63 深淵への道1
63 深淵への道1
私はカウンターのそばにある普通のソファーに座りながら寝ているソルティアを撫でながら考える。
転移者組はクランが作られ、集団行動が基本になるだろうし、不慮の事故や魔物とのばったり遭遇などは減るだろう。東列島の開発にはギルドが積極的だし、私が手を出さずとも問題ない。
選択肢としては、スズカとレミ姉と一緒にアトリエ修行ルートに突入する(お店で魔道具作りなど)。
大戸周辺を当て所もなく彷徨う。大戸西側の港で釣り。
そしてダンジョン作成である。
うん、選択肢とか言っちゃってあれだけどダンジョン作ってみたいなって…。
ダンジョンを作ることの利点は沢山ある。この世界の仕組みとして、魔物は瘴気に満ち、またそれを集積する存在である。瘴気によって自然発生する魔物はダンジョンを設置することによって防ぐことができる。これはその周辺の瘴気を内部にため込み内部で魔物を生成するからである。
しっかり管理されたダンジョンの存在は、周辺住民にとって魔物の脅威を減らすものになるわけだ。
ダンジョンでは計画的に魔物と戦うことができるし、素材も取り放題、内部はある程度修復される為に、資源を配置して繰り返し回収することもできる。
ダンジョンについて考えていると世界の真理をさらっと垣間見えた気がした。ネタバレってレベルじゃ無い。
うん、ダンジョン作ろう。場所はこの村の近くでいいかな。っと言う事で早速…東の門から出て、岩がゴツゴツしている場所を探します。
「皆、ちょっと離れてて」
土系魔法で斜めに穴をくり抜きました。
大体5メートルくらいの穴を開けました。
ここで天界通販カタログを見てみます。
【大迷宮ユグドラシル】
【怪墳墓ピラミッド】…
【迷宮大】【迷宮中】【迷宮小】
【成長鉱脈】【水晶平野】【死の沼地】…
【迷宮の種】…
例によって注文に必要な魔力がどれも半端ない。
【迷宮の種】『ダンジョン初心者にお勧め! ご奉仕価格にてご提供させて頂いております。各種設定が可能で、魔力とダンジョンポイントによって順次改築していくことができます。自動で成長させることもできます』
これしかないね!
私の魔力を二本分注いで注文。最近ドーピング漬けで相当魔力上限が上がってるんだけどまだまだだね。ダンジョンコアが時空魔法の収納空間に入っている。
さっき魔法で掘った穴の奥にトテトテと歩いていき直径二メートルくらいのコアをドゴンと置く。
えーと
ダンジョン設定:【】
内臓魔力:1000/999999
DP:100
状態:未設置・未活性
権限:1/エレナ・ルビーライト 2/天界の存在 3/第一到達者 4/到達者
内在魔物:0
仮想戦力:0
各種機能
ダンジョン方針:ゆっくりしっかり成長
魔力:機能優先
DP:温存
死に戻り:off
転移ポータル間隔:0
中ボス間隔:0
魔物配置:個別配置
罠の脅威度:0
人への敵対度:100%
魔族への敵対度:100%
魔物の行動原理:見敵必殺
うん、ぜんぜんわからん。適当に弄って設置してみた。すると、何やらコアに文字が浮かび上がってきた。
[]『私ハ、ダンジョンコア、デス。名前ヲ、下サイ』
[深淵への道]『アリガトウ、マスター。ナビゲート、ヲ、致シマス』
……
ダンジョン設定:【深淵への道】
内臓魔力:81000/999999
DP:8
状態:設置・活性
権限:1/[朧幼女]エレナ・ルビーライト 2/天界の存在 3/第一到達者 4/到達者
内在魔物:1
仮想戦力:11000
各種機能
ダンジョン方針:ゆっくりしっかり成長
魔力:機能優先
DP:温存優先、内部拡張
死に戻り:on(対象の生命体の魔力依存)
転移ポータル間隔:ボスの後
中ボス間隔:10
魔物配置:個別配置、戦力昇順
罠の脅威度:3
安全エリア:階段周り、ボス部屋前後、ポータル部屋、石像のある近辺
人への敵対度:100%
魔族への敵対度:100%
侵入してきた魔物への敵対度:100%
魔物の行動原理:見敵攻撃
階層:横にも縦にも成長
階層1:疑似平野:
階層2:疑似沼地:
階層3:疑似高地:
階層4:疑似洞窟:
階層5:疑似砂漠:
階層6:疑似密林:
階層7:未設定(その場の地形):坑道
階層8:未設定(その場の地形):坑道
階層9:未設定(その場の地形):坑道
階層10:遺跡:ボス(メガミノタウロス):ポータル:ダンジョンコア(防衛モード)
