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57 フロンティアにて7

57 フロンティアにて7


「お嬢様っ!」


 シエラにユサユサと揺られて、起きた。


「はぇ?えぁ、あぅあぅあぅ~」


 従者にあるまじき鬼のユサユサに、頭が覚醒すると共にふわーっとシエラが視界に入る。顔は真剣そのものだ。


「どぅ、したのぉ、シぃエぇラぁあぁ~?」


「ああ、お嬢様、よかった…」

 はぐっ


 闇落ちした主人公を愛の力で、しょうきにもどした!というようなヒロイン力に塗れたシエラさんに抱き枕にされている状況である。

 なんだろう、夢遊病で近隣にクレーターでも作ってしまったのだろうか?別に変な夢は見てないんだけどなー。


「いったいどうしたの?」


「お嬢様が、その、あの卵を、その、お尻から……。それで、いきなり電撃の魔法を……」

 プルプル


 シエラがプルプルと指を指す。こんなシエラは初めて見るな。

 ……というか、私は下に何も穿いてなかった! 昨晩はシエラが意味ありげにかぼちゃパンツを寝間着として着せてくれたのだが(おねしょ防止?分からないケド)、それが脱ぎ散らかされていた。


 ……え?私産卵したのか?うそだろ~?エッチした事無いんだけど。しかもお尻から?意味が分からない。意味が、分からない。

 そして卵。鶏の卵のLサイズより一回り大きいくらいだろうか……床に鎮座している。枕の上に乗せてだ。電撃の魔法の為か、少し枕が焦げている。しかし卵は無傷。色は…金色。


 良く見ると辺りには血が撒き散っている。


「……シエラ、私のお尻、真っ二つになってない?ねぇ?」


「……治癒魔法を掛けさせて頂きました」


 良かった。私のお尻が真っ二つになる所だった。いやなっていたのか。治癒ありがとうシエラ。いや、そもそもお尻は真っ二つだ。これはシエラも焦るね。


『ピシッ、ピシッピキピキ…』


「う、うまれる!?」


「ピーっピーっピーっ」


 中からドラゴンの赤ちゃんが元気に産声を上げた。あぁ、私、寝ている間にシエラにお母さんにされていたんだね。


「うっ、しえら…信じてたのに」


 目に涙が溜まっていく、もう何もかも忘れて実家に帰ろう……。


「違いますよ!お嬢様っ」


「じゃあっ、この子はなんなのよっ!」


「…こんな時間になんですか~?」


 ……。


「ままぁーっ」


 シエラに慰められて、やっと頭が覚醒して来た。スズカも起きている。ドラゴン種の繁殖方法は卵生と胎生があり、どちらもそれぞれ鳥類と哺乳類と一緒らしい。

 ドラゴンはなんと両性具有らしい。厳密には魚の様に周りの環境で性別が行き来するとのこと。シエラは今メスの状態の為、私を妊娠させるのは無理とのことだ。


 まぁ生まれてしまったものはしょうがない。さて、私の息子か娘か分からないが子供のドラゴンちゃんだが、卵から出た後にバチバチしながら大きくなって、ヒヨコとドラゴンの間の様な状態からドラゴンに近い形態に成長した。大きさは……一回り小さい鷲くらいだろうか。色は黄金。真理の魔眼で見ると、種族はリトル・ドラゴンらしい。


 名前が空欄になっていた。ああ、そうかぁ…私が名付けないといけないのか。男女どっちとも取れる、そもそも人名でもない名称がいいのかな?女らしい名前付けたら女になったりするのだろうか。…ふーむ、黄金っぽいから『ソルティア』と名付けよう。


「……ソルティアちゃん、ママですよー」


 子育てとか自身が無いな……。でも、私の子なんだ。かわいいし。


「私がお世話させていただきます」


 私の顔を読んだのか、シエラがそう申し出てくれた。ドラゴンの事はドラゴンに任せるに限る。私はソルティアちゃんをシエラに渡す。


「やっ! ままぁ~~。><」


 刷り込みかな~?シエラに聞いたところ、ドラゴンは生まれたらもう言語もある程度習得し、既に自立して生きる事ができるらしく、刷り込みなどはあまりないとのことだ。

 この子はリトル・ドラゴンなので少し違うのかもしれない。いつもの不思議知識を掘り出そうとしても【リトル・ドラゴン】についての知識は湧き出してこなかった。そんな種族は先程まで存在しなかった。らしい。


