62 伝説の武器1
62 伝説の武器1
よく分からないうちに故郷に連れ戻されて一泊して、実家の近所の金髪碧眼で肌白細身だけど胸は大きめエルフのお姉さん、レミリアを新たな保護者に加えて、私のお店に転移魔法陣で戻ってきました。
「!え、なにこの魔道具の塊、超難度ダンジョンの最深部にあるっている古代遺跡?ダンジョンコアは、無いわね……って、この床、ひょっとして……オリハルコン?」
転移して早々レミ姉はオリハルコン床がオリハルコンに見えている様だ。ファンタジー金属らしい鮮やかな色はしてないのに、そこに注目し始めた。
流石は歴戦の冒険者だろうか。お店の建材について何か言われたのは初めてかもしれない。
「エレナちゃんお願い!このオリハルコンを少し、棒一本分でいいから私に譲っていただけないでしょうか!」
レミ姉が転移して最初にした動作は土下座だった。しかもエレナって呼んだ。
「レミ姉、まずは私の事を朧って呼んで」
「はいっ朧様」
「様付けやめ、ママに言いつけるよ」
「っひ、…朧ちゃん。それで、このオリハルコンをですね、少し、欲しいんです。へへぇ~」
レミ姉は揉み手をしながら媚びへつらい上目遣いでこちらを見てくる。
「えと、何に使うの?」
「私、オリハルコンの剣が欲しくて世界を30年放浪した事あるの」
そっかぁ、でもオリハルコンを武器にするのは不味いんじゃなかろうか。レミ姉は細い長剣が好きなので、作るとします。使います。エルフと言えど、何時かは死ぬでしょう、剣を手放すでしょう。
さて、その剣は壊れるでしょうか?私、知ってるよ?オリハルコンってめっちゃ硬いんだよね。たぶん伝説の剣として、世界を渡り、誰もが求め、あるいは憧れて、未来永劫使われる。
あの魔剣は悪魔の剣!沢山の人間の贄を使い、あの魔女エレナが作ったのだ!なんと恐ろしい!エルフとは悪魔のような種族だ!……的なことになるんじゃ!
「……うーん、ちょっと、時間を頂戴」
~~~~
[朧幼女]『誰か~』
[ダリア]『ここに。はい、何かありましたか?』
[朧幼女]『オリハルコンの剣を作っていいかな?』
[ダリア]『え?、どういうことですか?』
[朧幼女]『うんとね、天界カタログの建材にオリハルコンがあるの』
[ダリア]『ん、ありますね。ああ、朧ちゃんのお店の床ですね』
[朧幼女]『それを見てぜひ剣を作りたいって人が出てきたの。私今までオリハルコンの武具は見た事なかったんだけど、それで剣作ったら伝説の武器になったりして不味いかなって思いまして』
[ダリア]『確かに、…えーと、そうですねぇ~、凶悪な付与効果を付けなければ大丈夫ですね。付与がなければただの硬い剣ですから』
[朧幼女]『そう、じゃあ、作っちゃっていいかな?』
[ダリア]『ただ――』
[朧幼女]『…ただ?』
[ダリア]『とても壊れにくい事に加えて、オリハルコンは強力な付与がかなり掛かりやすい、掛けやすい、でも失いにくい、って言う特性があるので、まぁ聖剣か魔剣の類に成長しますね』
[朧幼女]『じゃあダメって事かな』
[ダリア]『その方がありがたいです。ですけど、例えば特定の人物しか鞘から抜けない機能を付けるとかどうでしょうか?』
[朧幼女]『なんか伝説の剣っぽい設定だね。得てして鞘だけどっかに行っちゃったり、剣が台座に刺さったり、逆に鞘がチート性能になったりするんだよね』
[ダリア]『まるで見てきたような事を言いますね。ああ、そう言えば伝説の剣の模造剣、えくすかりp――』
[朧幼女]『んーまぁそういうことで、いわくの剣になる未来しか見えない』