こんな感じになった。地上の入口にヒノキを組んで炭鉱の入口の様にしてみる。『深淵への道 管理者:朧』という立札を立てておく。私はダンジョンコアのある部屋へと転移できる様だね。
「えと、ダンジョンですね…」
「朧ちゃん、いつから魔王になったのかしら」
「ママは強んだもん!」
「一階層から五階層は採集できそうな設定にしたから、小麦とかお米とかあるかも。死に戻りできるし行ってみる?」
「お嬢様の仰せのままに」
「朧先生が守ってくれるなら」
「食べるー」
「ダンジョンを発見したらギルドに報告するのが普通なんだけど、作るとか聞いた事無いわ。ちょっと見てみましょう」
そういうことで一階層に階段で下りてみると、頭上は明るいクリスタル、地面は草原に木が一本。半径200メートルくらいの箱庭な草原があった。そして棍棒とボロキレを纏ったゴブリンさんが一匹、おそらく二階層へと続く階段の辺りにいた。こっちを見ている様だが動く気配はない。階段周りは安全エリアだからかな。
「…」
「倒すー」
ソルティアがピューっと突進して棍棒を躱してゴブリンの腹に突き刺さって押し倒し、既にもぐもぐしてる。完全に動く食い物に齧りつく娘であった。ゴブリンが痛がってるだろう。後で介錯とか教えてやらんとな。今は危険は無いみたいだし放っておこう。
「あの小麦っぽいの採ってみよう」
「大麦ですかね?」
スズカが腰に差している短刀でシュッとやる。
なんっ!かっこいい。そしてちょっとぶっつけでシュってやりました感を照れ隠し的に顔を明後日の方向に向けている。ちゃんと手元を見ろーい。
周囲をチラチラしている。
「スズカ、シュッてかっこいいね」
「ん~大麦かなぁ」
「私、こんなちっちゃいダンジョン見た事無いわよ」
「ダンジョンの成長が足りないみたいだね」
二階層は暗い沼地になってた。今気づいたが沼地にお米ってできなくね? 誰も居ない一階層を通って地上に出る。一階層に湖なり池なりがポンと出来てこないと駄目ですわ。
「朧先生元気出してください」
「沢山死人の出るダンジョンはすぐに成長してたような気が…」
「そっか、ちょっと盗賊でもみつけてこよっかな」
「朧先生、その発想なんかダメですよ」
『もぐもぐ』
「ちょっと方針を変えてみる」
死に戻りを有効にするには入口で石板に手を置かないといけない事にした。
『正義者よ触れよ、さすれば深淵にて死なず』という文字を刻んでおく。極悪人は無視される様にしておこう。判断はダンジョンコアさんがやってくれるらしい。…大丈夫かな~?
後はここにナマモノをポイポイ入れてお米に変換するだけの簡単なお仕事だ。イケるイケる。私、レアドロップはすぐに引いちゃうから。
「朧ちゃん、何か悪い事考えてない?」
レミ姉に顔を両手で挟まれ見つめられる。
「魔物を肥料にしてご飯にしたいの…」
「…盗賊を見つけたら?」
「え、捕まえて拷問してアジトを吐かせて根絶やしにしてお宝は押収するけど。で、生きてたらここに入れる」
「なんて残酷な子なのかしら。今度私のお気に入りの花園でゆっくりしましょうね」
ぐにゅぐにゅ
「ふぁい…」
「レミリアさんってエ…朧ちゃんのお姉さんなんですか?」
「そうねぇ、近所のお姉さんかしらね。朧ちゃんのお母様に頼まれて、…付き添いをする事になったの」
……。
「クワー!」
「うー、うーうー!」
「ゴ、ゴブッゴブゴブ!」
近くに居たゴブリン三人組をダンジョンに追い込んでみた。シエラがゴブコの腕を切り飛ばし、それを庇うゴブオ、こっちにガンを飛ばすゴブタ、頑張れよ。
皆でダンジョンコアのある部屋に転移してみる。私と一緒に居る者はダンジョンコアの攻撃対象にならないらしい。
ダンジョンコア、いったいどんな攻撃をするんだろうか。ダンジョンコアは光をゆっくりと強弱し、まるで心臓の様に明滅している。
10DPで増設したダンジョンモニターを見てみると……
「ご、ゴブコー!」
侵入者のゴブリン三人組は三階層に居た。ブラックベアーにゴブコとゴブオが玩具みたいにベアクローでバラバラにされていた。
一匹残ったゴブタ?顔の見分けが付かないけど、ゴブオかもしれないけど……目の前の仇に憤りを露わにしているが圧倒的な戦力差に逃走を選んだ。涙を飲んで?一直線に走って逃げるゴブタ、向かってこないゴブリンに顔を傾げるブラックベアー。やがてそれが逃げているのだと気づき、四肢を地に這わせ急加速する!ああっ!逃げきれずに……!