「ままぁ~、ごはん~」


 私の胸に戻るなり私のおっぱいのあたりをスリスリし始めた。ごめんね、私はおっぱいがでないのよ……。


「ソルティアちゃん、私はおっぱいが出ないの。ごめんね」


 そう言って首と頭の辺りを撫でる。試しに魔力を流してみる。すると、ソルちゃんが吸収しているのが分かった。流石はドラゴンの近種である。そうかとは思ってたが、これで合っているみたいだ。




 そもそも魔大陸東側にはドラゴンの国があるが、その辺は荒地で草木が殆ど無い地となっている。ドラゴンの成体の大きさは数十メートルに及ぶ為、地球人的な考えでは一日数十トンくらいは草木なり肉なりを食べないとおかしい計算だ。


 いや、変温動物なら少なくても有りなのかな?ワニで一か月に一キロくらい肉を食えばいいような事を聞いたことがあるし、ひょっとして凄い燃費が良いのかもしれない。


「おいしぃ~」


 なんだろう、ドラゴンなのに、凄く愛しく感じる。これが母性という奴なのだろうか。


「朧先生、お母さんだったんですね。ひょっとして相手は、シエラさん、ですか?」


 シエラは大好きだけど、そういうのじゃない!変な勘繰りしないで!


「スズカ、違うからね。いちおう、私はこの子のお母さんらしいけど」


「お嬢様が望むのであれば、私を夫にしていただいても……」


「シエラ、やっぱり私が寝ている間に?その、えっと、……ぅ、うぅ」


 やっぱ寝ている間に魔法かなんかで起きれない様にされて、……。じわりと涙が出てくる。


「シエラさん…こんな幼女を寝ている間に…ち、近寄らないでくださいっ!」


 何回目かのシエラの言い訳を聞く。うん、やっぱりシエラは悪くない。

 私の事真剣に考えてくれてる。別に、私寝ている間にシエラに卵を植え付けられててもいいよ。


「スズカもシエラもいいじゃん。私がこの子を産んだってだけで誰の子かなんて関係ないよ。私、別に……」


「シエラさん、酷い!こんなのって間違ってる!朧ちゃんは私が面倒見ます」


「お嬢様、本当に違うんです……」


 最終的にみんなでオイオイと泣いて世界の無情さを嘆いた。やっぱ勝手に卵がポコンと出てきただけらしい。なお、おしりが裂けてて凄い苦しそうだったらしい。へ、へぇ~。




 ま、拾った卵が孵って刷り込まれたって事で。再度家族会議みたいな事をした。


「えへへぇ~、ままぁ~」


 ソルティアが私のネグリジェをひん剥こうとする。


「ダメよソルティア、服がおかしくなっちゃうでしょ?」


 ここまで下を穿いてなかった。ソルティアがわたしの体を這い回ろうとする。ドラゴンはゴツゴツしてそうな物だが、ソルティアは可愛い柔らか系フォルムである。力は結構ある。


 取りあえず枕に置いてから、着替えやその他の朝の準備をした。ソルティアもお風呂場で洗ってあげる。見た感じ、メスの様だ。


 正式な氏名は ソルティア・エル・ルビーライト となっていた。あーあ、ホントに私の娘らしい。ステータスはAとBで構成されている。生まれながらこの性能はチートだろう。私よりも強そう。称号はヤバそうなのが一つ【神竜】、説明文は簡潔に『神の竜』とのこと。分類では魔族らしい。でも見るたびに変わってる。


 その後、ダリアと念話で連絡してみた所、神の親類ならあり得るかもね、とのこと。

 その時に理の神にも聞いてみたが、私と同様に由来の不確かな神が宿っているかもしれないと言われた。神って何でもありだね……。


 その後、私の背中かお腹で固定できるようにリュックサックみたいな何かを作ろうかと思ったが、前足と翼を上手く使ってピタッと私の体に張り付ける事ができる為に、そう言ったベビー用品は作らなくても良さそうだ。


 そうこうして朝食まで済ませた。目が覚めたら幼女シングルマザーになってたが、今日は何をしようかな。ゆっくりお店番してればいいかな~。何か思い立ったらその時に何かしよう。


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