直しすると魔導回路が壊れちゃうから研ぎしかできないからね。これをその樫の木の杖に入れて……」


 ……。


「……出来ました!朧先生、これ記念に貰ってもいいですか?」


 スズカがやり切った顔をして訪ねてくる。やっぱり魔道具っていいよね。


「いいよ、その木は結構魔力を浴びて育ってるみたいだから魔法の杖としても使えるよ。硬いし接近戦の杖としても使えそう。刃物を防げないのは何か悲しいから硬化の回路を組んだ魔銀線も入れておいたよ。握って魔力流してれば刃物も止まるはず。でも木の杖だから引火には気を付けて」




『うーううー』


 お店のうーたんからの念話の連絡。おっと、お客さんかな?聞いてみると貴公子風の一団が来ているとの事。キプロス帝国第三王子であるウスペル・キプロスと名乗る一行らしい。面倒事のよかーん。


「キプロス帝国の第三王子様がお店に来て私をご所望らしい。ちょっと見て来るよ。っと、私が離れるとダンジョンコアに攻撃されちゃうよね。皆で一緒に行こう」


 ダンジョンから開拓村の門付近に転移で移動し、門番さんの前に行く。


「朧ちゃん、遠くから王子さんが来ているみたいだよ」


 門番さんにも話が伝わっているという事は仰々しくやって来たって事なのかね。「無礼者め!打ち首だ!」とか言うタイプでないことを願いつつ。


「みたいだねー、ちょっと会ってみます」




 村に入って遠目にお店を見ると一階の隅に置かれたお客様用ソファーに座って腕を組んで待っている一団がミスリルガラス越しに見える。

 中世の王族が儀礼用に着るような仰々しい白、金、赤、青を配色した服を着ている15歳前後の金髪茶眼の童顔っぽいけどどこか疲れた顔の王子、御付きの騎士が二名、若いのとおじさんだ。メイド服の上に板金鎧を装備している猫獣人が一人。後は如何にも執事然とした執事が一人で計五人の御一行様だ。


 チリンチリリン


 入店してソファーのある一角に向かう。


「君がこの店の主の朧さんかな?」


 まず私の顔を見て、耳を見て、全体を見まわしてからそう切り出してきた。待たされた事に対する憤りなどは感じていない風だ。御付きの人達は警戒で気を張りつつこちらを見ている。


「そうだよー。お兄さんはウスペル・キプロス第三王子でいいのかな」


 ソファーの前でお互いに第一声を掛け合う。

 見た感じでは特段にヤバい人は居ない。でもみなさん冒険者で言うとBランクからAランクくらいの強さがある。特に執事さんが強い。種族はドラゴニュートで【竜化】と言う能力を持つ人型の種族だ。


「単刀直入に言うが、我が后にならないか?」


「え、いや」


「そこをなんとか」


「いやいや、イヤだけど」


 こんな幼女を后にして監禁してアヘアへぞっこんで「お兄ちゃん」しか言えないカラダにしてエルフ嫁チートする気でしょ?でも多分ママに殺されるか国が滅ぼされるからやめとこうね。誰も幸せにならない。


「にべもないな…。そちらのお姉さんのお名前を聞いても?」


 エルフ目当てなのね。レミ姉はザ・美人エルフだからすぐに声かけちゃうのも仕方ないだろうけど、その乗り換えの速さはどうなのよ。


「私はレミリア。キプロス帝国の三男坊さんが後継争いでエルフの後押しが欲しいと言う所かしら?」


「敵わないな……。まったくもってその通り。いいだろう、お互いに時間を無駄にすることも無い。お邪魔したね」


 やっぱりだめかーと顔に出しながらそう言う。テーブルにはいつの間にかうーたんが出したのかお茶とクッキーが出されている。お茶は飲まれているがクッキーは手を付けてない。帝国では緑茶は珍しいからね。




「王子様ってなにしてるのー?これからなにするのー?」


「……」


 興味本位で聞いてしまった。みなさんこっちを見てる。全員が「めんどくさいな」という顔をしている。

 幼女はなに聞いても責められないのが常だからね。



「何か大業を成そうと考えてるよ。武闘大会で名を上げたり、未踏破ダンジョンを踏破したり、政策を手伝ったりとかだね。強い魔物を討ち取るのも有りかな」


 以外にもペラペラと喋りだす王子さん。御一行さんも特段に警戒している様子はない。皆さん少し疲れた様子だ。


「へぇー、お兄ちゃんそういう事出来るくらい強いんだねー」


「まぁ昔から訓練してるからね」


「じゃあ武闘大会に出たらいいんじゃないかしら?」


 レミ姉が言う。そういえば昔にレミ姉が優勝したとか武勇伝聞いたね。いっつも自慢してくる。



「今回は第一王子の兄さんが出場するんだ。兄さんはとても強い魔法騎士でね。もっぱら優勝候補さ」


「じゃあダンジョン攻略は?」


「継承権所持が冒険者を雇って名義を背負わせて競争しているね。第一王女の姉さんが有力冒険者を囲っててね。腹黒い割に見てくれは良いから野心家の冒険者が積極的でね。どうせ後で捨てる癖に」