[ダリア]『剣の名と、朧ちゃんの名前を刻み入れて貰えば大丈夫、かもしれません。なるべく守りの、無害そうな剣の名前で、朧ちゃんの名前を入れておけば不幸を生む呪いの剣にはならないでしょう』
[朧幼女]『マジ?』
[ダリア]『ええ、その場合は、[朧幼女]でお願いします。説明が難しいですが…。それに万が一の場合でも天界の者どもが回収しますし、その目印にできます』
[朧幼女]『わかった。ありがとうねダリア』
[ダリア]『はい、よろしくお願いします』
~~~~
目の前には私に土下座するレミ姉。私が実家で母と一緒に店番してる時にお手伝いに来てくれる優しいお姉さん。私の顔を控えめに伺ってじっと待機している。
私とレミ姉との思い出が……喪失感が。まーでも良い方向に行くかもしれないし。この世界に製造物責任法とか無いし作っちゃえ。
「レミ姉、私が剣を作ってあげるから、それでいい?」
ピクリ、とレミ姉が機敏に反応する。
「こ、この剣の形じゃないと…イヤ」
レミ姉が細身の剣を鞘ごと私の前に掲げる。
「え?」
「この形のオリハルコンの剣が欲しいの~!私、この剣の形じゃないと満足できないの~!お願い朧ちゃん朧ちゃん!」
レミ姉が、襲い掛かってきた!こ、ころされる。
「私ね、修行の時も、冒険者してる時も、世界旅行してる時もこの形の剣をずっと使ってたから、もうこの形してないとダメなの」
勢いがやべぇ、知り合いじゃなきゃ泣いてる所ですよ。
「…う、うん」
どうも何年も同じ形の剣を使ってると、悪い意味でそれに慣れてしまうとの事。エルフあるあるであった。
で、剣がダメになる度にドワーフに細かい注文を出して打ってもらうらしいのだが、ドワーフは一回に一振りしか受注しない事が多く、次に来るときは同じ鍛冶師が居なかったり、あるいは代替わりしたりしてて、……つまりメンテナンスフリーな剣が欲しいとの事。
「ミスリルじゃダメなの?」
「20年で折れました」
「アダマンタイトじゃダメなの?」
「120年で折れちゃった」
「……」
チラッ
「これはミスリルの剣だけど、多分そろそろ折れるかな。私、その時の相手に組み伏せられて酷い事されちゃうんだぁ……」
めんどくせぇ……。
「それ、ミスリルの剣二本持ってたらいいんじゃ?細身の剣だし軽いよね?」
チラッ
「剣を持ち替える時に相手に組み伏せられて酷い事されちゃうんだぁ……」
「いいけど、剣には私が銘打つよ?」
「うぇぇぇん、私、魔物のお母さんに…名前は【エルフェンソード】がいいです、うえぇえん」
「……」
ど、どうかな?【最強の剣】とかじゃないならいいかな。
……。
はい、出来ました。天界から取り寄せたオリハルコンを加工するのに魔力を相当使ったけどね。
アルミ並だぜ。【エルフェンソード】【朧幼女】と柄に近い部分に大きな文字で、『~エルフを守るために~』と小さく古代魔法文字で彫っておく。
「…作り手として、これで悪い事してほしくないの。レミ姉」
「はい、悪い事はしません」
「例えばどういうことかな?」
「……えと、いきなり人に切りかかったりです」
「うん、お願いね」
「ありがとうエレ、朧ちゃん。私、もうなんでも言う事聞いちゃいます」
「え、そもそもママからそう言われてたんじゃないの?」
「もう一層、もう一層よ。もう奴隷のように使ってくれていいんだから」
「えぇ……はい、気を付けて使ってね」
パパパパーン!
レミリアは念願のオリハルコンの剣を手に入れた!
シエラ、スズカ、うーたん達はこちらを生暖かい目で見守っていた。