「……こんなのひどいよぉ。ゴブリンだって生きてるんだよぉ」
「朧ちゃん、顔が微妙に笑ってるよ。子供って残酷ね」
スズカはウゲーって顔をしている。これもお米の為、私はあきらめないからね。
おお、DPが158になった。ゴブリン一匹=50DPね、ふへへ、一階層の広さを50DP使って広げ、もう50DP使って植物、動物、鉱物のレベルを一段上げる。もう20DPを使って湖(小)を設置。
もうお昼過ぎである。オリハルコンの剣の製作、ゴブリンの追い込み猟でだいぶ時間が経っていた。
ここでまたもや土のテーブル、イスを出して昼食である。簡易モニターを見て一階層を見てみると…数キロ四方に広がって、小さな湖、青い草原、森林、丘、そして、稲穂らしい何か。
「私、朧ちゃんの事わかんなくなっちゃった。実家に居た頃はあんなに可愛い女の子だったのに…このサンドイッチ美味しすぎ」
もぐもぐ
「レミ姉、可愛い娘はね、旅をさせたらもう大人になるのよ」
もぐもぐ
「朧先生はもう大人の女になったんです?///」
「お嬢様は清らかでございます」
「さて、さっそく収穫に行くよ」
……。
ダンジョンの魔物は私には襲い掛かってこないらしい。先程と同様にソルティアが飛び回っている間に稲穂らしき物を刈り取ってみる。
【稲穂】『ダンジョン産の稲穂、設置者の意思が反映され、異世界の稲穂に近い。ダンジョンに限り、一日で根から穂先がまた伸びる程に繁殖力が高い』
「うおおおおおおー!スーパーコシヒカリだ!」
「え、うそ?コシヒカリ?」
「それ、お米よね?朧ちゃんはモチモチパンが主食だったはず…」
結局ほとんどの稲穂を刈り尽した後に、慌てて魔法で精米して、目に米ぬかを食らったりしながら白米を二キロ程手に入れた。
ダンジョンコアのある部屋のテーブルの中央に土のお釜を作って早速ご飯を炊いた。何だっけ、最初強め、間は中火で、最後は弱火だっけか。
「はい、醤油と卵、買っといた」
「し、師匠。私、待ちきれません」
師匠になっとる。まぁなんでもよい。
「焦って釜の蓋を開けたらダメだよ」
……。
「「いただきます」」
カッカッ、パカァ、チョロー、ぐちゃぐちゃ、ガツガツもぐもぐ
「私、……、ごはん……美味しいです」
「スズカ、おかわりはまだあるから。ほら卵。あれ、醤油ちょっとしか入れてないのにしょっぱいなぁこれ。うまいよぉ、うまいよぉ……」
私は二杯、スズカは四杯食べた。さっきサンドイッチ食べたんだけどね。
「ほら、シエラ、レミ姉、こうやって食べるの。ソルティアも食べる?」
「食べるー」
バクバク
「素朴な割に悪くない味ですね」
もぐもぐ
「生卵とかちょっと……あら美味しい」
もぐもぐ
「大丈夫、この卵は特注だからね」
皆で米一キロ分を完食しました。
「残りのこの一キロはギルドに持ってこうかと思うけど、スズカはどう思う?」
「みんな殺到してくると思いますよ。今の生産量だと食べれない人が悶々するので酷かなと」
「そうだよね~。もうちょっと一階層を広げてからでいいかな。昨日の魔物生け捕りにしとけばよかった。ってそのまま連れてきてもコア壊されちゃうか。色々考えてみよう」