「…内政は第二王子が押さえてるとかですか?しかも眼鏡が似合う二重人格…なんちゃって」


 スズカがおずおずと口を挟む。お前、悪役令嬢物のやりすぎじゃあ……君エルフじゃないしそんな無礼言っちゃいかんよ。でもアカデメイアの学生で私の弟子だから王子より偉い。今決めた。


「良くわかったね。その通り。大臣の使い方が上手いんだ。弱みを知っていることを仄めかして生かさず殺さずが上手い人でね」



 お前の兄弟はそんなんばっかりか。絵に描いたような跡目争いだなー、そりゃ疲れた顔になりますね。

 でも物語の主人公的な位置じゃんもっと頑張れよ。ゲームだと都合上、主人公の色が薄い方が良いからね。でも実際はパッとしない王子とかすぐ蹴落とされそうだなぁ。


「その、お兄ちゃん。頑張ってね」


 なんか見てるこっちが居たたまれないですよ。幼女スマイルあげよう。

 ぐにゃあ。


「断っていいんですか先生?玉の輿ですよ玉の輿。助けると思って尻に敷いたらいいじゃないですか。王宮で食っちゃ寝の日々ですよ~」



 スズカがうざい顔で小声でヒソヒソする。おい、執事さんとメイドさんがこっち見てるじゃん。とりあえず腹をプニっと抓んで黙らせる。なんか面白い活用方法ないかな~。あ、


「ダンジョンの探索なら手伝ってあげてもいいよ~。王族が管理している所とか、かっこいい魔物の出る所とか、凄いアイテムが出る所とかなら、ぼうけんしてみたいかな~」


 幼女上目遣いしてみる。…うわ、あれ幼女を見る目じゃないよ。小児性愛者の目をしてきた。中世の王族、貴族って変態パラダイスだったと聞くし、私もそういう目で見られているかもしれない。エルフ幼女はかわいいだろうけど、NOタッチでお願いしますね。




「御主人様、私は未踏破ダンジョンの攻略なんてもう嫌ですよ。やはり危険です」


 猫耳獣人メイドさんが王子様に結構な態度で進言なさった。この王子は身分を笠に着ないらしいので特に問題はなさそうだ。もっとオラオラと野心的にならないと王の器じゃないとか言われるよ。


「危険は承知さ、ルスティー。ダンジョン攻略がもっとも公算が大きいのだから仕方が無い。それに朧ちゃん達が手伝ってくれるならば」


「猫メイドさんに酷いことしたの?」


 まっすぐ見つめてみる。


「ダンジョンに潜ってると中々お風呂に入れないからね、男所帯に一人女の獣人だと辛いらしい。お風呂に入る時は必ず誰かが見張ってないといけないから、そういうストレスも溜まる」


 ふーん、ほうほう。


「この念話ができる魔法符あげるから、ダンジョンに着いたら呼んでみてね。忙しくなかったら転移で行けるかも。後これ、お風呂の魔法符」


 念話の魔法符を2枚、生活魔法で体を綺麗にする魔法符を10枚その場で作って渡す。執事さんがすっと割って入って受け取り、暫く凝視した後に王子に恭しく渡す。魔法に詳しい人なのかもしれない。ステータス見た感じは肉体派の執事さんなんだけど。


「念話ができる魔法符なんて初めて見た。ギルドか城にある大きい魔道具しか見た事がない。こっちは体を綺麗にするのかい?臭いを抑える魔道具は持ってるけど、これは凄い」


 ……。


 白金貨を120枚貰いました。おざなりな対応で使い捨ての魔法符を売りつけて、どこか珍しいダンジョンに付いて行ける権利を得た。面白い魔物が居たら確保して【深淵への道】に放流してDPに変換してみよう。アイテム採集も捗りそうだし、飽きたら私だけ帰ってくればいいし。ふへへ、可愛いだけの幼女じゃねーですよ。


 もうここでやることも無いそうで、早々にキプロス帝国に帰るらしい。わざわざ私の情報を聞きつけて、ここまでやってくるなんてそこだけは気骨のある野郎だと思いました。王子なのに紳士対応だったしね。

 大戸のギルドへ行ってからキプロス帝国内部のギルドに転移魔法陣経由で帰るとの事。転移魔法陣のある所ならすぐ移動できるから便利な世界だよね。

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